観客の視線を引き付ける絵を作ろう!情報量のコントロール講座

観客の視線を引き付ける絵を作ろう!情報量のコントロール講座

 

イラストの絵面があっさりし過ぎて、見る人の記憶に残らない…。 描き込み過ぎてもゴチャゴチャしてしまい、やっぱり誰も見てくれない…。

 

思わず視線を集めるような魅力ある絵を作るには、いかに情報量をコントロールするかがポイントです。 今回は、構図にも仕上げにも使える情報量の操り方をご紹介します。
 
▼目次
情報量ってなんだろう?
情報の配置
情報の増やし方・減らし方《実践編》
 1. 線画を工夫する
 2-1 光と影を工夫する
 2-2 凸凹している部分を増やす
 3. カラーリングを工夫する

 

 

 

情報量ってなんだろう?


情報量とは、絵から読み取れる情報の数のことです。まず、上の画像をご覧下さい。

 

この画像からは多くの人が「黒い円」という情報しか読み取れないのではないでしょうか。

 
次に、黒い円に色や突起を追加するとどうでしょうか?

 

この絵を見た人は「この絵には○○と○○の色が使われていて、触手のような出っ張りがあり…」というように、絵からたくさんの情報を読み取ろうとします。
 
観客はその絵から得られる情報をひととおり取得したら、満足して見るのをやめてしまいます。情報量が多すぎても、混乱してしまいます。

 

自分の絵柄やモチーフに合った情報量を模索してみましょう。
 


情報の配置

 

 
画面全体が同じ密度でも、引っかかりがありません。

模様のように規則的にモチーフが並んでいるだけでは、上記の黒い円と同じように、観客が取得できる情報が少ないということです。
 

 
上の画像をご覧下さい。左右とも似たような絵ですが、右の方が単調さが減り、中央まで目が行きやすいのではないでしょうか。

 

より目立たせたい中心部はディテールを細かく描き、そのほかの周囲の円はあえて簡素に仕上げました。
 
こうすることで画面全体の情報量を増やし、かつ、主役に注意を向けされることができます。「目立たせたい部分以外は、あえて描き込まなくても構わない」ということです。これを「粗密感のコントロール」といいます。

 

すべてのモチーフが細かく描き込まれ、細部に渡るまで丁寧に仕上げてあるのは素晴らしいことですが、主役が埋もれてしまうこともあります。

 

作風にもよりますが、「簡素でも構わない部分は、思い切って情報量を減らす」という手段も頭に入れておきましょう。
 

情報量の増やし方・減らし方《実践編》
 
 

1. 線画を工夫する
 

それでは、実際に情報を増やしたり減らしたりしてみましょう。
 

 
情報量を操作する方法の1つに、線画を一工夫する方法があります。
 
線画は

  • 線の太さが均一だと、情報量が少ない
  • 線の太さがまばらだと、情報量が多い

です。
 

 
画像のように少しタッチを変えるだけでも、印象が大きく変わります。強弱をつける場合は、陰になる部分を太くするのがオススメです。


2-1. 光と影を工夫する
 



 
次に、明暗で情報量を操作する方法です。
 
明暗の場合は

  • 明暗の差が小さいと、情報量が少ない
  • 明暗の差が大きいと、情報量が多い

です。


 
明暗に情報量を付加する方法は

  1. まず、単純に影をつける、光が当たる場所を作る
  2. グラデーションにしてみる
  3. 凸凹している部分を増やす

などがあります。
 


2-2. 凸凹している部分を増やす



 
上記の「凸凹している部分を増やす」という方法は、質感を表現する時にも使えます。質感とは、「どのくらいの大きさの凸凹を、どのくらいの頻度で配置するか」ということです。

 

シワの多い布なら細かく凸凹を描き込み、厚みのある布なら大きく緩やかな凸凹で表現します。岩や金属も同じです。
 
もっと情報量を増やしたい場合は、その素材がどのくらい周囲の光を反射するか、などが加わります。

 

リアルなら良いというわけではく、自分の絵に必要な情報量の範囲で凹凸の数を決め、質感を表現してみましょう。
 


3. カラーリングを工夫する


 

 
カラーリングで情報量を増やす方法を2つご紹介します。ベースの色は決まっているが、もう少し情報量を増やしたいという時に試してみてください。
 
1つ目は、同系色を足す方法です。
 
色相環で近い色は、お互いの色を邪魔しません。左右どちらかの色を、ほんの少しだけ加えるだけでも、もとの色をより鮮やかに見せてくれます。
 
左右どちらを選ぶか…

  • 緑・青に近い色を選ぶと、落ち着きのある印象
  • 赤・黄に近い色を選ぶと、明るく活発な印象

です。
 

 
上の画像を見てください。ほんの少し色味を足すだけで、印象が違って見えるのではないでしょうか。
 
グラデーションで足してみたり、ハイライトとして足しても効果的です。

 

 
2つ目は、補色を足す方法です。
 
ここで注意しなくてはならないのは、色相環で遠い色同士を混ぜると濁って見えるということです。このくすみを利用したい場合のみ、使用しましょう。
 
補色を追加する欠点は…

  • くすむので汚く見えてしまうことも
  • ベースの色の鮮やかさが失われてしまう

 
補色を追加する利点は…

  • 落ち着いた雰囲気を演出できる
  • 色味という情報を増やせる
  • リアリティがアップする

 
写真を見たらわかるように、現実のものは思っている以上に彩度が低いです。なので、ほんの少し補色を足すだけで、リアリティがアップします。
 

 
上記の画像を見てください。
 

  • 黄色の髪の毛、金属には、うっすらと青をのせています。
  • 赤いドレスには、緑を…
  • 緑の植物には、赤を…

足す時は、影側に足すのが効果的です。目立たせたい部分には色をのせず、ベースの鮮やかさを残しています。
 
今回は、仕上げ部分に重点を置いたため省いていますが、ポーズやシルエットなどでも情報量が変わってきます。

 

まっすぐの棒が並んでいて、一本だけ折れ曲がった棒が混じっていると、見る人は「おや…」と思考を開始します。
 
どこが物足りないか、どこがゴチャゴチャしすぎか…など、情報量という観点から自分の絵をチェックしてみるのも面白いのではないでしょうか。

 

著・画 ゼロモモ

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