VR空間で可愛い秘訣をコトブキヤとMUGENUPに聞いてみた。(前編)

VR空間で可愛い秘訣をコトブキヤとMUGENUPに聞いてみた。(前編)

フィギュアやプラモデルなどで有名なコトブキヤは、3Dデータブランド「アバターちゃん」シリーズでオリジナルアバターに初参入! 2020年12月19日(土)には、シリーズ第一弾となる「店員ちゃん」が発売されました。

 

「店員ちゃん」をデザインしたのは人気イラストレーターのさいとうなおきさん。全く新しく描き下ろしていただいたデザインを可愛いアバターにするために、コトブキヤならではのフィギュアの造形技術が活かされているそうです。それだけではなくVRファンが本当に楽しめるような工夫がいっぱい詰まっているとのこと。

 

クリエイティブ制作会社であるMUGENUPは、この「アバターちゃん」シリーズにおいて、デザインイラスト制作から3Dモデルの制作まで幅広くサポートいたしました。

 

そこで「いちあっぷ」では、「店員ちゃん」を生み出したコトブキヤの担当者にインタビュー。3Dモデルの制作をお手伝いしたMUGENUPデザイナーも同席し、その秘訣を聞いてきました。

 

▽アバターちゃんとは?

アバターコミュニケーションの充実を目指して、コトブキヤが展開する3DCGブランド。フィギュアの制作技術を活かした特殊なモデリングで作られたアバターからVR空間ならではコミュニケーションの楽しさを提供します。互換性のあるアバターを順次展開していきます。

https://www.kotobukiya.co.jp/event/event-230568/

 

▼目次

「立体として可愛い」ことが、アバターの可愛さのカギ

三面図はモデルの設計図。立体としての正しさが必要

画風をいかしながら、どの角度からでも可愛いように

 


「立体として可愛い」ことが、アバターの可愛さのカギ

コトブキヤとMUGENUP

△右が「アバターちゃん」シリーズの生みの親、コトブキヤ 飯嶋氏。中央が原型師として活躍しつづけてきた白髭氏。左がMUGENUPのCGモデラー木下氏。

 

飯島 瑞生(コトブキヤ):

私は3Dプリンターの研究や海外作品の原型に関わるなどの経験を経て、現在はコトブキヤ経営企画室でマーケティングを担当しています。

 

今回の「アバターちゃん」シリーズではプロジェクト全体をとりまとめており、イラストデザインから3Dモデルの制作、人気イラストレーターであるさいとうなおきさんとのコミュニケーションまで、幅広くMUGENUPさんと一緒に進めてきました。

 

木下 洋輔(MUGENUP):

今回、自分はMUGENUPのCGモデラーとして「店員ちゃん」の3Dモデルを制作させていただきました。この「アバターちゃん」シリーズですが、やはりコトブキヤさんならではのポイントやこだわりがたくさん詰まってますよね。

 

飯嶋:

そうなんです。その特徴のひとつが「VR空間の中で、ちゃんと可愛い」という点だと思います。あたりまえのことかもしれませんが、VR空間で可愛く見えるためには「アバターが三次元として可愛い」ことがカギになります。

 

ゲームや映像の場合、最終的にはディスプレイやスマホなど平面で表示されます。一方でアバターはVR空間の中では立体として存在するんです。フィギュアやプラモデルと同じなんですね。

 

普段私たちがフィギュアを作る場合、画面上のモデルと3Dプリンターで出力した立体とでは、見える形や印象に必ず差が出てしまいます。同じようにディスプレイとVR空間とでは見え方が違います。アバターが可愛いく見えるためには、三次元で可愛いモデル造形が必要になる。そこにコトブキヤらしさを出せると思いました。

 

立体としての可愛さを突き詰めていくため、今回、原型チームの白髭に「アバターちゃん」シリーズを監修してもらったんです。

 

白髭 創(コトブキヤ):

ぼくはこれまでずっと、フィギュアの原型制作に関わってきました。コトブキヤとして初のPVCフィギュアキットが自分の原型だったという思い出もあります。主な作品としては『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』や『遊戯王』のシリーズなどでしょうか。

 

もともとこのプロジェクトに関わっていなかったんですが、ある日、飯嶋から「手伝ってほしい」と頼まれたんです。さいとうなおきさんのデザインイラストと3Dモデルとをつきあわせて、このイラストを立体にしたらどうなるのか。フィギュア的な視点から、顔や頭など頭部を中心に監修させてもらいました。

三面図はモデルの設計図。立体としての正しさが必要

飯嶋:

VR空間で実際にアバターを遊んでいただくシチュエーションを考えると、他のプレイヤーがコミュニケーションをとるために自分のことを前後左右360度から見ることになります。どの角度から見ても可愛く、しかも三次元としておかしくないモデルにしなければなりません。イラストをもとにモデル用の三面図を固めていくところから始まりました。

 

木下:

でも、この三面図を固めていくのが大変なんです。デザインイラストだけではなく、さいとうなおきさんのこれまでのイラストもたくさん見ながら、「さいとうなおきさんの画風」を出せるように三面図を作っていきました。

 

アバターちゃん

△クオリティの基準となる三面図のうち、「店員ちゃん」の正面図。常にさいとうなおきさんのイラストを参考にしながら、特徴を踏まえて仕上げていく。

 

白髭:

フィギュア製作でもそうですが、イラストをそのままトレースして立体にすると、角度がついたときに全く別の顔に見えてしまうことがあるんです。三次元的に正しく描かれた三面図が最初からあると理想なんですが、なかなかそうもいきません。まずはしっかりと造形の目線で三面図をつくります。

 

木下:

ここで作る三面図はモデルの設計図となりますので、三次元的に正しくなければならないんです。もちろんこれはあくまでも三面図の話であって、デザインイラストを描く段階では立体を意識していただく必要はありません。クリエイターの個性や絵柄でデザインしていただいて、それを立体に落とし込んでいくのがモデラーの仕事です。

 

白髭:

そうですね。キャラクターの魅力やクリエイターの画風を踏まえて推しのカットを決め、それを基準にいい感じになるように造形していきます。

画風をいかしながら、どの角度からでも可愛いように

木下:

そこからモデルを作っていくわけですが、デザインイラストそのままとは限りません。この「店員ちゃん」の場合だと、まつ毛の長さやまなじりのラインは、斜めから見たイラストを意識して調整しています。また、鼻の線も、さいとうなおきさんの特徴を大事に、モデル的には鼻の頭にいれています。


△白髭氏が手を加えて監修した「店員ちゃん」のビフォーアフター。鼻の高さや口の位置、目のバランス、顔の輪郭など、細かく白髭氏の手が加わっている。

 

△全体的に鼻の高さを調整したことで、光が当たった時の鼻の影の落ち方が大きく変わっている。フィギュア目線で見たときにコトブキヤとして譲れないポイント。

 

木下:

そのあと白髭さんにモデルを監修してもらったわけですが、この監修が本当にすごかったんですよ! 白髭さん自身に手を入れていただいたことで、はっきりとわかるくらい良くなりました。正面はもちろん特に横や斜めから見たときの印象が、ぐっとさいとうなおきさんらしくなりました。イラストに寄せていく「似せのクオリティ」の高さは、まさに原型を作っている方の技術だなと思いました。弟子になりたいと思ったくらいです(笑)

 

白髭:

恐縮です(笑)角度がついているイラストにあわせるために「目のフォルムはもうちょっと……」「頬のラインは……」など全体的に細かくいろいろ調整しながら正解を導き出していきました。

 

例えば鼻のせり出し具合に差があった場合、正面からは同じに見えても、斜めと横で鼻のラインの見え方が変化するわけです。そういう立体ならではの部分を、「イラストのテイストを踏まえつつ、多くの人が好きなラインはこの辺じゃないかな」と調整していった感じです。

 

飯嶋:

今回の「アバターちゃん」は、影が落ちるところも監修の段階でチェックしました。三次元だと影の落ち方によって造形が歪んで見えたりすることもありますが、フィギュアでは許されません。そういう「立体として可愛い」部分を白髭に詰めてもらったわけで、それこそがコトブキヤらしさだと思います。

アバターちゃん

△正面だけではなく真横からもチェック。モデルの歪みが判断しやすいように、影をおとして確認している。

 

アバターちゃん

△細かい調整を重ね、最終的に出来上がったアバターがこちら。コトブキヤらしくフィギュアやプラモデルのノウハウを活かし、どの角度から見ても可愛いアバターに仕上がっている。

 

以上、前編をお届けしました。後編では発売までの隠されたストーリーや、VRファンが本当に楽しめるようにと盛り込まれた様々なこだわりを掘り下げていきます。

 

アバターちゃんのロゴ

「アバターちゃん」シリーズの最新情報はこちら!

https://www.kotobukiya.co.jp/event/event-230568/

MUGENUP

株式会社MUGENUP。2Dや3Dグラフィックの制作をはじめ、映像制作、クリエイティブ制作管理ツールなどを展開する総合クリエイティブ制作企業。

https://mugenup.com/