年末年始を控え、お正月が近付くと描きたくなるのは和装のキャラクター!とは言え、着物の描き方は構造だけでなく、柄も複雑でなかなかハードルが高いものです。
そこで今回オススメしたいのが、面倒な振袖の柄にCLIP STUIDIO PAINTのブラシを自作する方法。素材を買うのも手軽ですが、自分の絵のタッチに合った柄を作っておくと何かと役に立ちますよ。
▼目次
1. 着物の柄を考える
2. 素材を作る
散布用ブラシの素材を作る
スタンプ用ブラシの素材を作る
リボン用ブラシの素材を作る
着色と差分作成
3. CLIP STUDIO PAINTに登録してブラシの設定をする
4. ブラシで実際に柄を入れてみる
5. 完成!
1. 着物の柄を考える
実際の振袖の柄にはおめでたいモチーフや四季の草花が使われ、一年中着られるように季節感がありません。イラストですので、なおさら自身の好きなように柄を考えて良いと思います。
着物の柄は細かく複雑に見えますが、一つ一つの要素を分解すると同じ種類の柄が繰り返し使われているだけです。それでは入れたいモチーフをいくつか考えてみましょう。今回は
- 桜
- 菊
- 藤
非常にベーシックなこの三つを選んでみました。
2.素材を作る
普段描くイラストのサイズに合わせて描きましょう、極端に大きくすると線がガタガタになって劣化して見え、小さすぎると無理に拡大されぼやけてしまいます。
大判のカラーイラストを主に描く場合は350dpi・1000×1000pxを基本に、小花の場合は半分程度のサイズにします。
漫画を描かれる方は600dpiで作成される方が使いやすいと思います。
今回作るブラシは、散布・スタンプ・リボンの三種類です。
散布ブラシ用の素材を作る
小さな桜の花がランダムに散布するブラシの素材です。資料を意識しすぎないように、いつも使うペンや筆を使用し、自分の絵のタッチを大事にしてください。
このような対称の柄はCLIP STUDIO PAINTの「対称定規」を使用すると描きやすいです。キッチリしすぎるのが嫌な場合は下書きに使用するなど工夫しましょう。
スタンプ用ブラシの素材を作る
桜と同じく対称定規を使用して菊の模様を描きました。
縁を付けたかったので「境界効果」の「フチ」を使用して清書。
リボン用ブラシの素材を作る
リボンブラシのみ上下が繋がるように素材を作る必要があるので少し難しいです。①と②の二つの素材を繋げてリボンブラシにします。
ラフを元に描きます。赤線の部分が繋がるように描きますが、CLIP STUDIO PAINTにループ絵を描く機能はありません。
描いたものをコピー&ペーストで増やしてから絵が繋がる場所でカットすると綺麗にできますが、少しずれると継ぎ目が見えてしまうので意外と難しい作業です。
着色と差分作成
色も形も全て同じだと使用した時に単調になるので差分を作成します。モノトーン素材でも色反転など作っておくと後で使いやすいです。
白い部分も塗っておかないと素材として使った時に透けてしまうので、素材は一度白で塗った後色を付けていきましょう。サイズと角度はブラシの設定で変更できるので変更する必要はありません。
3. CLIP STUDIO PAINTに登録してブラシの設定をする
散布ブラシ
スプレーの様に柄が飛び散ります
スタンプブラシ
ぽんと押すと柄が一つスタンプされます
リボンブラシ
藤の花房を描けるブラシです。赤丸部分がどうしても潰れたようになってしまうので、手で修正をしても良いと思います。
4.ブラシで実際に柄を入れてみる
三種類のブラシができたので、イラストに柄を描き込んでいきます。柄の入れ方に迷ったらよくあるパターンにしてみましょう。
- 柄① 左肩から腕へ流れる様に柄を入れる、全体に斜め下へ流れていく柄
- 柄② 両肩に柄が入り帯の下辺りからたくさんの模様が入っている
- 柄③ 総柄、全体にまんべんなく柄が入っている、モダン柄に多い
- 色④ 柄に合わせて下地の色が変わっている
- 色⑤ 半身だけ濃い色
- 色⑥ 市松や縞などパターンが全体に染められている、モダン柄に多い。
今回はラフの通り①+④で柄を入れてみたいと思います。
まずはベースにピンク色を塗ってからCLIP STUDIO PAINTにデフォルトで入っている「飛沫」というエアブラシを使用して、左肩から流れるように色の異なる部分を作りました。次に桜のブラシで柄を入れます。
色を塗ったレイヤーの上に新規で柄を入れるレイヤーを作成し、ブラシで柄を入れます。隣のパーツにはみ出している部分は丁寧に消しましょう。深い皺の上にある柄は切り抜いてずらします。
藤のリボンブラシも桜と同じように入れて、余計な部分を消します。筆圧で太さが変わるように設定されているので描き終わりは力を抜いて細くしましょう。
菊の花のスタンプブラシも同じように入れていきます。振袖の柄は切れ目なく繋がるようにできているので、襟や袖などの縫い目を跨いでも絵柄は途切れません。
柄を入れ終わったら柄の上に新規レイヤーを作り、乗算モードにして影を塗ります。
新規レイヤーを作りハイライトを入れます。
キャラクターに馴染ませるため、着物とキャラクターに同じ色で照り返しを入れていきます。
金糸をふんだんに使った豪華な柄の場合なら、金色の部分がさらに輝きます。モダンな着物はマットな質感になるので、ハイライトの入れ方にこだわるのも良いと思います。
5. 完成!
完成です!素材さえ作っておけばこんな複雑な柄も簡単に入れる事ができました。
皆さんも年末年始はぜひ和装のキャラクターを描いてみて下さい!
著・画 珠樹みつね
イラストレーター。ソーシャルゲームのカードイラストを中心に、3DS用ゲームの背景や食玩のオマケイラストなどジャンルを問わず活躍。Webのイラスト講座なども多数手掛ける。
ホビージャパンより著書「CLIP STUDIO PAINT キラキラの描き方 宝石・鉱物・金属などを輝かせる塗り絵テクニック」好評発売中。
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