【DL同人】矢野トシノリ先生に聞く!SNSと相性のいい漫画ジャンル、悪いジャンルって何?

【DL同人】矢野トシノリ先生に聞く!SNSと相性のいい漫画ジャンル、悪いジャンルって何?

いちあっぷブックスで好評発売中!の『DL同人、はじめてみたらこうだった 成功者の実体験から学ぶ自分らしい稼ぎ方』の第2弾が刊行されました!

イラストレーターがマネタイズをしていく取り組みのひとつとして、ネットで漫画を描いて稼ぐという手段が台頭している昨今。「どうやって作品を生み出しているんだろうか」「SNSを上手く使うにはどうしたらいいか」など様々な視点で大ヒット作を生み出している著名作家の皆さんへインタビューを行いました!


本記事シリーズでは『DL同人、はじめてみたらこうだった 成功者の実体験から学ぶ自分らしい稼ぎ方2』から内容を1部抜粋し、著名作家の御三方の成功例を元に、同人誌で稼ぐ秘訣を紐解いていきます!

 

第1回目は『防御力ゼロの嫁』『これからだんだん幸せになっていく怖い女上司』シリーズなどのネット発の漫画でヒットを飛ばし、DL同人に限らず様々な形で漫画を展開している矢野トシノリ先生に、SNSの分析・活用方法やワークライフバランスの取り方などのノウハウの数々を教えてもらいました。

 

個人作家として長く活動を続けたいと考えている方には特に参考にしていただきたいお話です。

 

※本記事は『DL同人、はじめてみたらこうだった 成功者の実体験から学ぶ自分らしい稼ぎ方2』(著:いちあっぷ編集部、構成・執筆:いしじまえいわ)から一部抜粋したものです。WEB向けに一部調整しているため、本書と内容が一部異なります。

 

 

■目次

大ヒット漫画家に聞く!活動のきっかけ

二次創作とSNS。ヒットまでの道のり

SNSと相性のいい漫画ジャンルって何だろう

オリジナル作品とSNS展開のコツ

 

インタビュイー:矢野トシノリ先生 同人作家。漫画家たまにVtuber。「防御力ゼロの嫁」完結。現在は「怖い女上司」更新中。

X:https://x.com/hosimaki

 

大ヒット漫画作家に聞く!活動のきっかけ

 

――ネットにイラストを上げていたということでしたが、個人作家としての活動を始めたきっかけは何だったんでしょうか?

 

矢野トシノリ先生:

自分の活動の源泉は同人活動です。最初は、なかなか商業誌に載せられなかった時期にじゃあ同人誌で出そうということでコミティアに一次創作を出したんですが、その時はまだノウハウも実力もなく200部刷って10冊か20冊という感じでした。

赤字も出しましたし、それで一度同人からは離れてしまったんです。

 

それとは別にその少し前くらいから二次創作もしていて、その後くらいから携帯用にエロも描き始めるんですね。それで二次創作のエロも描き出す、という流れです。ニチアサ系の番組が好きだったので最初は『プリキュア』の本を出していました。

 

二次創作とSNS。ヒットのきっかけって何だった?

 

――作家活動とSNSの連動、みたいなことを始められたのはいつ頃からですか?

 

矢野トシノリ先生:

2013年に『艦隊これくしょん -艦これ-』のサービスが始まるんですが、自分の場合はその頃からでした。その前からX――当時はTwitterでしたが――はあって、自分は『プリキュア』の本や自分の商業漫画の宣伝などに使っていました。けど本格的にSNSを運用する、みたいな機運になったのは『艦これ』の波が来たときでしたね。

 

友達の作家さんからSNSで伸びる方法を教えてもらったり、毎日更新すればいいんだよ、みたいな運用ノウハウ、まあ言ってしまえばパワープレイなんですけど、そういうのを取り入れたりしだしたのがこの頃です。
あと、『艦これ』のイラストを描く60分一本勝負みたいなハッシュタグを付けて投稿すると拡散してくれるアカウントがあって、それに参加してフォロワーを増やしたりしていました。

 

その前の時点では作家同士のつながりってあまりなかったんですが、『艦これ』を機にコミケに出たりイベントで顔を合わせたり、『艦これ』作家が3ケタ人数集まるオフ会もあったりして、そこで知り合った作家さんも結構多かったですね。

 

――『艦これ』というゲームと当時のTwitterと同人作家の親和性がすごく高かったんですね。

 

矢野トシノリ先生:

『艦これ』は公式で二次創作OKを打ち出している珍しいジャンルだったんですよ。それ以前には『東方Project』くらいしかなかったんじゃないかな。なので同人作家にとってやりやすい面があったんです。

 


自分的にオリジナルが全く伸びない時期だったこともあって、この時「やっぱり二次創作だ」と思いましたね。『艦これ』関連ならとにかく伸びる時期でしたし、当然ゲームとしても楽しくプレイしていたので、この時期は『艦これ』でフォロワーを増やしまくっていました。

 

――その時展開されていた『夕張30歳』シリーズについて、人気が出た理由をどのように分析されていますか?

 

矢野トシノリ先生:

当時はまだ順当にそのキャラの二次創作をする、というのがメインだったんですが、友人に変化球を投げている人がいて。『魔法少女まどか☆マギカ』に出てくる巴マミの「巴マミ(30)」というコンセプトのえっちな漫画なんですけど、自分もそれでいこう、と。


夕張というキャラを選んだのは、自分の推しキャラだったからというのもあるんですが、他に夕張を推している人があまりいなかったからというのもあります。人気キャラランキングで言えば20位台、ベスト10には微妙に入れないくらいの人気です。なのでこの時期、「夕張の人」のポジションを狙っていた、というのはあります。「〇〇の人」と呼ばれるようになると強いですからね。

 

30歳という設定も特徴づけとしてよかったですね。自分自身がちょうど結婚したばかりだったので、ラブラブ夫婦ものが描きやすかったというのもあります。その時の自分にとって身近なテーマだったんですね。


結局夕張を中心としつつ多くのキャラを出していくことになりました。やはり夕張だけで人気を取っていくのは難しくて。キャラを増やしてストーリーを展開していく方向にシフトしていきました。

 

――同人誌でありながら、かなり戦略的に取り組んでいた印象ですね。

 

矢野トシノリ先生:
もちろん好きだからというのが前提にありましたけどね。ポジションを狙って取れたのは事実なんですが、自分の描きたいものを描けるということで筆が乗っていた、というところも大きいと思います。

 

個人活動とかSNS漫画って〆切がないわけじゃないですか。誰も尻を叩いてくれない。

 

だから描きたくないものを描くのは相当辛いと思うんですけど、逆に描きたいものは早くみんなに見てもらいたいから勝手に早く描きますよね。早く描きさえすれば〆切より早く見てもらうこともできますし。それが個人活動のいいところだと思います。

 

――『艦これ』サービス開始の頃からSNS運用をされていた、とのことですが、SNSで注目を集めるコツというのは、具体的にはどのようなものがあるんでしょうか?

 

矢野トシノリ先生:
前提として、SNS運用のセオリーは時期によって結構違った、という印象です。昔だったら画像を4枚使った4ページ漫画がよくありましたし、かなり長い漫画がウケた時期もありました。でもそれが2ページでクールなキャラが赤面する、みたいな分かりやすいものがうけるようになって来て、今は1ページでオチまで行っちゃうくらいシンプルになってる。

 

要はSNSで流れてきたときに「この絵見たことあるかも」と思わせられる、ひっかかりがあるタイプの描き方が今は流行りですね。

 

――1ページの漫画というかイラストというか、そういうのは確かによく見る気がします。

 

SNSと相性のいい漫画ジャンルって何だろう

矢野トシノリ先生:
確かに、もうコマも割ってなくて1つのコマにキャラと吹き出しとセリフだけなので、イラストに近いかもしれませんね。そういうキャラのキャラクター性やシチュエーションが一目で分かるものが今はメインです。シンプルでインスタントですよね。


SNSの漫画ジャンルって適したものと適していないものがあって、自分が元々目指していたバトルものやアクションものとSNSはめちゃくちゃに相性が悪いんですよ。逆に恋愛ものなど、ショートなものは強いです。

 

――それはどうしてでしょうか?

 

矢野トシノリ先生:
恋愛って具体的な説明が要らないじゃないですか。「この人はあの人のことが好きだ」というだけでいいんですから。それにほとんどの人が経験しているから共感を得やすいという点でも強い。

 

世界観も特殊なことは必要ありませんよね。今も昔も、要は付き合うかどうか。それだけなんで。

 

――確かにそれと比較して考えると、アクションものやバトルものだと、何故戦わないといけないのかというシチュエーションの説明や対峙する両者の関係性、繰り出す技の設定などストーリーの中でたくさん説明があった上で楽しんでいる、という気がしてきました。SNSで1枚絵でポンと見せる、というのがやりにくいんですね。

 

矢野トシノリ先生:
そうですね。逆に恋愛ものは親和性が高いんです。もう恋愛ものしかウケないと言っていいくらいです。
コメディとかちょっとひねったホラーとか4コマ的なものもアリといえばアリなんですけど、その先のマネタイズのことまで考えるとやっぱり厳しい。つまりちょっとしたホラーとか4コマだとSNSで多少ウケたとしてもお金はなかなか出してくれないんですよ。

 

それが可愛い女の子が恋愛してるとかならお金を出してくれる人はいますし、恋愛の先にちょっとエッチなことをするとなると俄然集客性が高まります。やっぱり可愛い女の子は課金してもらえる率が高いんです。

 

みんなが色々試していく中でそういうことが分かってきて最適化されていって、その結果として今は女の子が恋愛したりエッチなことをしたりというのが主流になっているわけです。

 

――なるほど……これは言い過ぎかもしれませんが、極端に言えばみなさん漫画にお金を払っているんじゃなくてそのキャラクターにお金を払っているような印象なんですね。

 

矢野トシノリ先生:
そうですよ。SNS漫画は特にそうですが、漫画全般、キャラを売るものですから。やっぱりキャラクターを好きになってもらわないといけないし、キャラが読者に好かれればお金を出してくれる人が増えます。

 

一方、漫画としての面白さとかシナリオのリッチさって、ちゃんとフリやオチが利いてないと表現できないところがあります。だからある程度しっかりページ数が使えて画面構成できて伏線がしっかり貼れる商業漫画でこそ、リッチな漫画は描けるものだと思います。

 

なのでそういう漫画を描きたい、そういう方向に漫画の面白さを求めたいという方は商業で戦った方が向いているように思います。

 

――ジャンルで言えば、アクションやバトルの他に、ミステリーとか歴史ものとかでしょうか?

 

 

矢野トシノリ先生:

そういうジャンルは、パッと見のキャラの絵ではなく物語の流れや設定などにお金を払うようなものですから、商業の方が向いているでしょうね。

 

逆にSNSでキャラがウケた作品は商業に行くとあまりにシンプル過ぎるとか薄すぎるみたいな評価をされて苦戦しがちです。
つまり、商業には商業の、SNSにはSNSなりの戦い方があって、それぞれ最適化が進んで別の形の漫画に進化したって感じですよね。

 

 

オリジナル作品とSNS展開のコツ

――先生は『防御力ゼロの嫁』で一般向け漫画で成功されていますが、SNS展開の際に意識されたことはありますか?

 

矢野トシノリ先生:

自分が『防御力ゼロの嫁』を始めた頃は、ちょうど『艦これ』で一緒に二次創作を描いていた作家さんが商業で連載を持ったりオリジナルを描き出したりしていた時期だったんですよ。

 

自分自身、自分の作品を持ってそれで戦わないとこれからは厳しいぞ、という認識もありました。なのでそのタイミングでいろんな試し撃ちをしてみて、その中で反応がよかったものをスタートさせた感じです。

 

――オリジナルをスタートさせる前までは、フォロワーさんはみんな基本的に『艦これ』のファンだったわけですよね。そこに自分のオリジナル作品も出していった感じですか?

 

矢野トシノリ先生:

この時期は『艦これ』とオリジナル、半々くらい出していました。オリジナル漫画がバズりやすい時期でもありましたから、時流に乗ったという面が大きいですね。


あと、やはり『艦これ』で描いていた二次創作の作風から大きく外れないように描いていたということもあります。『夕張30歳』シリーズがラブラブ夫婦ものでしたから、ファン層はそういうのが好きな人が占めてます。なので『防御力ゼロの嫁』はその部分は踏襲しました。

 

――そうすることで『艦これ』のファンの方もついてきてくれた感じでしょうか?

 

矢野トシノリ先生:

そうですね。同じファン層を狙って、割と打算というかきちんと狙ってテーマを選んだ結果、ついてきてもらえたという感じですね。
それと、いきなり『防御力ゼロの嫁』が出たわけでもなくて、この時期にオリジナル物を何本か出しているんですよ。

 

似たようなラブラブものではあるんですが微妙に角度を変えて、いろんな形を試しました。だから1、2作出してやめちゃったものもあります。


実は『防御力ゼロの嫁』もほぼ似たものを1回出して全然伸びなくて1回やめてるんですよ。半年くらい経った後、ふと『防御力ゼロの嫁』というタイトルを思いついてタイトルを差し替えて再掲したら伸びたんです。で、2本目を出したらそれも結構伸びて。
そんな感じで紆余曲折、探り探りで辿り着いた感じです。

 

――これはすごく示唆のある話だと思います。同じ作品を2回出すのをためらう人もいそうですし。

 

矢野トシノリ先生:

作品の再利用はSNSでは全然普通にありますよ。あまりペースが速すぎるのはよくないですが、忘れられた頃に再投稿というのは積極的にしていっていいと思います。

 

著:いちあっぷ編集部

構成・執筆:いしじまえいわ

 

続きは、『DL同人、はじめてみたらこうだった 成功者の実体験から学ぶ自分らしい稼ぎ方2』より御覧ください。

 

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①にゅう先生:『クオリティの高い作品を大量に制作し、ヒットを生み出す実践的なテクニックと考え方』

②矢野トシノリ先生:『個人作家として長く活躍するため、常に作品をみてもらうSNS分析と活用方法』

③まんの先生:『大ヒットシリーズを生み出したノウハウと、自分で漫画を描き続けるために大切なこと』

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