「マンガを描いてみたけど、どのコマも顔のアップや腰から上の絵ばかりになってしまう……」なんて方いませんか?あるいは「どのページも似たような構図ばかりで、単調で面白みがないんじゃないかな」と悩んでいる方も多いと思います。
そんな方は映像の世界で使われる“カメラワーク”を頭に入れておくと良いでしょう。
“カメラワーク”には3要素と言われる
- カメラサイズ
- カメラポジション
- カメラアングル
があります。今回は「カメラサイズ(被写体の大きさ)」をわかりやすく紹介しますので、読者を飽きさせないようにコマの中の人物のサイズやレイアウトに役立てていきましょう。
▼目次
カメラサイズ(被写体の大きさ)
①フルサイズ(F.S)
②ミディアムサイズ(M.S)
③ウエストサイズ(W.S)
④バストサイズ(B.S)
⑤アップサイズ(U.S)
⑥クローズアップ(C.U)
⑦超クローズアップ(V.C.U)
⑧ロングサイズ(L.S)
コマとカメラサイズを考えよう
頭が切れるコマの多用に注意を!
コマ内の空間を意識した演出方法
カメラサイズ(被写体の大きさ)
カメラサイズとはフレームの中の被写体の大きさを指します。
このカメラサイズには様々なバリエーションがあり、サイズによって見る印象が大きく変わります。「その人物のどのような状況を表現したいか?」を考えて最適なサイズを選択しましょう!
①フルサイズ(F.S):人物の足元から頭まで全身が納まるサイズ
②ミディアムサイズ(M.S):人物の膝上から頭までが納まるサイズ
③ウエストサイズ(W.S):人物の腰上から頭までが納まるサイズ
④バストサイズ(B.S):人物の胸上から頭までが納まるサイズ
⑤アップサイズ(U.S):人物の頭全体が納まるサイズ
⑥クローズアップ(C.U):人物の顔に接写したサイズ
⑦超クローズアップ(V.C.U):人物の顔の一部(目・口など)を接写したサイズ
⑧ロングサイズ(L.S):人物の全身が入り、場所が分かるサイズ
コマとカメラサイズを考えよう
このカメラサイズを意識した上で、コマの演出を考えていきます。
頭が切れるコマの多用に注意を!
上の2つの図は同じように左ページを縦2段5コマで割った例ですが、どちらが1ページのレイアウトとして相応しいでしょうか?
正解は右の図になります。一般的に人物を含んだ絵は、頭が画面に全て納まり、少し頭頂部に空間がある状態が安定しているとされます。
左の図は4コマ目までクローズアップが続き、5コマ目でもさらに頭頂部が切れた図になっており不安定な印象を読者に与えているのです。
5コマ目がこのページの決めゴマですから頭頂部まで見えるように、さらに小口側(ページをめくる側)を断ち切り(紙いっぱいに描く)にして大きく見せるとよいでしょう。
コマ内の空間を意識した演出方法
①ノド側に気を付け、空間に意味を!
上の図は左右の見開きページを想定した女の子のバストサイズの振り向きポーズですが、どちらのレイアウトの方がよく見えるでしょう?
正解は右の図になります。左の図はブロマイドショット的に顔が画面の中央に納まり頭頂部にも空間があり安定していますが、逆を返せば面白みがない絵とも言えます。
また、ノド側(ノリやホッチキスで固定している側)に左目がかかって製本されると見づらくなるのです。
右の図はノド側を考え両目が読者に見えやすい位置にしてあります。また画面右に広めのスペースが出来ましたが、空間の向こうから光が差し込んでいる様なシーンにも見えます。
安定したレイアウトも大切ですがストーリーやキャラクターの感情の流れを考慮し、シーンに合わせて上手く空間を利用したいものです。
②小道具や服も見せバランスを!
上の2つの図は女の子が剣を抜こうとしているシーンですが、どちらがレイアウトとして相応しいでしょうか?
こちらも正解は右の図になります。人物の絵は頭が画面に納まり頭頂部に空間があるのが安定していると説明しましたが、左の図は無理に頭頂部やリボン・髪の全てを見せようとしています。
何かしら右上の空間に意味を持たせるなら別ですが、右の図の様に頭頂部やリボン・髪のシルエットが多少見えなくても小道具や服をもう少し見せてバランスを取った方がよいでしょう。
マンガは「コマの大小の付け方」がとても大切ですが、コマの中の人物サイズ“カメラサイズ”に変化を付けることで、キャラクターの感情表現をより明確に読者に伝えることが出来るのです。
描き始めて間のない方は「アップサイズ」や「バストサイズ」ばかりを繰り返してしまうことが多いと思いますが、体や体のパーツ、小道具を描くことをめんどくさがらないのが大切です!
コマを割ってなんとなくその中を埋めるのではなく、ネームの段階からページ内や左右見開きのバランスを確認しながら慌てず、丁寧に描くよう心がけたいものです!
著・画 管 清和(かん きよかず)
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複数の専門学校にてマンガ・イラスト学科をプロデュース。多くのマンガ家・イラストレーターを業界に輩出している。BS11で放映された『ゼロから始めるマンガ上達塾』ではKAN塾長として出演。 著書に「マンガベーシックテクニック」「なぞって上達 マンガ 手と足の描き方」がある。