不死鳥のように蘇ったフランス漫画市場物語 前編
2021.11.11
ボンジュール!フランスの漫画専門出版社Ki-oon(キューン)のキムです。前回の記事では、コロナ禍の中、フランスの漫画市場が大危機からどうリバウンドしたのかについてお話しました。
更なる成長を遂げた漫画市場は、実は深い層から変わりつつありますが、その新しいトレンドや読者の変化にフォーカスしてみましょう!
▽目次
2020年:定番のヒット作品 の基盤が固められた一年
▽前編はこちら
2020年中は、「ナルト」、「ONE PIECE」、「僕のヒーローアカデミア」、「約束のネバーランド」、「進撃の巨人」、「鬼滅の刃」のような大ヒット作品に読者が集中する傾向がありました。
不安の中、人間は確実なものに頼りたくなるという説もありますが、配信プラットフォームのブームも関連しているに違いありません。ネットフリックスやアマゾンプライムが今までにないほど登録者数を伸ばした中、配信中のアニメの人気度が高まり、漫画への宣伝効果が以前よりもあったのです。
アニメの宣伝効果と言えば、日本では「鬼滅の刃」が社会現象と呼ばれるほど様々な記録を破り、ほぼ一年中漫画ランキングを独占し、2020年に一番の売れ行き作品になりました。なんと、23巻最終巻は「ONE PIECE」並みの初版(400万部)が数日で完売になりました!
比較すると、フランスでも人気作品ですが、日本ほどではありません。2020年の漫画ランキング5位まで上りましたが、弊社が刊行している「僕のヒーローアカデミア」をはじめ、他作品はまだ上です。
今年に入ってから、漫画市場の成長率が更に向上しています。第三次ロックダウン(2021年4月〜5月3日)の時、今度こそ本も「最低限必要なモノ」として認められ、書店も営業を続けられたおかげで、勢いを止めることがありませんでした。
ただし、2020年と違い「呪術廻戦」を始め、新作品が市場を引っ張り出しました。また、上記に書いたように、ウェブトゥーンの認知度が強化されたため、紙単行本での販売が本格的に始まった途端にヒット作品が生まれ、Naver発のフルカラー漫画「ソロレベリング」は今年の新作ランキングのトップを獲得しました。
面白いことに、今まで人気を集めにくいジャンルの作品も伸びてきました。つまり、読者数が増えただけではなく、視野も広くなったようです。
例えば、弊社が出した「薬屋のひとりごと」はそのいい例で、ラノベはフランスで刊行されず、また、フランス人読者のほとんどは古代中国に馴染みがないにも拘らず、弊社のヒット作品となりました。
他社では、絵柄の個性が強く、美術という独特の世界をテーマにした青年漫画「ブルーピリオド」も売れ行きが好調です。更に、今までなかなか人気がとれなかったスポーツ漫画も注目され始めており、「ブルーロック」や「アオアシ」は大変よく売れています。
フランス政府は、2021年5月から若者に「文化」へのアクセスを促すために、18歳の者全員に300ユーロ(約4万円)もの「カルチャークーポン」を配りました。イベント、映画、音楽、本などに使用可能ですが、調査によると、その総合金額の70%が漫画に注がれました!
既に盛り上がっていた市場にブーストがかかり、週100万部以上の漫画が売れることもあります。エリート層に貶された漫画文化が、予測できない形で政府自体に支えられることになりました。
日本で、2020年の紙単行本の市場が25%、デジタル市場が31%の成長を遂げました。フランスでは、紙単行本だけで、市場が18%伸びました。二回ものロックダウンのショックにも拘らず、2020年の総合漫画販売部数は2200万部という記録的な数字に達しました。
そして、2021年1月〜8月の時期を見ますと、2900万部を既に越えました。前年比+125%という異常な成長率です。今年末は5000万部を超える予測です。
その漫画市場拡大は一時的な現象ではなく、今後も続く見込みです。新規読者の獲得、配信プラットフォームの普及によるアニメの影響力強化、漫画のジャンルの幅の拡大、新ヒット作品の登場…これから市場を引っ張っていく要素が多く、成長が収まる気配がありません。
何より、フランスの伝統的なコミック「バンド・デシネ」を超え、漫画はコミック市場の半分以上を占めるようになりました。その影響力は侮れず、ポップカルチャー全般(音楽、映画、物語作りなど)を今後どう変えていくのかは興味深いところです。
Ki-oon公式ウェブサイト(フランス語のみ) : http://www.ki-oon.com/
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代表名:キム・ブデン
住所:c/oフランス商工会議所
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電話番号:03-4500-6668
Ki-oonの東京オフィス代表キム・ブデンについて:講談社の国際事業局で四年半働いた後一旦帰国、三年半フランスの漫画出版社・PIKAの編集長として勤め、2015年の10月からKi-oonの在日オフィス代表として日本に戻り、現在に至る。
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