1340億円市場(2024年度予測)とされる同人誌市場。2020年の741億円から急激な成長を遂げている。(出典:矢野経済研究所)
その背景には、従来のようにクリエイターがクライアントの受託制作や出版社を仲介した制作に依存するのではなく、自身のコンテンツやサービスを直接制作・販売することで生計を立てられる新たな仕組みが整ったことにあります。
こうして創作の自由と収益化のハードルが同時に解消された現在、クリエイターたちはこれまで以上にのびのびと活動できる時代を迎えました。
本シリーズでは、そんな最前線で活躍する多彩な経歴をもつクリエイターの皆さんにインタビューを敢行し、それぞれが辿ってきた道のりと今なお進化を続ける創作の現場に迫ります。
※本記事は『DL同人、はじめてみたらこうだった 成功者の実体験から学ぶ自分らしい稼ぎ方』(著:いちあっぷ編集部、構成・執筆:いしじまえいわ)から一部抜粋したものです。WEB向けに一部調整しているため、本書と内容が一部異なります。
目次
インタビューイー:西義之
漫画家。代表作はTVアニメ化もされた『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』。
X:https://x.com/nishiyoshiyuki
YouTube:https://www.youtube.com/@nishiyoshiyuki
西義之流・漫画制作術
企画の考え方
――漫画の企画について、どのように立てられているのか教えてください。先ほど「次いこう」というお話もありましたが、常に描きたいものが複数ある感じなのでしょうか?
西:
そうですね。描きたいネタのストックは常に2、30くらいは頭の中にあります。その中から時流に合っているものを選んで「次はこれにしよう」と決める感じですね。
あとは、「これは誰もやってないかも?」という隙間を狙ったりもしますね。
たとえば定点カメラものとかスマホの画面をそのまま絵にした疑似体験的なものとか、常に新しい発明をされる先生がいますから、それを自分ならどう取り入れるか、自分ならどういう新しいものにできるかを考えてネタを決めたりもしますね。
――常に新しさを模索されている感じなんですね。
西:
それは難しいところですね。というのも、変わらないものを求めているお客さんもいるわけですよ。
たとえば「この作家はいつもオネショタを描いてくれる人だ」というポジションを取れているなら、基本はそれを続けた方がいいと思います。
だけど同じことを続けているとお客さんも売上も徐々に減っていきますから、やっぱり新しいものも都度取り入れて、新しいお客さんを招き入れることも必要です。
僕の場合、身長差のあるオネショタ要素が好評だったんですが、ある時試しにお姉さんとショタの身長を逆にしてみたんです。
――それは結構な冒険ですよね。怒られませんでしたか?
西:
大批判を喰らいました(笑)。
実は逆の方がいいという男性客が増えてくれた面もあったんですが、僕の本をこれまで買い続けてくれているお姉さま方からは不評でしたね。総じていうとあまりよくなかったな、と思ったので次の本からは(身長を)元に戻しました。
まあ、僕の根源にはオネショタがあるので、身長が逆でも根本は変わってません。そこをちゃんと見てくれる人もいましたね。
ネームの作り方
――漫画の制作スタイルについて伺います。西先生はネームはどのように描かれているんですか?
西:
物語のプロットを先に用意する方がほとんどだと思うのですが「僕はプロットを書かずにいきなり最初のページから最後のページまで下書きに近いレベルのネームを描くタイプですね。
それ以前の作業、つまりプロットやコマ割りに相当する作業は全部頭の中でやっている感じです。全てのコマの位置や内容、どんな絵を描くかがすべて頭の中で決まった瞬間に描き始める、という感じです。
――実際に絵にしてみたらイメージと違った、ということはないんですか?
西:
ありますよ。その場合はその絵だけ直します。特にキャラクターのポーズや構図は変わることがあるんですが、そこに直近で見て「これはいい!」「カッコイイ!」と思った他の先生の漫画の構図を参考にさせてもらうこともありますね。
そういう意味では自分の頭の中で完全に無から生み出しているわけでは全然なくて、いろんな漫画やそうでないもの、映画でも町の風景でも、様々なものが源泉になっています。
だから、他の作品を読んだり何かを見聞きしたりして感動できる感性や、それを心の中にストックしておくことが大事なのかもしれません。
これは構図に限らずコマ割りやネームでも同じことですので、漫画作りに悩まれている方は、まずは漫画に限らず何でもいいのでいろんなものを鑑賞したり観察したりして、自分の心の中にストックを増やすところから意識するといいかもしれません。
通りすがりの女性がキレイだなと思ったなら、何故そう思ったんだろうということを考えてみる。そういう日常で感じたフワフワしたものを掴んで、形にして、心の中に置いておく感じですね。
それが増えていけば、頭の中でそれらを組み合わせる編集作業も自然とできるようになっていくと思います。
キャラクターの作り方
――先生の作品はキャラクターがとても個性的ですが、キャラクターの作り方について教えてください。
西:
そうですね……。私と仲のいいある先生は「霧のかかった泉があって、そこから引き出す感じ」と仰っていましたが、僕も同感なんです。
最終的には「くのいち」とか「魔女」といった具体的なカテゴリに当てはめることになるんですが、その前段階はとてもフワフワしたもので、その実態は何かといえば、自分が現実で感じた「これはいい」「これがエロい」という体験や感覚です。
――先ほどの心の中のストックのお話と同じですね。自分が実体験したもの、感動したことが元になっているんですね。
西:
そうです。鳥山明先生も『鳥山明○作劇場』で「漫画は人間を描くこと」と言っていました。
キャラクター作りも頭の中で完結するものではなくて、むしろ日常における観察と感動が全てですね。というのも、自分の感動を源泉にしないと自分にしか描けないものは描けませんし、それがまとまっていないうちはそもそも描きたくない。それが僕の哲学なんです。
――描きたくない、というのは?
西:
ある程度のレベルまでなら、そんなことをしなくても一般的なイメージだけでキャラクター作りができると思うんですよ。たとえば「幼馴染といえばこういうキャラクターだよね」みたいな感じで。
でも、そうやって描いたキャラクターは一般的なイメージの産物である以上、誰にでも描けてしまうんです。だから誰にも記憶されないし刺さらない。僕はそれがイヤなんです。
これはお客さんのためとか売り上げのためというよりは、僕自身が僕にしか描けないキャラクターを描きたいというこだわり、哲学です。
ちょっと冷静な話をすると、キャラクターという要素は、売れることだけを考えるならそこまでこだわらなくてもいいかもしれません。
漫画には絵柄やストーリーなど他の要素もありますしキャラクターにこだわりすぎて描けなくなってしまう人もいるので。単に僕自身がそこにこだわりたい、という話だと思っていただければ。
でも、同人誌だとそこにこだわり切れるのがいいですね。商業連載だとそれが削られていくのが辛かったです。
著:いちあっぷ編集部
構成・執筆:いしじまえいわ
続きは、『DL同人、はじめてみたらこうだった 成功者の実体験から学ぶ自分らしい稼ぎ方』より御覧ください。
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