「髪は女の命」という言葉があるほど、髪は重要視されるパーツです。イラストでも同様に美しい髪をもったキャラクターは、それだけでキャラ立ちの要素になりますよね。つまり、美しい髪の毛が描写できると、クオリティアップにつながります。
今回はイラストレーターの八頭こほりさんに、リアルタッチの美しい髪を描く方法をご紹介いただきます。グリザイユ画法を使った描き方なので、グリザイユについて手順を知ってみたいという方もご覧ください。
グリザイユ画法とは
グリザイユ画法は、「単色(モノクロ)→ 上からカラーを重ねる」描き方で、線画の工程を挟まずに描ききれる手法です。デジタルでは厚塗りで活用している方が多いです。
陰影表現が捉えやすく、着色も色を重ねるだけなので、
- 立体表現が苦手
- 制作時間が長くなりがち
な方にオススメです。
ラフの描き方
それでは、髪の描き方に注目してメイキング形式でご紹介します。
使用するソフトはCLIP STUDIO PAINT。ラフの段階なので白黒の鉛筆ブラシでラフを描いていきます。
今回のメイキングでは、カールした長い金髪のアンニュイな雰囲気の女性を描きます。ビンテージ写真に登場するような、少し古風な巻髪を目指しました。髪型が思いつかないときは、雑誌などを通してモデルを探すのも良いでしょう。
大まかなデザインが決まりました。
グリザイユ画法はグレーの陰影で形を描いていくため、乗算レイヤーで黒系のグラデーションをかけて画面全体を暗くし、ラフのレイヤーと統合させます。
ラフの詳細の詰め方
色混ぜツールと鉛筆ブラシを使い、髪の毛の動きと余白の部分とのバランスを見ながら、イラスト全体のバランスに注意しつつ詳細のデザインを詰めていきます。
絵に動きをつけるため、バストアップまで画面を広くし、髪の描写を動きのあるようにしました。こちらも引き続き、不明瞭だった髪型を、描きながら詳細を詰めていきます。
頭の形に沿ってふわふわした巻き毛を表現します。このとき、カールの動きの繋がりや毛束の重なりが不自然にならないよう、また単調にならないよう注意して描きます。
髪の毛の描き方
大まかに毛の動きを描いたら、毛束をいくつか残して、色を混ぜ、描いた線をぼかします。色を混ぜることでラフの線が馴染み、髪の毛の重なりを表現できます。
後ろに重なっている毛束は奥まっているため暗く輪郭をぼやけさせて描き、手前に突出している毛は明るく、はっきりした輪郭で表しましょう。
全体的に明るく、毛束の重なりが不明瞭になった場合は、暗部の色をスポイトでとり、サイズの大きなブラシを使って明度を下げるか、色混ぜで明部と暗部を馴染ませましょう。
グリザイユ画法の着色
着色作業に入る前に、先程描いた絵の上に黒系のグラデーションを乗算で重ねて画面全体を再度暗くします。全体を暗くすることで背景にも色をのせることができます。
ベースとなる着色をします。ソフトライトを使って、肌の色や髪の色をのせていきましょう。
スクリーンモードを使って、後れ毛を極小サイズのブラシで描くと、一層リアルな雰囲気が出ます。
また、ソフトライトの光が強すぎて輪郭がぼんやりしたり影が消えてしまったりする際は、乗算で描き足しましょう。
コントラスト・色味の調整と加工
色塗りが一通り終わったら、画像を統合してコントラストや色味を調整します。ここで完成でも構わないですが、私はテクスチャを重ねるのが好きなのでテクスチャを重ねます。顔や体、髪の毛の上にかかるテクスチャは適宜消しておきましょう。
まとめ
以上で完成です。
今回の髪の描き方をまとめると、
- モノクロで大まかなにラフを描く
- ラフの詳細を詰める
- モノクロの詳細ラフの上からレイヤーモードを使い着色
という流れになります。
ポイントとして、髪の動きを使って余白部分を埋めてイラスト全体の構図を整えたり、毛束の動きや繋がりに違和感がないか、毛束の重なり、前後の描き分けを意識すると美しい髪の描写に繋がります。
著・画 八頭こほり
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Twitter|https://twitter.com/yazukohori
2014年頃から創作活動を始めてイベントや展示に参加しています。
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