暗めの髪色で描いてみよう! 髪の描き方メイキング
2020.02.03
今回は髪の塗り方講座。前回にご紹介した「暗めの髪色で描いてみよう! 髪の描き方メイキング」に引き続いて、銀髪や灰、白髪といった色素が薄い髪色の塗り方をメイキング形式で紹介します。
▽前回の記事はこちら!
▼目次
銀髪や灰、白髪など薄い色の髪を表現する場合は艶の有無で塗り分けることが多いです。
例えば、前回に描いた黒髪のキャラクターですが、ベース色を灰色に変更するだけで銀髪っぽく見せられます。
さらに、そこからハイライトを消して白髪や灰髪みせたいところですが、ハイライトを消すと地味な印象が生まれます。そこで今回は薄い色のツヤを抑えて塗りを解説し、華やかさを出しつつ銀髪との差別化ができる塗り方を紹介していきます。
というわけで白い髪を塗ってみましょう!
ベースはベージュ系の色を選びました。まずは、頭の丸みを意識してエアブラシでふんわりとカゲを入れます。(この辺は前回講座を参考にしてください)
単純に一色だと華やかさに欠けるので、首回りの髪の内側に別の色を入れて発光したような表現にします。
その主な表現手法は下記の3つです。
よく使われる手法ですが、実際に髪が発光することはないのでイラスト的な表現です。華やかさの演出なので自分の好きな色を選んでみてください!
ここから影又はハイライト入れますが、私は先にハイライトを入れています。
キャンバスを拡大して全体が見えない状態で塗っているときに、「ハイライトの位置をガイドとして扱えるので便利」というのが理由です。影が先かハイライトが先かはお好みでどうぞ!
ということで、まずは細かいことを考えずざっくりと光の当たる面を白く塗ります。
白髪は艶々に仕上げると他の色に見えてしまうので、面を塗るイメージでもっさりと仕上げてください。レイヤーの透明度を下げて馴染ませると良いでしょう。
乗算レイヤーにカゲを入れます。ベースの髪色が薄いので、主張が強い色を使うと別の髪色に見えてしまうため灰色を使いました。
一番光っているところにはカゲを入れません。
色混ぜ系のブラシで、髪の陰影がうっすら見える程度まで馴染ませてください。
陰影をハッキリと入れると、コントラストが高くなり髪が輝いてみえるので控えましょう。
髪の透明感と前後感を出すために、髪の内側の紫に塗った部分に発光レイヤーで色を重ねてもっと輝かせました。
輪郭線が真っ黒なので、色トレスをして全体的に髪色を馴染ませました。さらに、前髪や毛先におくれ毛を追加し整えます。
陰影の統一感が薄かったので、髪・顔・身体すべてのレイヤーを乗算レイヤーにまとめて、カゲを描きます。
左の絵くらいカゲが濃くても雰囲気がありますが、髪塗りの解説なので分かりやすいように透明度を15%くらいまで下げました。
キャラクター全体に光を描き加えます。髪は細かく描きこまず、面を塗るイメージで描きましょう。
ここでやっと真っ白を使います! 意図せず白飛びすると汚くなるので、白飛びする位置を考えながら塗りましょう。
ハードライトレイヤーを作成して、光とカゲの境界に彩度の高い色を置きます。
これは水彩画の技法をデジタルに応用したものであったり、実際に光とカゲがぶつかる場所の彩度が高くなったり、写真のハレーションだったり様々な状況で起こる現象です。
出現条件や現れる色味を考えると非常に複雑なので、イラストを華やかにする技法と思って絵をより良く見せる色や場所を選んでください。
今回、ピンク色を選んだのは
というのが理由です。
奥行きを出すために、重なった部分に青灰色を塗ってどちらが前にあるのか分かりやすく表現します。
なぜ青灰色を重ねていくのかというと「空気遠近法」と「進出色と後退色」の特徴を踏まえたからです。
空気遠近法とは近くのものがハッキリ見え、遠くのものが霞んで見る現象を利用した表現方法です。
奥側に灰色を重ねてコントラストを弱めると、奥行きを表現することができます。実際の人間サイズで起こる現象ではありませんが、上手く使うと立体感が出るので取り入れています。
暖色と寒色を置いたとき、暖色(赤や黄など)は手前に見え、寒色(青など)は奥に見える視覚的な効果があります。肌は暖色寄りのため、髪の一部分に寒色を使うことで奥まって見えるという視覚的効果を利用して青寄りの色を使っています。
ベース色によっては青色を使いにくいことがありますが、その場合は彩度を下げても同じような効果になります。
今回はキャラクターの首と髪の境目に寒色を置きましたが、肌の方が明度と彩度が低く、首横の髪の方が鮮やかな為に、顔・首・髪の前後関係が分かりにくくなっています。
そこで、首と髪に青灰色を重ねてコントラスト落として顔が前にあることを強調してみました。
顔色が悪かったので、カラーバランスを調整して、ハイライトのイエローとレッドを強めました。その後、髪までピンクになってしまったので、シャドウのシアンを強めています。
以上で完成です。冒頭で描いた銀髪と並べてみました。
本講座の流れを沿うことで、白髪で艶々に見えないようにコントラストを弱めつつ、地味になりすぎない工夫をしています。
同じ髪色でも艶ありとマットを塗り分けてバリエーションが増やせると思います。ぜひ試してみてください!
イラストレーター。ソーシャルゲームのカードイラストを中心に、3DS用ゲームの背景や食玩のオマケイラストなどジャンルを問わず活躍。Webのイラスト講座なども多数手掛ける。
ホビージャパンより著書「CLIP STUDIO PAINT キラキラの描き方 宝石・鉱物・金属などを輝かせる塗り絵テクニック」好評発売中。
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