ノベルゲーム背景イラスト講座です。「主人公の部屋」のような”ゲームでよく登場する室内の背景”をモチーフに制作手順や描き方のポイントをご紹介するシリーズ。
レイアウト編、彩色編、仕上げ編に引き続き、今回からは差分のイラストの制作方法を解説していきます。
差分編の第一弾ではこちらの日中帯のイラストをベースに、夕方の差分の制作方法をご紹介します。前回の記事をご覧頂いていない方は、下記講座より振り返りください。
▽レイアウト編や彩色編、仕上げ編の記事はこちら
▼目次
差分イラストとは
まずは差分イラストについて解説します。
ノベルゲームには、同じ室内でも状況の異なるバリエーションを作成する必要があります。これを差分と呼びます。
差分はさらに、
- 夕方、夜などに変更する時間帯差分
- 家具類の配置などを変更する状態差分
に分けられます。これらの2つの制作方法や注意点は下記となります。
時間帯差分について
基本的に家具などはそのままに、色合いや光の効果のみを変更しましょう。
状態差分について
家具などを変更したり、なくすことがあります。その為、取り外しができるようにパーツごとにレイヤーを分けておき、家具類の後ろ側にある壁なども描き込んでおきましょう。
夕方差分の制作方法
1.調整レイヤーによる色合いの変更
トーンカーブの調整レイヤーを使用して室内の雰囲気を変更します。
トーンカーブはRGBとレッド・グリーン・ブルーのチャンネル毎に色合いの調整ができます。
全体の明暗を調整するには、それらRGBの項目を変更してください。それぞれのチャンネル毎に調整することで全体の色合いを変更できます。
ブルーのグラフの中央を少し下げて、レッドのグラフ中央を少し上げることで、全体がオレンジがかった色合いに変更できます。
2.入射光の変更
夕方になると、太陽からの光の向き、角度が変わります。昼に比べると斜めになり、より部屋の中まで光が届くようになります。昼の状態で描いた入射光の表現は削除して、もう一度窓からの光の形を描きなおします。
夕方の光は、昼に比べて少し強調すると印象が強くなります。光が当たっている部分は、オーバーレイモードのレイヤーを追加して、明るく塗っておきます。
トーンカーブの調整レイヤーでは全体を暗く変更したので、元の明るさを維持しておきたい窓ガラスや天井の照明付近は、マスクを使って調整します。
3.部屋の雰囲気の調整
オーバーレイモードのレイヤーを追加して、入り込む光の色合いで、全体にブラシをかけます。淡いオレンジ色で薄く塗ることで、夕方の雰囲気を出せます。
さらにハードライトモードのレイヤーを追加して、光が当たっているところに薄くブラシを掛けることで、周辺への光の照り返しを表現します。ふんわりと柔らかい印象にしたいときに効果的です。
最後に、全体のバランスを見つつ、光の色合いを入れていきましょう。
以上で、夕方の差分イラストの完成です。次回は夜差分の制作方法を解説します。
また、これら背景イラストは自著である『背景CG上達講座』(翔泳社)に詳しい解説がありますので、よろしければそちらもご参考下さい。
▼『背景CG上達講座』
https://www.shoeisha.co.jp/book/detail/9784798137568
著・画 bcd
pixiv https://pixiv.me/bcd
twitter https://twitter.com/poskara
フリーランスのイラストレーター。専門はゲーム・アニメの美術設定、背景イラスト制作を手掛けています。イラスト制作業務のかたわら、専門学校で背景イラスト・アートワークの講義を担当。
著書に「背景CG上達講座」(翔泳社)。講師としては、岩崎学園横浜デジタルアーツ専門学校 非常勤講師、専門学校東京ネットウエイブ 非常勤講師、バンタンゲームアカデミー 講師を勤めています。