絵の魅力を出すには?自分の思いを伝える絵を描く方法 – 前編
2016.09.14
今回は「絵の魅力を出すには?自分の思いを伝える絵を描く方法 – 前編」の後編です。
テーマは「色」。
イラストレーターの林檎坂マリコさんが、ご自身の絵を振り返りながらたどり着いた「良い感じの色の置き方」についてご紹介します!
皆さん、色塗りは好きですか?私は好きです。綺麗な色は見ているだけで楽しいですし、絵の完成度が上がっていくのは嬉しいからです。
しかし、この色塗りひとつで絵の魅力が決まるので、なかなか侮れないんですよね。
「配色センスってどうやったら身に付くの!?もう神絵師さんの腕をしゃぶるしかないよ……」と虚ろな顔をする前に、作品の魅力を伝えてくれる色の選び方を一緒に考えてみませんか?
この絵は、3年前(2013年)に本記事の著者である私、林檎坂マリコが制作した、オリジナルキャラのハロウィン子ちゃんです。前の記事ではこのイラストのデザイン、構図の考え方について解説しています。
今回課題とするのは「色」。
このキャラクターに使われている色の数は、約9色(オレンジ・赤・紫・緑・黒・グレー・黄色・蛍光ピンク・蛍光緑)です。
そして背景の5色も加えると、なんと14色。
色が多いほど「ポップでカラフルなイラスト」になる気がしますが、この絵を見ると、カラフルと言うより「なんかうるさい……」という印象しかありません。
この問題をなんとかするために、3年後の私が知恵を絞って描き直した結果が、この「NEWハロウィン子ちゃん」です。
上の絵と比べて、色数が大分減っていますね。
なぜ色数を減らしたかというと、単純に「意味のある色だけを使ったから」ということです。
では、色の採用基準は何だったのか、3つのポイントに絞って紹介します。
まず、このハロウィン子ちゃんは「気が強い・名前の通りハロウィンがテーマ」という情報を持っています。この情報を的確に伝えるため、目に付きやすい一番面積の広いところに大事な色(メインカラー)を置きます。
このような具合です。
ここで気を付けたいのが、どの色を主役にするかです。
ハロウィン子ちゃんの場合、最も主張したい設定が「ツインテールが生きている」としているので、目立たせたい、そして面積の多い髪の毛を主役の色である赤にしました。赤は原色に近い色を使い、オレンジは主役より優しい色にして、赤の発色の邪魔をしないようにしています。
その他の小物は、
ラインとガーターベルトの存在感を統一することで、悪目立ちをさせない目的です。
続いて、ハロウィン子ちゃんのニーソックスやリボンに使われている、水色の存在理由についてです。
これは、ヒロインであるオレンジをより綺麗に見せるため、オレンジの補色である青系の色を使いたかったからです。
△色相環
補色とは「色相環において、色aの反対側にある色b」のことを言います。
代表的な補色関係は、
・赤と緑
・黄色と紫
などですね。馴染みがあるキャラクターを例に挙げると、「マリオ(赤)とルイージ(緑)」・「ワリオ(黄色)とワルイージ(紫)」にも使われています。
補色の関係を使うと、要素を目立たせたり、発色を綺麗に見せてくれたりするので、アクセント作りに効果的なテクニックです。
ここで気を付けたいのが、補色はあくまで主役の色を輝かせる脇役です。主役の色より目立つor同等の量で使うと、何が主張したいのかわからなくなります。
補色の量を少なくするか、補色の色を淡くするなどをして対策を取りましょう。
3年前の絵と現在の絵を比べて、一番目立つものが変わっているのがわかりますか?そうです、背景の色を彩度の高い赤茶色から黒に変えました。
なぜ、黒を背景に選んだのかというと、
の二点です。
黒という色は、白とグレーと同様に無彩色に分類されます。
無彩色とは彩度を持たない色なので、彩度のある色と組み合わせると、彩度のある色をよりくっきり綺麗に見せる効果があります。ちなみに緑や赤など、彩度を持つ色は有彩色と呼ばれます。
無彩色であるのに、黒は全色の中で一番目立ちます。ですから、カラフルな画面において、主役以外に黒を使用する場合、主役の最も重要な部分である「顔」の近くや、背後に置いてしまうと、顔よりも黒の強さに目が行ってしまい、主役が目立たなくなってしまうこともあります。
これは私もしくじり経験によって理解しました。(モノクロの画面の場合は、逆に視線が集まってかっこいいと思います。)
同じ無彩色ですが、黒と白でイメージが大きく異なります。
私の場合、黒と白を以下のように使い分けています。
黒:夜っぽさ・暗い・怪しさ・セクシーさ・ギュッと籠った密度感を出す
黒は、悪魔の羽、ゴスロリ、悪役のメインカラー・セクシーさをアピールする化粧品のパッケージetc……と、CMやその他のメディアでは、黒はこのような使われ方をしていますよね。
白:昼っぽさ・明るい・爽やか・清楚・風通りの良い抜け感を出す
白は、天使の羽や、清楚キャラの白ワンピ、風に揺れる白いレースのカーテンetc……と、メディアなどではピュアで柔らかいイメージに合わせて使われています。
そして、白には抜け感も出せるので、今回の絵では水色のニーソックスとステッキが重たく見えないように、白とのボーダーを組ませました。
せっかく色を綺麗に選んで塗ったのに、画面がぼんやりしたり、何だかもっさりしているな……と感じたとき、私はそのイラストの彩度を0にして、明度がハッキリしているか調べます。
こうすることで、彩度の情報に惑わされず、濃淡のみの画面が見られます。
3年前の絵の彩度を0にしました。メリハリがなくぼんやりとした印象です。
そして、リメイク後の絵の彩度0にしたのがこちらです。
黒が良い仕事しているのが一目瞭然ですね。また、服の濃淡もはっきりしているので、画面がボケている印象がなくなりました。
彩度0で濃淡のみの画面でも、彩度ありの画面と変わらないクオリティを維持していれば、色が付いてもボヤけた画面になることはないです。
色選びについて、私が考える重要なポイントは
以上の3点です。
色塗り工程でも、その色を使う意味はあるのかな?と考えて選ぶことで、画面をコントロールしやすくなり、心の余裕が生まれてきます。
イラストだけでなく、ファッション関係や花、雑貨や商品のパッケージなど綺麗な色は身近にあるので、これは!と思った色やその組み合わせを、頭のパレッドに記憶しておけば、より魅力のあるイラスト制作が可能になるので、オススメです!
ここまでお付き合いくださって、本当にありがとうございました!
Twitter|@mariko_0913
Pixiv| http://www.pixiv.net/member.php?id=6199553
専修大学、人文・ジャーナリズム学科卒。最近増えた夢は、スタイリストの山本あきこさんに服を選んでもらうこと。一番好きなアニメキャラは、つり球のジョージ・エース。中高の部活は吹奏楽部で、担当楽器はトランペット。