人物絵のほとんどは服を着ており、どんな服を着せるかでキャラの印象もガラッと変わります。
なるべく個性的でおしゃれな服でキャラクターの魅力を引き立たせたいですよね!
しかし服を着せることに意識が集中しすぎてこんな落とし穴も……?
まずはいくつか失敗例の絵を見てみましょう。
一見普通のタートルネック服の絵ですが、よく見るとキャラの首がいつもより長い!?
可愛い服のポイントのひとつ、パフスリーブ。
でも、これもなんだか手が長いような……?
ミニスカートを履いた下半身の絵。
これもよく見ると、ヒザ下の長さに比べてなんだかヒザ上が長いかも……!
どうしてこういう失敗絵になってしまうのでしょう。
そんな原因と対策を説明します。
STEP1:服の先から身体を描いてしまう「あるある」ミス
先ほどの失敗絵は服から伸びている首や手足が長すぎることが原因です。
どうしてそんなに長くなってしまったのか、それの原因は「まず服を描いてから、その先の身体を描いている」からです。
服の特徴的な部分を描いてから、その先に続く身体を描こうとすると、ついついそこから腕や足が生えたかのように描いてしまう場合があります。
手のほかにも首や足も同様に、まず先に服を描いてから身体を足そうとするために服に隠れた存在を忘れてしまって、つい身体を長く描いてしまうのです。
STEP2:服に隠れた身体の部分も意識しよう
このように身体を長く描いてしまうミスは、その部分の下に隠れてる身体の部分をしっかり意識することで回避できます。
上の少女の絵を、パフスリーブの形にとらわれずに、服で隠れた肩や袖部分の腕の形を描いてみましょう。
服を無視して腕の形を描いたことで、腕を自然な長さに描写することが出来ました。
このように服のデザインに惑わされずに、「隠れてる部分にも身体は存在している」ことを意識すると、正しい長さの手足を描くことができます。
首や足が長くなってしまうミスも、これらの「隠れた部分の描写」で直してみましょう。
こちらが本来の自然な首の長さです。
首が見えてる部分が短くても、身体からしっかり描くことで安定感が出せています。
スカートから伸びてる足も自然な長さになりました。
STEP3:慣れないうちは裸体から!
プロのイラストレーターなど経験が豊富な絵描きさんだったら、服から直接身体を描き足しても例に挙げたようなミスをすることは少ないですが、イラストの初心者や勉強中のうちは服を着てる人物でもまずは裸から描き、手足の長さをしっかり確認したうえでその上から服を着せた方がミスの可能性を減らせます。
このように服を着せたときに、そこから伸びた手足の長さがどうなるか、裸から描けば服の長さに迷うこともありません。
帽子など服以外の身に付けるアイテムも、たとえば頭の線を描いておくことでへこみすぎる、膨らみすぎるなど身体に合わない形になってしまうNGを防げます。
経験豊富なプロでも、まずは身体から描き続けるイラストレーター・漫画家さんは少なくありません。
手足のデッサン、バランスがおかしくないかの確認はプロになっても常に手を抜いてはいけないポイントです。
特に動きが大きかったり、難易度の高いポーズの人物を描いたりするときは、まずはしっかり身体の線を描いてから服を着せるように心がけましょう。
STEP4:応用例・イメージに惑わされそうなトラップデザインに注意!
服を着たキャラを描くとき、その服のデザインによって、つい手足や身体の長さを間違えて描いてしまいそうなデザインは様々あります。
その特徴にひっぱられないように気をつけましょう。
たとえば下のような襟のしっかりした服はついつい首を長く描きがちです。
学ラン制服やスーツなど、襟がしっかり立っている服は首があまり見えなくなります。
首が隠れがちなデザインでは、首を長めに描いてしまわないように注意しましょう。
そして上半身だけでなく、下半身のデザインもウエストの位置などで混乱を招くものがあります。
ローライズや腰穿きのデザインは、ウエストの位置がつかみにくいことが多いです。
これもデザインごとの特性を把握して、腰の位置がブレないようにしましょう。
これらの特徴に惑わされそうな服も、服の下の裸体をきちんと描くことで回避できます。
正しいバランスの身体をしっかり描いて、魅力的な服を着たキャラに仕上げましょう!
[著・画:両角潤香(もろずみじゅんか)]
Twitter https://twitter.com/morozumix
漫画家、イラストレーター。主に角川系や電撃系の少年誌等で活動。ゲームやアプリのキャラデザインやイラストも多数手がける。イラスト技法書制作やアミューズメントメディア総合学院東京校講師も行っている。2016年夏より月刊コミックアライブ(KADOKAWA刊)にて「クラウドヘブン-壊れゆく彼女-」連載中。