今、クリエイターとして生きていくには? 『それでイラストで食べていけるの?プロはみんな気づいている 稼ぐための考え方』刊行記念! イラストレーター・Ixy× Skeb開発者・なるがみ 特別対談企画
2024.11.05
今回は『それでイラストで食べていけるの?プロはみんな気づいている 稼ぐための考え方』(著:Ixy)の刊行記念の特別企画。本書に収録されている イラストレーター・Ixy× Skeb開発者・なるがみの対談企画の一部を公開します。
総会員数340万人、取引高毎月6億円を誇るイラストコミッションサービス「Skeb」の開発者である、なるがみさんと、イラストレーターの現在と未来についてお話させていただきました。
本書が気になる方は、全国の書店やAmazonなどで販売するのでご購入ください。
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Skebのクリエイターサポート思想はこうして生まれた
―― まず対談の背景として、なるがみさんがSkebを開発した経緯を教えてください。
自分は大学時代にpixivや、コミックマーケットの申込システムを開発する﹁サークル・ドット・エムエス﹂でアルバイトをしていました。
その後社会人になってからも、3Dモデル投稿サービス「ニコニ立体」やクリエイター向け確定申告サービス「ドージン・ドット・タックス」を企画開発するなど、一貫してクリエイター支援に関わる仕事をしています。Skebもその延長線上にあります。
Skebを作ることになったきっかけとして、2017年にとある書籍を出させていただくことになったのですが、発売一週間前になって突如として出版社から発売延期を連絡された事件がありました。
―― それは何が原因で?
担当編集が勝手に原稿を書き換えたことによってデザインに乱丁が発生し、それに気づかないまま入稿したことが原因です。
僕は顧問弁護士もいますし、自分の意志をはっきり伝える方なので納得できる形に着地できたのですが、このようなトラブルが散見し、泣き寝入りになっている作家さんは多いだろうなと感じたんです。
そこで、作家さん達と彼らにお金を払う人達のパワーバランスを変えるようなサービスが欲しいと思って作ったのがSkebでした。
そういう開発理由だから、Skebはクリエイター側に有利なサービス設計になっているんですね。
Skebは、打ち合わせ、見積もり、リテイクといった、普通のサービスでは当たり前の機能を排除しました。さらに、イラストの二次利用も原則として禁止しています。作家さんが交渉に長けている訳ではないという、先の事件の教訓から、彼らにとって負担になるあらゆる要素を排除しました。
サービス上で表示できる金額は「おまかせ金額」というふわっとしたものだけです。さらに、この「おまかせ金額」は作家さん自身が決めることもできるし、Skeb側が過去の実績をもとに微妙に高く設定することもできます。
誰がこの金額を決めているのか利用者からは識別できません。作家さんが「いやぁ、運営が勝手に高い金額を設定していてすみません」と言いながら、ご自身で高く設定されることも少なくありません。利用者とのあらゆる衝突を運営のせいにできる仕組みになっています。
国内のクラウドソーシングサービスのイラストの相場は1,000円から5,000円ぐらいですが、このような工夫が功を奏して、Skebは国内で最も作家さんに有利なサービスを提供しているにも拘らず、平均取引金額は12,000円と他社よりもかなり高額です。
さらに、Skebを介さない商業の案件においても、「Skebで描いた方が高いので辞退します」と安価な仕事を断ることができるようになったとの声もいただいています。
―― 実際に作品を頼む側と受ける側の関係性を変えたわけですね。ところで、どうしてそこまでクリエイター側に立ったサービスばかり作られているのですか?
高校時代ニコニコ動画が好きで、東方Projectという作品のファンアートをよく見ていました。そのうち「その作品の作家さんと仲よくなりたい」と思うようになり、「絵が描けない自分がどうすれば作家さん達と仲良くなれるのか」を考えた結果、彼らの役に立つものを提供すればいいという結論に至りました。
早速ニコニコ動画内のコミュニティ機能を活用し、ニコニコ動画で活動する作家さんのためのコミュニティを運営したのが全ての始まりです。そのような活動を続けているうちに、いつの間にかそれがライフワークになっていた、という感じですね。
―― 元々絵やクリエイターが好き、という気持ちが原動力なんですね。
それはそうですね。僕自身、中学時代にワコムのFAVO(ペンタブレット)を買って絵を描いていましたが、すぐに「この時間で別のことをして、自分より上手い人に頼んだほうがいいのでは」と思って辞めました。
これを高校でも大学でも繰り返し、累計四回はペンタブを買ったと思います。
でも、そうやって絵に触れた経験から得られたものはありますよね? 絵を描く苦労をなるがみさんはそうして知っているわけですし。
それはもちろんです。無駄な経験は何もないと思います。
クリエイターの価値を「値段」にされないために
――お二人はWeb上でクリエイター志望者の相談をよく受けていますが、その中で感じることはありますか?
―― それこそ、会社員を続けながらSkebでイラストのリクエストを募集するところから始めてもいいわけですよね。
―― それはどういうことですか?
作家さん自身に強烈なファンがいて、作家さん本人がSNSで共有したURLから来てもらう他ありません。
―― どうしてそのような仕様にされているのですか?
イラストの単価を下げないためです。金額で検索できるようになってしまうと、金額を下げた方が検索結果に表示される回数が増えるため、何としてでもお金が欲しい作家さんが尋常ではない安い金額を提示してしまいます。
するとサービス内の相場が崩壊して、有名な作家さんほど「割に合わない」と離脱し、利用者も「知っている人が使っていない」となり、最終的に誰も使わないサービスになってしまうからです。利用者側も「自分の知っているあこがれの作家さんにリクエストしたい」から「安い人なら誰でもいいや」となって、本来のコンセプトから逸脱する結果を招きます。
続きは、『それでイラストで食べていけるの?プロはみんな気づいている 稼ぐための考え方』(著・Ixy)にてお読みください。
Ixy
Xフォロワー75万人/YouTube登録者9万人の人気イラストレーター、マルチクリエーター。
イラスト業のみならず動画配信、ブログ執筆、クリエイター向けの講座動画、クリエイター向けのイベント登壇、ゲーム制作など多岐に渡り活動中している。
Web: https://ixyis.com/
X:https://twitter.com/Ixy
Youtube:https://www.youtube.com/@ixy
なるがみ
Webエンジニア、エンジェル投資家。1990年、福岡県生まれ。筑波大学情報学群情報科学類卒業後、2013年に株式会社ドワンゴに入社し3Dモデル投稿サービス「ニコニ立体」を企画開発。
その後、2016年に合同会社DMM.comに入社し、二次創作の公認化事業や違法アップロード対策事業に従事。同年、個人でクリエイター向け確定申告サービス「ドージン・ドット・タックス」を企画開発。
2018年に個人でコミッションサービス「Skeb(スケブ)」を企画開発。2021年に同事業会社「株式会社スケブ」を10億円で売却した。現在も同社の代表取締役社長を務める。
(聞き手・文 いしじまえいわ)
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