プロイラストレーターのラフの作り方が分かる! 鳥羽雨イラストメイキング

プロイラストレーターのラフの作り方が分かる! 鳥羽雨イラストメイキング

1枚の絵を描くとき、みなさんはどのように描き始めますか? コンセプト、構図、色合い、デザインの詳細……などなど、ラフの段階で色々考えないといけないですよね。言葉で伝えるのは簡単ですが、アイデアを形にする作業はなかなか難しいものです。

 

今回は人気イラストレーターの鳥羽雨さんが一枚絵の構想からラフを完成させるまでどのようなステップを踏んでいるか、メイキングで解説します。

 

ラフという、アイデアを形にする作業の思考プロセスをプロイラストレーターから学びましょう!

 

※こちらの記事は株式会社ビー・エヌ・エヌ新社より発行の『表現したい世界を描く!CLIP STUDIO PAINT PROイラストレーションテクニック』の一部を再編集したものです。

 

▼目次

ご紹介するメイキングイラストの完成形

1.イラストの見せ場を決めるアイデアの出し方

2.構図と共に配色を検討

3.背景のデザインを詰めていく

4.ラフの上からあらためて素体を描く

5.主要モチーフを描いてバランスを確認

6.ドラゴンの顔の角度を検討する

7.顔の位置をずらして動きを出す

 

 

ご紹介するメイキングイラストの完成形

CLIP STUDIO PAINT PRO イラストレーションテクニック

1.イラストの見せ場を決めるアイデアの出し方

CLIP STUDIO PAINT PRO イラストレーションテクニック

今回のイラストは「女の子を描きたい」というところから始まりました。当初からのテーマはそれのみで、他の要素はラフを描きながら決めていく形を取ります。こちらの図は最初に描いた女の子のスケッチです。真正面以外の構図をいくつか描き出して検討しました。

CLIP STUDIO PAINT PRO イラストレーションテクニック

スケッチした中から、女の子が振り向いている構図が良さそうに思い、これに決定。


第一の見せ場となる顔が右上に位置するので、背中と太もものあたりに第二、第三の見せ場が必要です。そこで“エルフ、妖精”といったイメージで背中に羽根を入れ、周囲に昆虫を飛ばすアイデアを出しました。

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周りに自然物を置くのに、人物までヒラヒラしていると画面に締まりがなくなりそうなので、衣装は兵士風に。なかでもどこかの君主に仕える近衛兵をイメージしたビシッとした軍服を着せてみることにしました。軍服のイメージに合わせ、レイピア風の武器を持たせてみます。

2.構図と共に配色を検討

CLIP STUDIO PAINT PRO イラストレーションテクニック

色ラフを制作して、さらにイメージを詰めた段階です。赤を主体にして、人物の周りに花を散らせてみました。


全体の色バランスをみて、大きな暗い面積が欲しいと思い、背景にひとまず濃いグレーの色面を置いて検討しました。

3.背景のデザインを詰めていく

CLIP STUDIO PAINT PRO イラストレーションテクニック

背景の大きく暗い面積を埋めるのにふさわしいモチーフを検討し、当初考えてた昆虫ではなくドラゴンを置くことにしました。ドラゴンならば女の子との質感も異なるため、画面を華やかにできそうです。そしてドラゴンというモチーフに併せて女の子は騎手という設定に。手に持つ小物は剣ではなく鞭にしよう……といった具合に、考えた世界に併せて周囲の小物も変えていきました。

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その後は実際にイラストを仕上げながら、キャラクターのイメージを詰めていきました。ポイントは女の子とドラゴンの瞳の色をおそろいにしたことです。「あなたと私、同じ目の色ね……」みたいな展開がありそう!?


騎兵団のようなところでドラゴンが飼われている設定も考え、女の子の腰のベルトとドラゴンの角に同じエンブレムを入れています。

4.ラフの上からあらためて素体を描く

CLIP STUDIO PAINT PRO イラストレーションテクニック

ラフの最前面に新規ラスターレイヤーを制作して白で塗りつぶし、[不透明度]を下げてラフを薄く表示させます。その前面に適宜新規ラスターレイヤーを追加して各モチーフの線画を描き、試行錯誤しながらラフを詰めていきます。女の子はまず素体から描き起こしました。

5.主要モチーフを描いてバランスを確認

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女の子の素体を描いたレイヤーの[不透明度]を下げて表示を薄くし、前面に新規ラスターレイヤーを作成して線を描き起こしていきます。続いて、女の子とは別に新規ラスターレイヤーを作成し、ドラゴンも描きました。その後、バランスを確認します。図の状態では双方が右を向いていて、見る人の視線が画面の中で上手く回らないため、ドラゴンを左に向けたほうが良いかな、と考えました。

6.ドラゴンの顔の角度を検討する

CLIP STUDIO PAINT PRO イラストレーションテクニック

ドラゴンの顔の角度を試行錯誤し詰めていきます。左の図では正面を向けて見ましたが、顔の占める面積が大きすぎる気がします。そして結局横顔が良いということで、右の図の角度に落ち着きました。

7. 顔の位置をずらして動きを出す

CLIP STUDIO PAINT PRO イラストレーションテクニック

先の段階ではドラゴンと女の子の目の高さが同じ位置でしたが、画面に動きをもたせるため、ドラゴンを少し下にずらして構図を崩しました。その上でさらにラフを描き込み、細部を詰めていきます。また、ここでは[ページ管理]メニュー→[作品基本設定を変更]でキャンバスサイズを少し広げた後、新規ラスターレイヤーを作成してイラストの完成枠の外側までドラゴンを描き、体勢を確認しました。

 

これで大ラフの完成です。

 

完成作品までの手順は『表現したい世界を描く!CLIP STUDIO PAINT PROイラストレーションテクニック』をCHECK!

 

CLIP STUDIO PAINT PRO イラストレーションテクニック

 

ラフ作業のあとは線画、着彩、ディティールの詰め、仕上げを行い一枚のイラストが完成します。各手順は株式会社ビー・エヌ・エヌ新社より発行されている『表現したい世界を描く!CLIP STUDIO PAINT PROイラストレーションテクニック』で読むことができます。

 

鳥羽雨さんの素敵なイラスト、どのように完成までできているか是非チェックしてみてくださいね! 他にもMika Pikazoさん、もくりさんのメイキングもありますよ。

 

 

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