漫画の作画に必要な要素として、キャラクターと背景だけでなく「効果」というキーワードが重要になります。
キャラクターの心情や状態を、セリフや表情で表現するだけでなくシーンに合った効果を加えることで、グッと心情表現が強くなり読者にしっかり伝わります。
今回はそんな効果の中から基本的な種類を紹介しましょう。
▽目次
《マンガ制作初心者向け》効果の基本
効果が一切ない少女の絵です。
こちらに様々な効果を加えてみましょう。
スピード線(流線)
平行線を重ねて、スピード感のある効果をもたらします。
線同士の間隔をランダムにすることで一層と速度感が出せます。緊迫したシーン、躍動感のある場面に向いています。
フラッシュ(集中線)
画面の中心部を決めて、そこに向かって外側から線を引いていきます。
線の集まる中心部に注目を向ける効果があります。
ハッと目を引く何かがあったとき、もしくは重要なセリフを言ったキャラクターを注目させたいときなどに使います。
もや
△作例は「カケアミもや」
カケアミなどで煙のような帯を描写することで、キャラクターが戸惑う、悩む、恐怖などの不穏な雰囲気を演出できます。
もやの色が濃ければ濃いほど深刻な空気が出せます。
ホタル
背景をベタか濃いトーンにし、ふわっと光らせることでホッとする一言があったり、緊張を緩ませたりと癒しの効果を演出できます。
さらに、光の玉の数を増やしたり、大きくすることで癒やしの表現を通り越して恋愛のときめき感の演出もできます。
他にもホラー向けやギャグ向けの場面ごとにさまざまな効果を発揮します。
自分で描写する効果線や、効果トーンなどを組み合わせてキャラクターや場面にあった効果を出してみましょう!
《マンガ制作経験者向け》同じような効果の使い分け
実際にプロの漫画を見ると、初心者編で説明した基本的な効果の中でも更に細かく分かれて実用されています。
ここからは、同じ種類の効果の使い分けを紹介しましょう。
ポイントは「白と黒を使いこなして効果をいっそう効果的に!」です
フラッシュ(集中)の使い分け
フラッシュの効果を入れた絵をふたつ並べてみました。
左に比べて、右の絵は「注目度」が強く出ています。右の効果は集中線より高度な「ベタフラッシュ」を使っています。
ベタを入れることによりコントラストが強くなり、集中線の先にある中心部の印象がより強くなるのです。
スピード線(流線)の使い分け
こちらも同じ種類の効果ですが、右の絵は「キャラクターの背後が気になる」ようなスピード線になっています。
これは、スピード線が途中で消えていることにより「消えたその先」に目線が思わず行ってしまうのです。
画面の特定の方向に目線を向けることで、キャラクターに一層と動きをつけられます。
トーンを使うことで効果がより幅広くなる
先程までと同じ絵ですが、もや系のトーンに光を多用した柄を使うことでホタルの効果になり、ときめきの効果が生まれます。
キャラクターの頬に少し照れたような線を入れることで、あっという間に少女漫画のようなワンシーンに。
こうして「ベタで暗くする」「線の先を消す/光らせる」などのテクニックを取り入れることで効果の幅をより広くできます。
連載漫画から効果トーンテクニックを学ぼう
それでは今回も連載されている漫画作品『クラウドヘブン-壊れゆく彼女-』(著者:神楽武志、両角潤香)を参照し、実際の効果テクニックを見てみましょう。
心情描写を演出するテクニック
いきなり消失という不穏な言葉、そしてどこかに移動しているキャラクター達。
その状況にはこんなテクニックが使われています。
微妙な心理をあらわす、もや効果、更にスピード線にベタを取り入れて目的地の深さを出しています。
同じ効果が続くときの対策テクニック
続いて激しい戦闘シーンを紹介しましょう。
緊迫感ある戦闘シーンゆえに、どのコマにもスピード線やフラッシュが入っています。
同じ効果が続いてしまうと単調になってしまいがちに……
そこで、効果線や効果トーンなど、線やトーンを組み合わせて単調にならないようバリエーションをつけています。
数ページにまたぐアクションシーンも、角度や種類を変える、白黒のメリハリをつけるなどで単調さを回避できます。
色々な効果をマスターして、メリハリのある画面作りをめざしましょう!
著・画 両角潤香
漫画家、イラストレーター。主に角川系や電撃系の少年誌等で活動。ゲームやアプリのキャラデザインやイラストも多数手がける。
イラスト技法書制作やアミューズメントメディア総合学院東京校講師も行っている。2016年夏より月刊コミックアライブ(KADOKAWA刊)にて「クラウドヘブン-壊れゆく彼女-」連載中
参考作品
『クラウドヘブン-壊れゆく彼女-』著:神楽武志×両角潤香
KADOKAWA刊 月刊コミックアライブ連載中。単行本1巻絶賛発売中。