あなたの手掛けたアイデアがアニメ化する。そんなプロジェクトが2017年12月に始動しました。その名は「Project Anima(プロジェクトアニマ)」。
▽Project ANIMA
DeNA、文化放送、創通、MBSが共同でTVアニメシリーズを制作する大規模プロジェクトです。サテライト・J.C.STAFF・動画工房といった一線級のアニメスタジオがTVアニメ化に向けて選考するほか、書籍・マンガ・ゲームと、さまざまなメディアでの展開が検討されます。
そこで今回はProject Animaの総合プロデューサーである上町祐介さんに選考ポイントやヒットの道筋、クリエイターに求められているものをお伺いしました。
▼目次
小説・脚本・漫画・イラスト・企画書・動画なんでもOKな公募企画!
作品への熱量、固定概念を打ち破る勢い、物語への”没入感”がヒット作への道筋となる
小説・脚本・漫画・イラスト・企画書・動画なんでもOKな公募企画!
―― 早速ですが、Project ANIMAの立ち上げ経緯を教えてください
僕は元々、ゲーム業界でプロデューサーとして「IP創出」というミッションを掲げて活動していました。
ただ、従来のやり方ではヒット作をベースに経験者達によってヒット狙いの“アニメ”という名の商品になってしまうのでは? という思いもどこかにあったのです。
そんな中で真に「IP創出」を行うのであれば、まずは新たな才能発掘を行い、そして発掘したクリエイターの情熱をキチンとヒット作品へと成長させる仕組みを創るべきではないかと思い、本プロジェクトを立ち上げさせていただきました。
―― プロジェクトを開始してからの反響はいかがでしたか?
アニメ業界の方々にも面白がっていただいて、これからを背負って立つクリエイター発掘というところへの期待は非常に高いです。
クリエイターの方々にも「昔から温めていた企画を出したい」とか、「これをきっかけに止めていた創作を再開しました!」という、創作に対するピュアな想いをぶつけていただいており、非常に喜ばしい限りです。
また、一線級で活躍しているプロのクリエイターさんからもこっそり応募するけどいいかな?みたいなお話もいただいています。
―― 一般的な公募で見かける漫画や小説だけでなく、イラストや企画書、動画といった様々な媒体で応募可能ですが、どの応募が多く集まっていますか。
小説が圧倒的に多く、次いで企画書が多い印象です。
小説・脚本はエブリスタ編集部、漫画はマンガボックス編集部、企画書・イラスト・動画は僕が審査員をしています。これら一次審査では各選考ごとに20作品程を通そうと思っています。そういう意味では応募総数が少ない、漫画やイラストの部門はチャンスかも知れません。
―― こういった公募で企画書を募集するのは、珍しいですよね。
そうですね。本プロジェクトにおいて「企画書で応募」は特徴的なものだと思っています。
絵や文章表現するのが苦手な方でも、作品のアイデアがあるじゃないですか。それを企画書というかたちにして参加いただけるとうれしいです。
ちなみに「企画書ってどんなものを書けばいいの?」という質問がたくさんありましたので、そんな方はProject ANIMA 公式ブログをご覧いただければと思います。プロジェクトに関する情報を発信しています。
作品への熱量、固定概念を打ち破る勢い、物語への”没入感”がヒット作への道筋となる
―― これら3部門の作品はどのような視点で審査されるのでしょうか?
計算されたような商業ベースのヒットより、作品に対する熱量の高さ、これまでの固定概念を打ち破るような勢いが欲しいと考えています。
ですので、必ずしもキレイな文体である必要もありませんし、まとまったデザインでなくても良いと思っています。
―― 公募になると、キレイに体裁を整えて細かな部分まで気を配って、完成度を高めようと意気込んだりしますが、この公募ではそういったところまで気にしなくていいのですね。
気にしなくて大丈夫です。例えば、僕が審査しているイラストでは、Twitterなどに気軽にあげるようなそれこそ落書きレベルの作品を投稿いただいても全く問題ないです。完成度よりも好きが作品に現れていることが重要だと思います! とにかく熱量がこもった作品を出してほしいからです。
熱量というのは例えば、小学校や中学校の頃、ノートの隅っこや自由帳に「自分の考えた最強のキャラ!」とか考えたことがある方は多いと思います。それもある種の熱量であって、作品の大きな魅力に繋がると思います。
―― 熱量を重視していますが、そこを重視する理由はなんでしょうか?
熱量が高いことで、その人にしか生めないコンテンツになると思っています。
対して、熱量が高くないものは、誰でも作れると思っています。例えば、自分が作れなくても、他の人に頼めばどうにかなるものってありますよね。その人にしか発想できない熱い想いが、固定概念を打ち破るような作品を作り上げるんだと信じています。
例えば、熱量があるものとしてFateシリーズなどを手掛けているTYPE-MOONさん。『Fate/Grand Order』のサーヴァントはレア度関係なく、どのキャラクターも愛されている作品のひとつだと思います。あれは、キャラクターデザインやシナリオ、その他のクリエイティブに携わるクリエイター達の熱量が高いからこそ成し遂げられる究極の形だと思います。
―― 作品に対して重要視している選考ポイントとはどこでしょうか?
物語として一番重要視しているポイントは”没入感”です。
物語やキャラクターにどれだけ感情移入できるか、没頭できるかという点をしっかり作り込めるかどうかが重要だと思っています。
作品自体にリアリティがあるということでもいいですし、すごく壮大な世界観だけど実はすごく身近なところにフォーカスがあるといったことでも良いです。
例えば『プラネテス』なんかは宇宙開発を扱ったSFでありながら、民間企業での群像劇といった極めて身近なところにフォーカスされていて、没入感が得られやすかったり。『キングダム』は中国の壮大な世界の話でありながら、実は「出世の話」だったりして、フォーカスを絞って入りやすくすることはポイントだと思います。
設定に凝って独自性が確立されたとしても、それを読者や視聴者が理解できなければ非常にもったいないので、大事にしていただきたい要素です。
―― イラストについてはどうでしょうか?
イラストやデザインについては、従来の作品の概念を超えるような新しい感性に期待しています。
例えば、第一弾「SF・ロボットアニメ部門」では、マクロスシリーズを手掛けた河森正治さんが審査員を務めていますが、河森さんが期待していることのひとつにマクロスでもなく、ガンダムでもない新しい感性で生み出されたメカデザインがあります。
プロデュースの視点ではどうしても売れ線のいい子なデザインに落ちてしまう所があるので、そんなことは気にせず好きなものを好きな形で表現していただきたいです。
ヒット作品に通じる「気持ちよさ」
―― 「IP創出」をミッションとしたプロジェクトですが、どのようなIPを目指しているのでしょうか?
IPって何だ!?っていうそもそも論があると思いますが、僕は誕生から10年以上ファンを熱狂させられる作品こそがIPだと思っているので、明確にそれを目指していきたいと考えています。逆10年ファンを熱狂させられる作品は、その先も永遠に続いていくと思います。
―― マンガアプリやSNSなどの登場でエンタメが溢れている中、これからはどのような作品が大勢の心を掴んでいくのでしょうか?
「作品の面白さ」や「主人公のかっこよさ」や「ヒロインの可愛さ」みたいな 従来の評価基準に加えて「気持ちよさ」が大事というのが僕自身の実感としてあります。
例を挙げると『ガールズ&パンツァー』の戦力差を奇策と友情でひっくり返す「気持ちよさ」とか、『けものフレンズ』における問題解決した後に肯定される「気持ちよさ」とか、『ポプテピピック』の頭空っぽにして没頭できる「気持ちよさ」とか、いろんな「気持ちよさ」が需要として存在しているのではないかと感じています。「気持ちよさ」を意識して作品を観ると大勢の心を掴む本質的な要素が掴めると思いますね。
クリエイターに必要なことは、その作品の良さを明瞭化すること
―― 最近はIP創出のひとつにSNSで反響が合った作品をスカウトするスタンスもありますが、公募することによる期待はなんでしょうか?
「公募」って言われたら「よし!挑戦してみるか!」って気持ちになるじゃないですか。
それって好きなものをSNSにアップするのとはまた違ったベクトルの「創作」だと思っていて、今回は「創作」に対する「熱量」を大事にしているので古き良き公募という形式を取りました。
併せて「創作」というものをより多くの人にやってもらいたいなという思いも強くあります。
「小説書いてみようかな」とか言いながら一行も書かずにここまで来てしまった人や心の中に秘めたアイデアを抱えた人に「創作」への一歩を踏み出してもらいたいという思いから「プロ・アマ問わずの公募」や「企画書での募集」という形をとりました。
箇条書きでもメモ書きでも、少しでもアウトプットした瞬間に創作が始まると思います。
―― これまでに持ち込み会などを開催してきましたが、クリエイターによくするアドバイスはなんでしょうか。
「自分の作品の好きなところ・良いところを明確に説明できるようになって欲しい。その上でもっともっと好きになるにはどうブラッシュアップすべきか考えてほしい。」とよくアドバイスを送っています。
この「作品の良さを明瞭化する」素養は作品作りにおいて大事な部分なので、明瞭化できないコンテンツは魅力も伝わりづらいと思います。
―― イラストでの応募で期待していることはなんでしょうか。
とにかく新しい世界、新しいメカ、新しいキャラクターとの出会いを求めています。このイラストをアニメで動かしたい!この声優さんに声を当ててもらいたい!この可愛いヒロインをみんなに見てもらいたい!といった我欲で構いません。
第一弾のテーマはSFですが、メカやロボットが描けなくても人物キャラクターだけでも大丈夫です。銃が人の善悪を裁くSF『PSYCHO-PASS サイコパス』や現代を舞台にしながらタイムリープを扱ったSF『STEINS;GATE』などたくさんの名作はあります。
さらに、イラスト部門は複合的に採用する場合があります。例えば、これは大賞作品のメインキャラクターに採用、こちらはサブキャラに採用、それは悪役キャラに採用など、良いと思ったデザインは幅広く採用することも考えています。
体裁とか気にせず好きなものを好きにぶつけていただきたいです。
大賞作品は2020年代にアニメ化!
―― それでは最後に一言。
今回のプロジェクトの根底にあるのは、何と言っても全てのクリエイターさんへのリスペクトです。クリエイターさん達がより自由に創作を行い、そしてそれがより多くの人に届けられるような流れをこのプロジェクトで達成できればと思っています。
2020年代の新たなエンターテインメントを是非一緒に作っていただけると幸いです。