アナログ絵のような雰囲気を出してみよう! 水彩塗りのススメ

アナログ絵のような雰囲気を出してみよう! 水彩塗りのススメ

今回は水彩塗りのメイキング講座です。

 

水彩風の塗りにチャレンジしてみたいとい方は順を追って解説していきますので、ぜひご参考ください。

 

▽目次

(1) ラフを描く

(2) 顔の線画を描く

(3) 髪の線画を描く

(4) 顔のベースカラーを塗る

(5) 影を入れる

(6) 髪を塗る

(7) 髪のコントラストを上げる

(8) ハイライトを入れる

(9) 目を塗る

(10) ディテールを整える

(11) 全体のコントラストを上げる

 

 (1) ラフを描く

水彩塗り

水彩塗りの場合、線画工程でイメージが固まりやすいのでラフを丁寧に描いておくのが大切です。また、鉛筆やクレヨンのようなテクスチャを持ったペンでラフを描くと味わいも出やすくオススメします。

 

(a) 描きたいキャラの大きさと向きを決める。

 

(b) 頭には側面があることに注意して側面と耳を描き、目と鼻のアタリをとる。

 

(c) 目の大きさや眉、口、額のアタリをとる。絵柄によりますが、鼻や口もある程度の立体構造を意識すると良いです。

水彩塗り    

(a)バランスを整えながら徐々に細部を描き込みます。

 

(b) 輪郭を整えながらディテールを足していきましょう。部分にこだわるとバランスを崩しやすいので、大きく全体を見ながら徐々にディテールも足していくと良いと思います。

バランスやディテールについての参考

水彩塗り

 (2) 顔の線画を描く

水彩塗り

(a)  (1)で作成した大ラフのレイヤーの不透明度を50%程度まで下げます。このとき、色も変えておくと線画が描きやすいです。

 

(b) 上に新規レイヤーを作り、線画を描きます。頭部は髪を描くと隠れるので荒くて良いですが、髪を描くときの目安になりますので、頭蓋骨の形を意識して形を整えておきましょう。

(3) 髪の線画を描く

水彩塗り

(a) 顔の線画レイヤーの上に新規レイヤーを作り、髪のラフを描きます。髪の流れを意識しましょう。

 

(b) 髪の大きな束を意識して不要な線を消したり、輪郭を強調したりして整えます。顔レイヤーに移り、髪で見えなくなる部分を消します。

 

(c) 全体をみながら線を追加したり不要な線を消したりして線の整理をします。これで線画が完成です。いよいよ塗りに入ります。

 (4) 顔のベースカラーを塗る

水彩塗り

水彩の透明性を生かして塗ってみます。

 

(a) 線画レイヤーと白背景レイヤーの間に新規レイヤーを作り、肌のベース色を塗ります。

 

(b) 白背景を消すと完全には塗っていないのが分かります。下地の色を活かしてみましょう。 背景がある場合はキャラ部分に不透明な白下地レイヤーを用意します。

 (5) 影を入れる

水彩塗り

まず、髪の影や顎下の影などを入れてみましょう。その後に耳や鼻、口元など立体物の下側の部分に影を入れます。

 

影だからといって暗い色を乗せるのではなく、彩度が高めという色を選ぶと良いでしょう。

 (6) 髪を塗る

水彩塗り

(a) 毛流れを意識して大まかに塗ります。塗りムラは毛流れの表現として使えるのでむしろ積極的に利用する意識を持ってみてください。

 

(b) 彩度を少し高くして明度を少しだけ落とした色で影を付けていきます。ここでも暗すぎる色は避けましょう。

(7) 髪のコントラストを上げる

水彩塗り

(a)  Gペンなどのエッジがはっきりしたツールで影のアクセントを足します。

 

(b) 髪が塗られているレイヤーの上に新規レイヤーを作り、クリッピングしてから乗算モードでエアブラシを使い、暗さを足してコントラストをあげます。乗算モードでは下の描画が塗りつぶされることがないので便利です。 

 (8) ハイライトを入れる

水彩塗り

髪のベース色から明度が高く彩度が低い色を選びハイライトを足します。真っ白だと悪目立ちするので少し髪色が入っている方が馴染むと思います。まずは、ざっくりGペンなどで足してから指先ツールで形を整えるとやりやすいです。

(9) 目を塗る

水彩塗り

(a) 白目とベース色を塗ります。顔のレイヤーに直接塗っても良いですし、別レイヤーに分けても良いです。

 

(b) 彩度が高の色や暗めの色を用いて、目の半分より上側を中心に色を乗せます。ムラを作ると虹彩の模様を演出できますので、筆跡を残すように塗ってみましょう。

 

(c) (b)と同様にして彩度が低めで明度が高めの色を選んで目の下側を明るくします。最後に線画の上に新規レイヤーを作ってハイライトを白で入れて目は完成です。白の周りにオレンジや黄色を薄く入れると雰囲気が出ます。目が入るとキャラの雰囲気がはっきりしますので、この段階あたりで線画の色トレスをしておくと良いでしょう。

 (10) ディテールを整える

水彩塗り

(a) 肌に影を足し、頬の赤みを足し、リップに薄いオレンジを足しました。どの色も薄い色でゆっくり足すのがコツです。リップだからと赤をドーン!と入れてしまうと雰囲気が一気に崩れます。人間のような有機的なものはそれほど激しい原色は稀なのでごく薄く少しずつ調整しましょう。

 

(b) おくれ毛を足すと一気に雰囲気が出ます。白背景の部分は髪の色で、髪の上は髪のハイライトくらいの色で足すと良いです。やりすぎるとのっぺりしてしまうのであくまでアクセントとして少しに抑えるのが吉です。

水彩塗り

全レイヤーのコピーを統合します。元のレイヤーは残しておくと安心です。

 

その統合したレイヤーの上に新規レイヤーを作り、覆い焼き発光モードにします。オレンジや黄色をエアブラシや薄い水彩ブラシで乗せていきます。ハイライト付近にはキラッとした輝き感が出ますし、首元などの影の部分では美しい反射光の演出ができます。作業が終わったら次の(11)の作業のためにレイヤーを統合しておいてください。

(11) 全体のコントラストを上げる

 水彩塗り

(a) (10)で作ったイラスト

 

(b) (a)のコピーの不透明度を下げた画像にマスクを作って顔の中心周りは透明にしたイラスト

 

(c) (a)と(b)を重ねたイラスト

 

(a)で完成でも良いですが、もう一歩明瞭感を出したいとき、コントラストをあげると良いです。しかし、単に調整ツールでコントラストを上げてしまうと意図しないところが暗くなったり、明るくなりすぎたりします。

 

そこで、上記のように、半透明な画像を重ねます。元々白下地を利用して描いているので塗った画像自体は半透明です。なので、そのコピー(b)を重ねると色が濃くなります。ちょうどキャラ絵の描かれたクリアファイルを2枚重ねた時のような感じになります。

 

(b)を不透明度100%で重ねると一気に暗くなるので不透明度を調整して好みの雰囲気にします。この時、暗い部分に注目して調整すると良いです。顔やハイライト部分まで暗くなって欲しくはないので暗くしたくないところは消していきましょう。明るさが戻ってきます。本当に消してしまうとやり直せないので、マスクを利用すると調整が簡単でオススメです。

著・画 なご哉

フリーのイラストレーター、フォトグラファー。スタジオでの写真撮影、レタッチの延長線上でイラストを学ぶ。アナログ、デジタルの両方のイラストを制作。

Twitter : https://twitter.com/ngyillust