背景資料をアレンジしよう!背景ラフの描き方講座 これで「学校の校門前」の背景イラストが描ける!~レイアウト編3~

背景資料をアレンジしよう!背景ラフの描き方講座 これで「学校の校門前」の背景イラストが描ける!~レイアウト編3~

「学校の校門前」のような、施設を屋外から見る構図を例に制作方法をご紹介するシリーズ。前回は、SAI2を使ったパース定規の作成方法をご紹介しました。

第三回となる今回は、「ラフ制作」です。前回設定したパースをもとにラフを描いていきます。

 

▼目次
背景資料をアレンジして描こう
 描写範囲を考えよう
 季節を考えよう
 オリジナルアレンジを加えてみよう
学校の校門前の描き方
 校門の描き方
 樹木の描き方
 校舎の描き方
 校舎の加筆

 

背景資料をアレンジして描こう

まず、ラフを描く前に認識しておきたいことを解説します。


写真を基にして描くと、背景イラストとして使いにくい部分が出てきてしまいます。さらに、細かなディテールが分からない部分もあるため、自分でアレンジして描く必要もあります。

例えば学校名などの固有名詞は、画面を作る上で描き足したり、削除したりします。

 

それでは具体的にアレンジすることが多いポイントを、以下に紹介していきます。

描写範囲を考えよう

ベースにしている写真では、右手前に植え込みがあります。このままの状態でキャラクターの立ち絵を表示させると、まるで植え込みのすぐ手前に立っているように見えて、窮屈な印象になってしまいます。

 

構図でいう手前側、画面でいうと下側はメッセージウィンドウが表示される部分でもあるので、あまりモノを配置しない方が良いでしょう。

季節を考えよう

また、この写真を撮影したのは冬だった為、一部の樹木が落葉している状態です。

 

必要としている背景イラストが冬のイメージであればこのままで良いですが、特に指定がない場合は樹木は葉がある状態にしておきましょう。

オリジナルアレンジを加えてみよう

さらに校舎の奥側や左の部分など、何も見えない部分が多いので、建物などを描き足してディテールに変化をつけるようにしていきます。

学校の校門前の描き方

校門の描き方

線画は基本的に手前にあるものから描いていくとよいでしょう。その為、はじめは校門の門壁部分から描き進めていきます。

 

建物のように直線的なものは、設定したパース定規を使用すれば、簡単にパースに沿った線が描けます。

使用するのはSAI2です。まずは、校門の向きに合わせてスナップを選択しましょう。

 

どのスナップで描くかは画面上部のツールバーにあるボタンで決められます。定規全体を一時的にOFFにしたり、それぞれの軸ごとにスナップのON、OFFを切り替えることができるので活用しましょう。
 

右側の植え込みは削除しますので、それを踏まえて線を描き足していきます。


門の部分など、「後から変更する可能性があるもの」はレイヤーを分けて描いておきます。

 

校門の前の舗装部分も描き進めます。縁石などはパースの向きに沿っていない曲線もありますので、パース定規を一時的にOFFにして、フリーハンドで形を描いていきます。ラフの段階ですので、大まかに形を取るくらいでOKです。

樹木の描き方

屋外の背景では、植え込みなどの樹木を描くことが多くなります。樹木は写真そのままで描くのは難しいので、シルエットを合わせる程度にしておき、細かい部分を描き込む必要はありません。

 

描くフローは以下となります。

1.樹木のディテールを観察する

まず、描く樹木ですが、写真で見ると葉の形状が複雑になっているのに加え、暗くなっている部分がつぶれており、ディテールがよくわからなくなっています。このようなものを細かく描くのは難しいでしょう。

2.樹木のシルエットを描く

写真を参考に樹木のシルエットを描いていきます。無理に葉の形を描こうとせず、単純化してもOKです。

3.ボリュームの表現

樹葉のまとまりの下側に斜線を引いて暗くすることで、ボリュームを表現していきます。

4.線画の状態の確認

写真を非表示にすると、このようになります。影になって暗くつぶれているところは、色塗りの際に明暗で表現しますので、線画で描き込む必要はありません。

 

写真では葉が落ちて幹枝だけになっている樹木も、葉を描き足しておきましょう。季節設定を踏まえることが大切です。

 

校門の後ろにある植木・樹木を描いた状態です。校門の周辺は一通り描けたので、さらにレイヤーを追加して、校舎部分を描いていきます。

校舎の描き方

学校の校舎は多くの場合、四角形の立方体の構造ですので、パース定規を使用すればきれいに形を描けます。

 

写真では換気口やダクトなど、細かいディテールがありますが、そのまま描かずに一部は省略して描いていきます。

 

それでは、校舎部分を描いていきましょう。まずは目立ちやすい画面中央の2階部分から描きます。

 

 

建物の多くは直線で構成されているため、パース定規を設定すればきれいに描くことができます。窓の枠などは線が重ならないように気をつけましょう。

 

 

写真ではつぶれてよくわかりませんが、枠に側面の厚みを描いておくと立体感を表現できます。

 

 

 

左側の壁に窓を加筆するなどして、少しディテールを変更していきます。たまに写真画像を非表示にして、描いている線画の状態を確認しつつ、作業を進めていきましょう。

校舎の加筆


 

写真で見ると左側の校舎が低く、このままでは2階建ての建物のように見えてしまいます。

 

 

手前側の窓の大きさを参考にして、奥にさらに高い校舎を描き加えました。このようにディテールを加えていくことで、オリジナルのデザインに変更していきます。

 

 
校舎1階部分も、写真では暗くつぶれている部分があります。このようなところは、自分なりに構造を考えて線画を描き進めていきましょう。

 

 

 
さらに校舎の奥にある照明やネットフェンスを描き加えました。

 

フェンスのネット部分は線画で細かく描くと密度が上がってしまうため、輪郭だけ描くようにしています。これらは色塗りの際にテクスチャや色合いで表現すれば問題ありません。

 
これで一通りのラフが完成しました。今回はここまで、次回は線画をきれいにしていくクリンナップ作業を行っていきます。

 

これら背景イラストは自著である『背景CG上達講座』(翔泳社)に詳しい解説がありますので、よろしければそちらもご参考下さい。

 

▼『背景CG上達講座』
https://www.shoeisha.co.jp/book/detail/9784798137568

著・画 bcd

pixiv:https://pixiv.me/bcd
twitter:https://twitter.com/poskara

 

フリーランスのイラストレーター。専門はゲーム・アニメの美術設定、背景イラスト制作を手掛けています。イラスト制作業務のかたわら、専門学校で背景イラスト・アートワークの講義を担当。

 

著書に「背景CG上達講座」(翔泳社)。講師としては、岩崎学園横浜デジタルアーツ専門学校非常勤講師、専門学校東京ネットウエイブ非常勤講師、バンタンゲームアカデミー講師を勤めています。