【DL同人の最前線】銀曜ハルが語る!販売数別・DL同人の企画と制作方針

【DL同人の最前線】銀曜ハルが語る!販売数別・DL同人の企画と制作方針

1340億円市場(2024年度予測)とされる同人誌市場。2020年の741億円から急激な成長を遂げている。(出典:矢野経済研究所

 

その背景には、従来のようにクリエイターがクライアントの受託制作や出版社を仲介した制作に依存するのではなく、自身のコンテンツやサービスを直接制作・販売することで生計を立てられる新たな仕組みが整ったことにある。

 

こうして創作の自由と収益化のハードルが同時に解消された現在、クリエイターたちはこれまで以上にのびのびと活動できる時代を迎えました。

 

本シリーズでは、そんな最前線で活躍する多彩な経歴をもつクリエイターの皆さんにインタビューを敢行し、それぞれが辿ってきた道のりと今なお進化を続ける創作の現場に迫ります。

 

※本記事は『DL同人、はじめてみたらこうだった 成功者の実体験から学ぶ自分らしい稼ぎ方』(著:いちあっぷ編集部、構成・執筆:いしじまえいわ)から一部抜粋したものです。WEB向けに一部調整しているため、本書と内容が一部異なります。

 

■目次

販売数別・DL同人の企画と制作方針

 DL同人活動入門者(0冊~10冊向け)

 DL同人活動初心者(10冊~100冊向け)

 DL同人活動中堅者(100冊~1000冊向け)

はじめての同人活動を振り返って

インタビュイー:銀曜ハル

同人作家。FANZA同人にて2024年総合ランキング1位を獲得、その他の作品も複数ランクイン。年商4.5億円の大ヒット作家。

X:https://x.com/haru_blender

販売数別・DL同人の企画と制作方針

――早速ですが、これからDL同人活動を始めようとしている方に向けて先生のご経験を踏まえた「売れる同人の企画や制作ノウハウ」について教えてください。

 

銀曜:

アドバイス、ですよね……。

 

それはアドバイスをする相手の状況によって話すべき内容もかなり変わってくると思うので、ここでは仮に成年向け漫画のダウンロード販売を前提として、「現在どのくらい売れているか?」を軸に「0から10冊」「10冊から100冊」「100冊から1000冊」の3パターンに分けてお答えさせていただければと思います。

 

いいでしょうか?

 

――もちろんです。よろしくお願いいたします。

DL同人活動入門者(0冊~10冊向け)

銀曜:

では最初に、0冊から10冊くらい、つまり同人活動を始めたての方に向けてです。

 

と、ここまでもったいぶった言い方をしておいて申し訳ないんですが、僕には「こうすれば売れる」「今はこれが売れる」という発想やアイデアはないんですよ。もしそういうものが存在したとしても、僕には分りません。

 

同人界隈の人たちと集まった時、そういうトレンド分析みたい話になることもよくあります。また、みなさん分析のためにDL同人を買って読んでいるようです。

 

でも僕は「面白そうだな、続きが気になるな」「自分の創作の参考にもなりそうだな」と思ってDL同人を買うことはあっても、売れ線の分析のためにランキング上位の作品を買う、ということはしていません。

 

どちらかというとDL同人ではない漫画を買って読んで、クリエイティブの参考にしている、という感じです。

 

なのであくまでそういう分析的ではない観点からのアドバイスになってしまうんですが、同人活動始めたての方やこれから始めようとしている方がまずすべきことは、「作っていて自分自身が楽しいものを作ること」だと思います。

 

そして、作ったものを世に出して売って人の手に届けてみることです。その際、作るものがどんなに稚拙なものでも構いません。

 

実際に作品を作って売ってみると、ほとんどの場合想像していたより売れないと思います。ですから、作ること自体が楽しいものでないとその次にまた作ろうという気になりません。

 

また、自分が楽しめない作品は他人が買って読んでも楽しめないはずです。だから作っていて自分が「楽しい」と感じられるものを作ることが一番なんです。

 

1作、2作と楽しみながら作っているうちに、もっとこうしたいああしたいという気持ちが出てくるので、継続して作れば作るほどスキルも上がっていきます。

 

また、作ることにも慣れてくると余裕が出てきて、売るためのアイデアや工夫も生まれます。そうやって考えられること、出来ることが増えていくんです。

 

――ではやはり、自分の内面から湧き出る「好き」という気持ちが一番大事なんですね。

 

銀曜:

そんな高尚なことではないんですよ(笑)。

 

自分もその当時流行っていて自分も好きだった作品の同人誌を出したことはあるんですけど、二次創作って描くためにはかなりその作品に向き合うことになるので、「ちょっと好き」くらいの感じだと飽きちゃうんですよ。

 

飽きてしまうと作るのも苦痛になってきて、向き合ってられなくなります。さらに売れないとなると絶対もうやりたくなくなりますよね。

 

ですから、「今この作品が売れてるからその二次創作本を出そう」とか「楽して儲けよう」といったモチベーションだと結局上手くいかないんじゃないかと思います。

 

逆に作ることが楽しければ、仮に売れなかったとしてもそこに費やした時間は楽しかったわけですから、またやりたいなと思えるはずです。そこの差は大きいですよね。

DL同人活動初心者(10冊~100冊向け)

――続いて、現在10冊から100冊程度売れている方へのアドバイスをお願いします。

 

銀曜:

この販売数で停滞してしまっている作家さんサークルさんには1つ傾向があると感じています。

 

それは「商品として買ってもらえるクオリティに達していない」ということです。

 

当然、誰しも最初は初心者ですから初心者らしいものを作ればいいんです。

 

ですが買い手のことを考えた時、あまりに素人然としたクオリティの本と、表紙のデザインやタイトルロゴなどが商品らしく仕上がっている本とだったら、お金を出して買う以上、当然商品らしくしっかりして見えるものの方が安心です。

 

販売数が伸び悩んでいる方は、この点から自分の作品を見直すべきだと思います。

 

――100冊までくらいならある意味愛嬌で売れるけど、それより多くの人に手に取ってもらうためには商品としてのクオリティが必要になってくる、ということですね。

 

銀曜:

そうですね、愛嬌もそうですけど、それ以外にも流行りのものを描くだとか、ページ数が多いだとか値段が安いだとか、そういう工夫でも100部くらいまでなら売れるんじゃないかと思います。

 

ではどうすれば商品らしくなるのかについては、パッケージ、つまり作品の表紙やサムネイル画像など漫画自体を読む前に読者が経由するものがちゃんとした商品に見えるものになっていることが重要です。

 

キャッチコピーの文章や作品タイトルはちゃんとお客さんに訴求するものになっているか、タイトルロゴがMicrosoft Wordで作った町内会の会報みたいなものじゃなくてきちんとデザインされたものになっているか、サムネイルは小さく表示してもキャラの顔やコピーが視認できる大きさや色になっているか。

 

既に販売実績が結構あるのに、そういったところにまだ気が行き届いていないサークルさんは意外と多いです。表紙やサムネイルなどが素人然としたクオリティのままだと、100人以上の人にそこからサンプル漫画に遷移して、最終的に購入ボタンを押してもらうのは難しいと思います。

 

――本を商品っぽく見せるには考慮すべきことが無数にあるように思うのですが、どうすれば商品らしさを自分で判断できるようになるのでしょうか。

 

銀曜:

まずは模倣でいいと思いますよ。

 

フォントの選び方やキャラクターの配置、ポーズ、見せ方、全体の色味、盛り込む情報など、売れている作品の表紙やサムネイルをたくさん見て、自分が商品らしいな、製品らしいなと感じるポイントを真似すればいいと思います。

 

もちろん完全なコピペやトレースはダメですが、模倣を繰り返すうちに見方やセンスも身に付いていくものだと思います。その中で、たとえば「総ページ数を大きく表記する」といったような、売れ筋作品のパッケージのパターンに気付くと思います。

 

ちなみに、もし自分にそういうセンスがないと分かったら、誰か得意な人に頼むのもアリです。業務として依頼できるようになるのはもう少し売れてからになるかもしれませんが、「必ずしも全て自分でやる必要はない」ということは気に留めておいていいと思います。

DL同人活動中堅者(100冊~1000冊向け)

――それでは最後に、既に100冊から1000冊は売り上げている作家さんサークルさんがそれ以上を目指す上で留意すべきことについて教えてください。

 

銀曜:

100や1000以上となると、もう表紙の見せ方とか工夫といった小手先のことでは数字はそんなに動きません。そこで求められるのは中身、つまり漫画としての基礎技術がしっかりしているかどうかだと思います。

 

――漫画としての基礎技術というのはどういったことでしょうか。コマ運びとかキャラ立ちのさせ方とか、そういったことですか? 

 

銀曜:

そうですね、細かく言うとそういうことだと思いますし、チェックすべきポイントは多岐にわたると思います。

 

これは漫画に限らず映画でも小説でも同じだと思うのですが、要するに大事なのは「読者が変なところにひっかからず最後まで鑑賞できるか?」ということです。

 

「このコマで主人公は何をしてるの?」とか「え、このキャラ誰?」とか「今の展開、どういうこと?」といった風に、読者が漫画を読み進める上で不必要な引っ掛かりを感じるのであれば、それは基礎的な漫画のスキルが足りていないということです。

 

逆にそういうツッコミどころがなく最後まで読める作品はそれだけで十分上手いと思います。

 

ここで注意していただきたいのは、漫画の上手さと絵の上手さは必ずしも比例しない、というか割と別物であるということです。クリエイティブ畑でない人だとここを混同してしまう方もいると思います。

 

たとえば、あっさりした絵よりもハイディテールで写実的な絵の方を上手いと感じる人は多いですよね。

 

僕たちクリエイターは、もちろん緻密に描き込まれた素晴らしい漫画もありますが、逆に必要最低限の線でそのキャラクターの心情や状況を的確に表現するような絵も「上手い!」と感じます。

 

また、いくら絵が上手くても、コマ運びや漫画としての構図など、漫画としての技術があまりないというケースもあります。

 

――では、「じゃあ1000部以上を目指すために漫画の基礎力を鍛えよう! まずは絵の練習だ!」というのは間違いなんですね。

 

銀曜:

もちろん画力そのものに問題がある場合もありますし、その場合は絵の練習もいいと思うのですが、それだけやればいいと考えるのは間違いでしょうね。

 

1000部以上をコンスタントに売れる人というのは、画力、構成力、漫画表現、シナリオなど、漫画の基礎がしっかりできている人がほとんどです。

 

そこを目指すのであれば「漫画としての読みやすさ、ひっかかりのなさ」という観点で自分に足りていない漫画スキルを見つけて、それを地道に改善していく必要があると思います。

はじめての同人活動を振り返って

――具体的なアドバイス、ありがとうございました。ここで最後に、先生自身の駆け出しの頃についても伺いたいと思います。初めて同人誌を売った時、結果や手応えはどうでしたか?

 

銀曜:

僕の場合、東方キャラのエッチなイラスト集が最初でしたね。500部刷って最初のイベントでの販売数が17冊でした。

 

――それはやってしまいましたね。かなり在庫を抱えたと思うんですが、そこでめげたりはしなかったんでしょうか。当時どう感じられたか、覚えていますか?

 

銀曜:

正直よく覚えていないんですが、「これ(在庫)どうしよう」とは思ったと思いますよ。

 

当時から委託販売というものがあることは知っていたのでイベント後はとらのあなさんに100冊くらいは納品させてもらいましたが、家には300冊以上来たわけですから。メロンブックスさんには取り扱い拒否されましたし(笑)。

 

――(笑)。

 

銀曜:

でも、挫折とかがっかりとかそういうことよりも、自分が作った本を人がお金を出して買ってくれたことの感動の方がよく覚えていますね。「本当に買ってくれた!」って。

 

あと、少しだけ当時の自分をフォローしますと、『げんしけん』の主人公たちはイベント初参加で確か200部売り切ってるんですよ。

 

それを読んで僕は「こいつらが200部売れるんなら俺はもっといける」と思っちゃったんですね。実際は初参加で200部は相当ハードル高いです(笑)。

 

――初心者を勘違いさせる、いけない漫画だったわけですね(笑)。

 

銀曜:

そうですね。……あ、余談かもしれないんですけど、このエピソードには続きがあって。次のイベントでは僕、何故か1000部刷ってるんですよ。

 

――どういう心理状態だったんですか。普通それだけ在庫を抱えたら次は部数を減らすものじゃないですか?

 

銀曜:

その時僕自身何を考えてそうしたかは覚えていないんです(笑)。

 

多分1回目の時に何か手応えを感じて「次のは前のよりもスゴいからいける」と思ったんじゃないですかね? 

 

前回イラスト集だったのを漫画にしたからかな……。まあ普通、本というのは2巻が1巻より売れることはないんですけどね。

 

――そのセオリーを超える何かが新作にはある、と当時は思われたんですかね?

 

銀曜:

そうだったんですかね……。まあ実際、1冊目よりも売れなかったんですけど(笑)

 

――セオリー通りじゃないですか(笑)。それにしてもすごいですよね、その前向きさ。普通の人ならその2回でメゲてしまいそうです。

 

銀曜:

売上だけが目的なら絶対に3回目はないですよね。

 

2回目だってないかも(笑)。でも、本当に楽しかったし嬉しかったんですよ、人に自分の本を買ってもらえるのが。その経験がなかったら、もしかしたら今こういう活動はしていないかもしれません。

 

デジタル上でもいいねの数や閲覧数やコメントなどで近いものを感じられますが、やっぱり対面で買ってもらった時の嬉しさは格別です。

 

ですので、これから同人活動を始める人はリアルでの同人活動から始めるのがいいのかもしれません。そこに感動があれば1回目2回目で売れなくても「次はこういうのでいくぞ!」と前向きに続ける気になるんじゃないかと思います。

 

著:いちあっぷ編集部

構成・執筆:いしじまえいわ

 

続きは、『DL同人、はじめてみたらこうだった 成功者の実体験から学ぶ自分らしい稼ぎ方』より御覧ください。

 

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