配色センスは知識で身につく! 自分の思いを伝える絵を描く方法‐後編
2016.10.10
絵の「魅力」とは何でしょうか?
今回はイラストレーターの林檎坂マリコさんに、ご自身の絵を振り返ってもらいながら気づいた「絵の魅力を引き出す方法」をご紹介します。
「キャラを描いたけど、何だかつまらない絵になった」、「頑張って描いたのに『魅力』を感じない」……。絵を描かれる方なら、誰でも悩んだことがあるかと思います。
「『魅力』のある絵が描けない、私は下手で才能もセンスも無いんだ、こうなったら神絵師さんの腕を食べるしか……」と錯乱する前に、「魅力のある絵」について、一緒に考えてみませんか?
この絵は、三年前(2013年)に本記事の著者である私、林檎坂マリコが制作した、オリジナルキャラの「ハロウィン子ちゃん」です。
この絵の問題点をあげるなら、ポーズ、配色、見せ場など、数え上げたらキリがありません。
原因は色々考えられますが、一番の問題点は「私が何も考えず、思いついたキャラをただ描いた」という、この無計画さなのでした。
これでは「死んだ目をしたニヤついてる変な奴が、棒を持ってただ突っ立ているだけの絵」になってしまいます。
この問題を改善するために、3年後の私が頑張って知恵を絞り、この絵をリメイクした結果が、この「ハロウィン子ちゃん」です。
(3年後の私でも、ネーミングセンスの無さだけは、どうにかなりませんでした。)
リメイク前の絵を制作した当時は、思いつきでしか考えておらず「この絵で何を伝えたいか」まで、考えが及んでいません……。
それから、3年経った現在。「この絵で何を伝えたいか」を考え、
・赤いツインテールが生きたデザインに
・挑発的で気の強そうな性格
が、このキャラクターの魅力となる要素と気づきました。
「魅力」のある絵の定義は、人それぞれ様々ですが、本記事では私が考える「魅力のある絵」の定義、「描き手が伝えたいことが伝わる絵」を作ることに関してお伝えします。
まず、キャラクターの魅力について考えましょう。どこが最大のチャームポイントで、見せたい場所なのかがキャラクターデザインにとって大切です。
例えばこのキャラクターの「魅力」となれる要素は「生きている赤いツインテール」です。
キャラの「魅力」を最大限に発揮するため、ツインテールをしっかり描き込みました。
そして、生きているツインテールという「魅力」をさらに輝かせるため、向かって左側の奴を気が弱そうに描き、向かって右の奴をチャラそうに描きました。
二匹の性格を考えることで作品の情報量が増し、より楽しい見た目になったかなと思います。
次に性格も考えましょう。
このキャラの場合は「勝気・挑戦的」という性格が伝わるように、顔を気の強そうな雰囲気に直します。
釣りあがった目や、ニヤリと笑う口元、歪む眉、そして左右で違う表情を描き込むことで、顔に情報が増えマネキン感が消えたかなと思います。
最後に、視線をキャラクターの全体に誘導させたいので、靴のデザインを派手なものに変更しました。
靴のデザインを目立つものにしたため、キャラの中に三角構図が生まれ、画面のレイアウトに安定感が生まれました。
つまり、
①キャラが持つ一番の『魅力』の部分を、一番目立つように描く
②キャラの性格を顔立ちに込める
③キャラ全体を見てもらうために、靴のデザインを目立つものにして、目線が誘導される配置にする
という三点を意識して、改善しました。
レイアウトは「どこを目立たせたいか」「見て欲しいか」で決めます。
まず、吹き出しセリフや靴のデザインを派手にすることで、画面に三角構図を取り入れました。
三角構図を多く配置することで、視線が顔に集まるだけでなく、隅々まで視線が動いてくれるであろう絵にしています。
背景に小物を置く場合は「その小物を置く理由があるか」を考えます。
例えば「美青年キャラの『魅力』である麗しさを出したいから、バラの花を置きたい」というように、主役の「魅力」を説明してくれる物を選ぶと、絵の説得力が増します。
今回は、主役がハロウィンに関するキャラなので、小物は、
・夜を連想させるもの
・ハロウィンのホラー感を出すために、足元に十字架を置いて墓場っぽくする
ことを考えました。
そしてこの絵ではキャラクターのカラフルさを目立たせるために、背景やオブジェクトは極力シンプルなデザインにしています。
小物を置くときは「自分が何を伝えたいのか、主役の魅力は何なのかを、説明してくれる小物に絞る」ということを、前提で考えましょう。でないと、ただゴチャゴチャして見せ場のわかりづらいイラストになってしまい、せっかく頑張ったのに勿体無いと思います。偉そうに言ってしまいましたが、私もアホほど失敗を重ねました。
私は、イラストの役目とは「情報をビジュアル化し、パッと見で意図を伝える」ことだと考えています。
意図した情報を伝えるためには、画力やアイデアや様々なものを取り入れ、絵を描く筋肉を鍛えなければいけません。
けれど「この絵は伝えたい情報は込められたからOKだな」と自分にGOを出せれば、自分の作品を下手だと苦しむことが軽減されるかと思います。
なので、まずは「その絵で伝えたいこと」ゴールとして決めることから始めてみることをオススメします!
次回では「色」について、考えていきたいと思います。
それでは、後編に続く!
Twitter|@mariko_0913
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専修大学、人文・ジャーナリズム学科卒。憧れの夢は、江の島さんぽちゃんと一緒に江の島を散歩すること。最近遊んで楽しかったゲームは、スプラトゥーン・星のカービィロボボプラネット・逆転裁判6。好きな会社は、バーグハンバーグバーグさん。