アニメやライトノベル、ゲームなどイラストを使用する媒体は複数あります。これら媒体によって使用されるイラストのテイストが少しずつ違うことはご存知でしょうか。
今回は4種の媒体でそれぞれ使用されやすい塗り方や色使い、線画の描き方の考察と作例をご紹介していきます。
▼目次
アニメのピンナップイラストで使われる線画と塗り
美少女ゲーム(ギャルゲー)で使われる線画と塗り
TL(ティーンズラブ)ノベルで使われる線画と塗り
ライトノベルで使われる線画と塗り
アニメのピンナップイラストで使われる線画と塗り
塗りについて
アニメのピンナップイラストを元に考察します。
全体的に彩度が低く、落ち着いた色合いになっていることが多いです。
影色は1色とされることが多く、影も大きく入れてコントラストがはっきりしているのが特徴です。
髪の塗り方
髪は立体感を出すために、毛束を薄い布のように捉えて裏と表を意識しながら影がつけられています。さらに毛先や頭頂部を中心にグラデーションがかけられていることが多く、リッチな印象が与えられていることが多いです。
服の塗り方
影を落として、服に立体感を与えることが目的になっています。
実際のアニメの印象をそのまま活かすため、シワが細かくなりすぎないようざっくりと描かれている特徴があります。
肌の塗り方
肌も同様に影を大きく落としています。立体感を与えるのが目的です。
最近のピンナップイラストでは見受けられませんが、肌の赤みを表現するために関節部分にグラデーションをかけているイラストもあります。
今回は多くの作品に共通しているように、頬に赤みのあるグラデーションを入れました。
目の塗り方
瞳の色数を多くすることで、透明感を出すようにしています。
まつげは黒系にしつつも、真っ黒にせず少しだけ別の色味を含ませることで目に柔らかな印象を与えています。この作例の場合は、やや茶色系を含ませています。
線画について
基本的にアニメのピンナップイラストの線画はあまり描き込みがありません。
元々、動かすようにデザインされた絵なので、線画の情報量が控えめの特徴があります。
線の色は黒のままのケースもありますが、撮影処理したかのように線の色味を調整することで雰囲気を変えることができます。
例えば、線を黒で描いてから不透明度を少し下げると線がなじみます。
背景を描く場合は線画の不透明度を下げると下の色が干渉してしまうため、不透明度はそのままで線の明度を上げると良いでしょう。
美少女ゲーム(ギャルゲー)で使われる線画と塗り
塗りについて
続いて美少女ゲーム(ギャルゲ塗り)の考察です。美少女ゲームの表現は多様で、特にこれといったものがありません。ただ、アニメ塗りとは異なった共通点があるので、その中の一例をご紹介します。
まず、アニメ塗りより彩度が高いケースが多々あり、美少女ゲームのキャラクターイラストはカラフルで可愛い印象の色使いが多く見られます。
色数を多く使っているので、例えば下塗りと影色の色相の差を大きくして華やかな印象を与えたりできます。
髪の塗り方
アニメ塗りは1色の影とグラデ・ハイライトのみでしたが、ギャルゲ塗りでは色数が多く使われています。
この作例の場合は影の色味表現に3色使いました。アニメ塗りの影色はベース色と同じ色相の濃いめのピンクだったのに対し、ギャルゲ塗りでは紫寄りにして色数を多くしています。
服の塗り方
アニメのピンナップイラストよりも彩度を高めにして透明感を出すことが多いです。この作例でも彩度を高めにしています。さらに、影の部分をぼかして柔らかい質感を出しています。
肌の塗り方
肌は影のエッジ部分を少しぼかして柔らかい雰囲気を出すのが特徴的です。作例でも、柔らかい印象を出すために、影のエッジを少し弱めています。
さらに、下塗りの明度を上げて影色を明るくみせています。
関節と頬の部分にはグラデーションをかけて、ハイライトをのせてツヤっとした肌にしました。
目の塗り方
アニメ塗りと同様に瞳の色数を多くして透明感を出しています。さらに、ギャルゲ塗りではレイヤー効果(例えば、加算[発光])などを使用して、さらに透き通るような表現にしています。
まつげはアニメ塗りより色数を増やして、華やかな印象をもたせるイラストが多いです。作例ではクリッピングマスクを利用して青系の色味を足してみました。
線画について
美少女ゲームのキャラクターイラストは線画をなじませるために、「色トレス」を活用しているケースが多いです。
この作例も線画の色は色トレスをして各パーツの色に合わせて馴染ませています。さらに、彩度を少し高めにすると線がボケずに華やかな印象を与えることができます。
また、服の線はアニメ塗りとほぼ一緒ですが、髪の線だけ変えています。アニメ塗りはシンプルなので線画で遊びを加えてありますが、ギャルゲ塗りはもう少し塗りこむのでシンプルに仕上げました。
線画の遊びを入れすぎると塗るときに線が少し邪魔になったり浮く場合があります。
塗り毎にどんな線画が合うかは変わるため、どういうテイストで塗るかを決めてから線画を描くと良いと考えています。
TL(ティーンズラブ)ノベルで使われる線画と塗り
塗りについて
続いては、TLノベルで使われるイラストの考察です。
TLノベルのイラストは全体的に淡く華やかで繊細な印象がある塗り方が多いです。暗くならないように彩度は少し高めに設定し、繊細さを出すために影色は薄めで細かく描かれています。
髪の塗り方
繊細な印象を与えるために髪の細さやツヤのある表現は重要です。この表現は細い線でハイライトと影を入れることで表しました。
服の塗り方
TLイラストは淡く描かれていることが多いので、影はぼかしを多用します。作例では、薄めの影をつけ、部分的にぼかして布の柔らかさを出しました。
肌の塗り方
肌も淡い印象にするために、柔らかく透明感のある表現を目指します。影ははっきりと入れずに薄くいれると透明感を出しやすいので効果的です。
目の塗り方
華やかさを出すので、明るめの色を起用します。瞳の透明感を出すために色数を多く使い、加算[発光]などのレイヤー効果で透き通った風にみせるのはギャルゲ塗りと同様です。まつげに関してもクリッピングを使用して色数を増やして、華やかさを出しています。
線画について
ギャルゲ塗りよりも繊細さを表現するために、髪や服の線の描き込みが多いのが特徴です。ただ、ギャルゲ塗りと同様に、TLノベルのイラストも色トレスしているケースが多いです。
色味が全体的に淡いので線画をギャルゲよりも薄めの色にすると良いと思います。
ちなみに線画を描き込む際に髪の束を細かくしたり、服のシワを増やしたりすると繊細な印象が出せます。
ライトノベルで使われる線画と塗り
塗りについて
最後にラノベで使われるイラストの考察です。ラノベ塗りという名称にしていますが表現手法にこれといったものがなく多種多様です。ある意味、最近流行りの塗りといった考えを持っています。その中での一例として考察します。
作例の場合だと、ギャルゲよりも影色の色相のずらしを控えめにし、彩度をほどほどに、明暗差もつけすぎないようにしています。この手法をとることで落ち影がはっきりと出るのでメリハリがつきます。
髪の塗り方
影を少しくすんだ色味にしました。線画に沿って細い影をつけると毛束の重なりを感じる髪になります。
髪のハイライトも多種多様ですが、作例ではハイライトをライン状に描いて部分的にぼかす手法をとっています。こうすることシンプルながら綺麗に描けます。
服の塗り方
TLノベルよりも彩度を下げた色にしています。ワンピースの影色は暖かみのあるグレーにしました。
肌の塗り方
影はギャルゲよりも薄くつけ、落ち影ははっきりつけました。肌の立体感を意識しています。さらに、光源側に輪郭に沿って白いハイライトを入れます。
目の塗り方
これも起用作家の作風により多種多様ではありますが、色数が多く使われ、まつげも黒ではなく複数の色味が使われています。
この作例でもまつ毛、瞳共にカラフルにすることを意識して塗り、ライトノベルのテイストによくある独特のきらめきを出しています。
線画について
こちらも色トレスをします。線画色は各パーツの色に合わせています。TLイラストのように鮮やかな作品はあまりないので彩度は低めにしました。線画の色トレスをする際は、部分的に茶色や黒を残すと絵が引き締まってきます。
服の描き込み量はTLノベルと同じケースが多いです。
髪の線の処理を少し変えてみたのでギャルゲの線と比べてみましょう。
最後に
それぞれの媒体でよく見かけるテイストのパターンを紹介してみました。
2つ以上の媒体のパターンが混ざっているものや、今回のパターンに当てはまらない場合ももちろんあるので、自分の描きたいイラストのテイストを考えながらどんどん自由に描いていきましょう!少しでも参考になる箇所があれば幸いです。
著・画 川下ろっかく
フリーのイラストレーター。主にPBWで活動させていただいております。普段はpixiv等で講座と女の子描いてます。
Twitter:https://twitter.com/nagaredasu