液体や炎、雪や爆発など不定形なエフェクト(特殊効果)はダイナミックな画面作りにはかかせない素材です。
今回はその中で、特に使用頻度が高いと思われる「煙」の描き方がテーマです。
単純に、煙のようなかたちを描くだけならすぐに出来ますが、”説得力のある”煙を描く場合に知識が必要です。
そこで、煙エフェクトを描く為に知っておきたい、考え方やテクニックを4つ紹介します。
▼目次
1.エネルギーの方向性を意識する
まずは上の図をご覧下さい。煙の動きには矢印のような「エネルギー」が働いています。
煙は空気より軽いので、上から、常に押されるような動きになります。それが特徴的な回転運動を生み出しているのです。
なお、煙は個体ではなく、もの凄く小さな粒子の塊です。観察すれば、小さな粒子が少しずつ薄まりながら拡散して目で見えなくなるのが判ると思います。
CGではこの極小の粒子を一粒一粒シミュレーションしてコンピューター上で描き出すので、まるで本物のようにしか見えません。
※実際にはこのように描く必要は特にありませんが、この仕組みを一旦頭に入れておくだけでリアリティと説得力が見違えてくると思います。
2.煙を球体の集まりで考える
平面的で単調な煙になってしまわないように有効なのが、煙をいくつもの球の集合体としてとらえる方法です。
最初は、上の図のように、大きな球と小さな球を組み合わせたものを描いていきます。
このとき、なるべく単調にならないよう、左右対称を避けながらリズム良く、浮く配置していきましょう。
これに光源を設定して、さっきの球体に影を付けていきます。さらにもう少し濃い2影を付ければ質量感がさらに増します。
プロアニメーターはいきなりこの段階から描き始めますが、それは彼らが頭の中で最初に球のようなものを意識できるからです。慣れるまでは最初の作業を下描きしたりと、とにかく煙を「三次元的に捉える意識」が重要です。
3.煙の消え方、流れ方
ノーマルな煙が描けるようになったら、今度は煙のかたちを変形させてみましょう。
強風など、強い力を受けると図のように、トゲトゲした形状になります。
また、中央に風穴が空くときは、回転の方向を意識して描くとアニメのようなかっこいい形状になります。
また、消え方も重要です。最初に大きな塊がいくつかの塊にバラけつつ、それらもやがて消えていくのが基本の流れです。
4.実際の画面への活かし方
今度は実際の画面の中にリアリティある煙エフェクトを取り入れてみましょう。
煙の使いどころは予想以上に様々なシチュエーションがあります。戦闘シーンやスペクタクルシーンにはもちろんのこと、日常生活や風景画でも積極的にとりいれていくことで画面を華やかにしてくれる名脇役のような存在でもあります。
ほんの一例ですが、応用例をご紹介します。
これはアクション漫画の王道的な戦闘シーンです。これはキャラクターのまわりの煙が舞台装置のような役割を果たしています。黒澤映画ではよく決闘シーンとなると風を送り、大量の土煙を出していますが、雨や強風、煙などの自然現象を使うのは演出の王道でもあります。
今度は一転して日常風景です。鍋からでる煙が画全体の中でアクセントのように効いています。
このように、人の営みを描く為の演出でもかかせません。ぜひこの煙エフェクトを用い、より良い画面作りにお役立てください。
著・画 セーガン
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メーカー勤務。アニメーション、漫画、講座等の自主制作活動に日々励む。ライフワークは映像学。現在絵コンテの描き方を勉強中。