同じポージングで描いても、カメラワークを変えることで違った印象が生まれます。
今回はカメラという考え方を意識した、より魅力的なイラストを仕上げる4つのアイデアをご紹介します。
▼目次
カメラワークを考え、ドラマチックなイラストを描く
まずは画面サイズを決めます。この画面サイズをカメラの画角だと考えてください。
真っ白な紙にキャラクターなどの被写体を描くと考えるより、「カメラを使って被写体を映している」と考えることで、よりドラマチックな状況を描けます。
画角には長方形、円、正方形などありますが、どのように視線誘導させたいかで決めましょう。
上図の作例のように、横に流れる動きを表現したいなら横に長い画面を選び、上や下に向かう流れを強調しないなら縦長の画面を選ぶと効果な演出ができます。
カメラワークから考える、イラストの描き方
次に被写体を決めましょう。
どんなキャラクターやアイテムを描くか自由です。ただ、どの部分を画面に収めるかによって見る人に伝わる内容が変わります。伝えたい内容によってカメラを被写体にどこまで近づけるかを決めましょう。
全身を描くカメラワーク
全身を描くことで、その被写体が何者であるかが伝わりやすいため、存在感を伝えるときに効果的です。細かい描写ができないので、表情の変化や材質などの表現には向いていません。
ひざ上を切り取ったカメラワーク
全身の動作を描くときに効果的です。動作のダイナミックさを出すために、あえて不要な部分をカットする技法です。
腰より上を切り取ったカメラワーク
2つ以上の被写体の関係性を描くときに効果的です。関係性を伝えるための表情もある程度見えつつ、両者の距離感も伝わりやすい構図です。
胸より上を切り取ったカメラワーク
手の動作に注目してもらいたいときに使用します。不要な部分をバッサリカットするのが、カメラワークにおける重要ポイントです。
肩より上のカメラワーク
顔は人体パーツの中で視線が集まりやすい部位であり、キャラクターを象徴する部分です。全身とは少し用途が違いますが、これもキャラクターの存在を強調するときに使用しましょう。
例えば「誰だかわからないが女の子がいる」程度の存在感では、このカメラワークは使用しません。たとえ名前が表記されていなくても、特定のある人物を描くときに使用します。
映画を思い出すとわかりますが、いわゆるモブキャラクターに顔アップのカメラワークを使うことはあまりないのと同じことです。
顔をアップしたカメラワーク
このカメラワークは、表情を見せたいときに使います。せっかく表情豊かな被写体を描いたのに、カメラを引いてしまってはもったいないです。
部位を強調したカメラワーク
目の煌めきを見せたいなら目だけ!口の艶を見せたいなら口だけ!という極端な構図ですが印象を残すのに効果的です。
作例ではキャラクターがモデルですが、背景やアイテムなどでも同じ効果があります。アイテムにおける表情とは何か、を考えて置き換えてみましょう。
カメラマンから考える、イラストの描き方
カメラワークの代表的なものにフカン・アオリなどがありますが、もう一歩踏み込んで「カメラマン」の存在を意識しながら描くことで、さらなるドラマが作れます。カメラマンを意識すると、同じフカンやアオリでも違った印象を与えられます。
例として、頬を染めた女の子を被写体に配置し、カメラマンによって変わる印象の違いを考えてみましょう。
背の小さいカメラマンからの印象
小さい妹をカメラマン(視点)にするとこのような印象になります。
アオリ構図といえば、威圧感、存在感を出すときに使用しますが、特定のカメラマンを想定したアオリの場合、違った印象を作れます。アオリはアオリでも、幼い子供が見上げる画角を採用することで、威圧感を軽減してくれます。
背が同じカメラマンからの印象
今度は、同じ背の高さの子をカメラマンに採用しました。同じ頬を染めた被写体でも、だいぶ印象が違うのではないでしょうか。
背の高いカメラマンからの印象
次にフカン構図になる2つのカメラマンを用意しました。1つは、被写体より少し背の高い人物が見下ろす形になる画角。もう1つは、鳥のように人間より高い位置から見下ろす画角です。
△ 男の子が見下ろした角度
△鳥が見下ろした画角
同じフカンでも、男の子視点は女の子を身近に、ドラマチックに感じるのではないでしょうか。
鳥視点は、一般的に見る人が感情移入する対象がカメラマンではないため、客観的な印象を与えてしまいます。もちろん、あまり女の子を身近に感じてほしくない場合は、鳥視点の方が効果的です。
このように同じフカン・アオリであっても、画角や距離によって見る人が想像するシチュエーションがガラッと変わります。裏設定でもいいので、特定の存在をカメラマンに配置してみましょう。
配置から考える、イラストの描き方
同じ被写体でも、画面のどこに配置するかによって印象が大きく変わります。この効果を利用して、伝えたいイメージをダイレクトに表現しましょう。
空間を意識した配置
見る人の多くは、まず被写体の形状に現在進行形のドラマを感じ、次に被写体のない空間にドラマの続きを求めます。
上の画像は、被写体の目線の先に大きな空間があります。この空間から、思わず「この子は何を見ているのだろう?」「この先に何があるのだろう?」と想像してしまうのではないでしょうか。
このように、視線の先へとドラマを感じさせたい場合は、視線の方向に空間を作りましょう。この構図は、開放感や躍動感を表現するときに効果的です。
上記の効果を逆手にとって、視線方向に画面枠を持ってくると、閉鎖的、孤独感を表現できます。また、背後に空間を置くことで、背後から何か来るのではないかというドラマを想像させることができます。
上手・下手を意識した配置
また、上手・下手という概念もあります。これは、左右で対峙した場合、右の方が格上に感じるというものです。
舞台用語で、元は封建的社会制度から来ているなど諸説あるようですが、多くの人は上手を上位、格上、強者、登場側と感じ、下手を下位、格下、弱者、退場側と感じるので、それを利用しましょう。例えば、ラスボスは上手側に、挑戦者は下手に……など、多様に応用可能です。
映像演出の話に近くなりましたが、たとえキャラ単体絵だとしても、ほんの少しカメラを意識するだけで、そこにドラマが生まれます。ストーリー性のある絵は見る人の印象に残りやすいので、色々試してみてください。
著・画 ゼロモモ
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