Twitterやpixivなどに投稿されるたくさんのイラスト。そのそれぞれが、イラストレーターが持つ味や特徴を持っています。中でもバズっている作品や人気のクリエイターは、作り手の特徴が強みとなって、多くの人の目に留まり、支持されるようになるのです。
クリエイターそれぞれの特徴や個性を生み出しているもの、その一つが「作画へのこだわり」です。キャラや属性へのこだわり、部位へのフェチズム的なこだわりは見る側に情熱を訴えかける表現への原動力になります。
技法、技術の面では、作画作業へのこだわりも見る側の記憶に残る個性になります。ラフへのアイデアの落とし方、線画の描きこみ具合、そして、着彩においてどのような色を選ぶのか。クリエイター個々人しか知らないこだわりの一工夫が、作品に光る強烈な魅力に一役買っています。
ここでは、技法書レーベル「いちあっぷブックス」から、『映え作画~プロ100人が教える魅力的なキャラ作り~』より、著名クリエイターにこだわり作画テクニックをご紹介いただきます。
今回のクリエイターは、漫画家・イラストレーターの灸場メロさんです。灸場メロさんが制作した上図の作品の制作工程を通して、同氏のこだわり作画テクニックを見ていきましょう。
▼目次
寒色と暖色を対比させよう
ベタ塗り
キャラを塗る
簡単な陰影を塗り分け
背景に色を置く
細部を塗り込み
明暗のコントラストをつける
背景を調節する
着彩の仕上げでクオリティを上げよう
寒色と暖色を対比させよう
ここでは、「塗り」のこだわりについて解説します。
着彩を始めるときは暗い色から塗り始め、明るい色を加筆していきます。寒色と暖色を上手く織り交ぜると綺麗に見えるので、隣り合わせになるよう配色を考えましょう。
今回は「冬」を簡単なテーマとして設定しているので、冬景色の寒色に対して暖色を意識的に配置していくと、映える着彩になります。
1.ベタ塗り
着彩の下準備として、多角形選択ツールで線に沿ってベタ塗りしていきます。ベタ色の濃さであらかじめ遠近感をイメージできると良いです。
2.キャラを塗る
ざっくりとキャラクターの下塗りをします。
3.簡単な陰影を塗り分け
さらに簡単な陰影をざっくり塗り分けながら描いていきます。
4.背景に色を置く
背景も合わせてざっくりと色を置きます。雪の着彩では、影は空を反射した青色に、日の当たるところは太陽の暖かい色になるので、実際より少し誇張して風景を塗り込んでいきます。
5.細部を塗り込み
詳細に塗り込んでいきましょう。
髪の毛は複雑に立体感を出したいので、色々な色を置きながら塗ります。
背景が寒色なので、ボアジャケットの色はメリハリをつけるために暖色にします。
6.明暗のコントラストをつける
光の当たる箇所と影の箇所のコントラストを強めていきます。ボアジャケットの質感も徐々に塗り足していきます。
7.背景を調節する
奥の山がふんわりしていたので、コントラストを上げました。また、草木のブラシを使って密度や情報量を足していきます。明度の高い看板の後ろに暗い色を置いて、一つひとつ一つのモチーフが際立つように調節します。
着彩の仕上げでクオリティを上げよう
イラスト制作の中で、一番時間をかけるのが「仕上げ」の作業です。
資料などを参考に写実的に描き上げて、厚塗りで塗りこんでいきます。この工程によって、キャラ・背景のクオリティが上がります。
上記の塗りからさらにクオリティを上げるため、厚塗りをしていきます。色トレ・線画・着彩レイヤーを結合して、線の上から塗りで形を整えながら着彩していきます。
ボアジャケットの影や質感は、厚塗りであればざくざくと表現しやすいです。綺麗に塗り込んでいくと逆に不自然に見えてしまうモチーフがあるので、この場合のボアジャケットは筆跡を残すくらい塗り込みます。
カメラは機械なので、くっきり塗ると自然に見えます。
背景の木には、ハイライトや残雪を加筆すると立体感が出てきます。
上図では、日の当たっているキャラと背景の境目に日差しを浴びた影響としてオレンジ色で線を引きました。日に当たっているという情報を線の色で足せるので、便利な小技です。
右下に足跡を描き足して「奥から来た」というストーリー感を高めています。ボアジャケットもしっかりと塗り込み、着彩工程は完了です。
最後に
今回は、着彩の下準備から仕上げまでを解説しました。
映える着彩のコツは、暖色と寒色を上手く織り交ぜることです。背景や全体的な色感と対比的な色味を置いていくことで、メリハリを出していきましょう。続く仕上げは資料をしっかり確認して、じっくり描きこむことで、最終的な映えのクオリティへ確実に繋がります。
このイラストの制作工程についてもっと知りたい方は、『映え作画 ~プロ100人が教える魅力的なキャラ作り~』をご覧ください。
まとめ
- 暖色と寒色の対比が映える彩色のコツ
- 着彩の仕上げは細部まで
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