近年、流行するグルメ漫画。グルメの主役といえば「食べ物」ですが、いざ描くとなるとなかなか難しいものです。
そこで今回は食べ物の描き方として、「ラーメン」を例に描き方をメイキング形式でご紹介。描くテクニックや美味しく見える仕上げテクニックなども合わせてお届けします。
▼目次
1.ラーメンのラフ画の描き方
実際の写真を見ながらトッピングや配置、スープの種類などを考えます。
今回はよく見かけるトッピングとして以下の4種類と麺を選びました。
・チャーシュー
・玉子
・メンマ
・白髪ねぎ
・麺
スープは応用しやすいよう透明感のある醤油ベースです。
2.ペン入れ
キャラクターの主線に合わせた太さで線を引きましょう。線の太さはキャラクターと背景のデフォルメ度合いに合わせてください。
著者の描くキャラクターは線が細く、細かい部分は塗りで表現するのでラーメンも同じく具の凹凸や細かな部分までペン入れせず省略しています。
3.色分け
ラーメンの上に乗った具はそれぞれ独立しているのでパーツごとにレイヤーを分けました。スープのレイヤーの上に新規レイヤーを作り、麺を描き込んでおきます。
4.麺の描き方
塗りやすいように麺のレイヤーの透明ピクセルをロックします。そして、立体感を出すためにスープの色をスポイトして影になる部分を塗っていきます。重なり合っている麺の下側は茶色で塗ると、それっぽく立体感が出ます。
さらに、新規レイヤーを作成して下に沈んでいる麺を描写します。
奥行きを表現するために透明度を50%下げて、スープレイヤーが透けるようにしました。
続いて、麺の立体感を強調させるために新規レイヤーを追加してハイライトを入れます。ハイライトは麺が重なり合って、出っ張っているであろう場所に加算(発光)70%で入れました。
頂点部分(赤丸)にハイライトを置いてラーメンの方向に沿って、ぼかしブラシで伸ばすイメージです。
5.チャーシューの描き方
写真を見ながら肉の色の違いを捉えて塗っていきましょう。特に肉の色ムラ、タレが染みた表面と断面の違い、陰影と色合いが複雑です。一気に塗ろうとせずに一つひとつの要素を塗ります。
肉の色ムラは白っぽい部分や赤っぽい部分、筋などの違いを塗りで表現するのがコツです。さらに、チャーシューらしく側面部分を一段濃くしてタレが染みこんだ色味にしました。
続いて、立体感を出します。まずは陰影です。新規レイヤーを作成し、乗算100%で陰影を描き込みます。
その後、新規レイヤーを作成して、白でハイライトを入れます。チャーシューは光を反射するものではなくスープが乗ってツヤが出ている状態なのでスープの粘度に合わせてハイライトを入れましょう。
ドロドロ系のスープならば、ぼかしを使ってトロみを表現しますが、今回は醤油ラーメンなのでペンツールを使用しエッジを立てた固いハイライトを入れました。
6.白髭ネギの描き方
ネギは白い部分と緑の部分を塗り分けてあげると、立体感も出てネギっぽく表現できます。あまりきっちり描くとリアルになりすぎるので自分の絵柄に合わせて適宜省略しましょう。
白い部分と緑の部分を塗り分けたら、新規レイヤーを作成し、乗算100%で陰影を描き込んで立体感を出します。上の方は明るく、下は暗くするのがコツです。こちらもデフォルメ具合に応じて適当に省略して影を入れてください。
ぼかし過ぎるともっさりした印象になり新鮮さがなくなってしまうので最小限にとどめました。ペンツールを使うと固くなりすぎてしまい、ネギの柔らかさがなくなるので水彩ツールを使用しています。
続いて、スープに浸かっているネギを表現します。新規レイヤーを作成して、乗算100%でスープに浸かっている部分を塗りましょう。色味はスープの色をスポイトしてください。水面の位置を考えて、ネギを沈ませるのがリアリティのある表現にするコツです。
最後に、新規レイヤーを作成してスープとネギの接している部分に白でハイライトを入れます。ネギの色が白っぽいのであまり目立ちませんので、縁部分に入れたり、スープを中心に入れると良いでしょう。
7.メンマの描き方
メンマに立体感を与えてきます。新規レイヤーを作成して、乗算100%で繊維の凹凸と側面に陰影を入れました。繊維の方向に向かってペンを動かして、筆跡が滑らかになりすぎないようにすると質感が出ます。
新規レイヤーを作成し、スクリーン100%でハイライトを入れます。メンマにスープが浸っていれば、チャーシューのように細かなハイライトを入れますが、最後にそっと乗せたイメージで描いたので、今回はツヤを入れませんでした。このあたりはお好みでどうぞ。
8.玉子の描き方
まずは黄身です。半熟玉子の設定なので濃いオレンジで色ムラを作り、半熟部分と火が通った部分を表現します。
白身はツヤがあり、白いのでスープなどの映り込みがしやすいです。なので、影となる部分はスープの色合いで塗ると馴染んだ表現ができます。
陰影を入れたら、新規レイヤーを作成して白でハイライトを入れます。半熟の黄身はテカテカしているのでハイライトを大雑把に入れましょう。粘度のあるものはぼかしを使用してハイライトを入れるとドロドロ感が出ます。
9.スープの描き方
最後にスープの表現です。水面下に透けている具材を塗っていきます。
玉子やメンマは塗り終わったものからスポイトすると自然に馴染む色になります。今回はスポイトで吸った色を水彩ツールや半透明のペンを使って、スープのレイヤーに描きこみました。
10.ライティングの調整
全てのレイヤーの一番上にオーバーレイ100%で新規レイヤーを作り、全体のライティングを調整します。調整したのは以下の3点です。
① 器がすり鉢状なので、縁に近いほど水深が浅くスープの色が良く見えて、中央は濃くなるはずです。周囲に明るい色を重ねてスープの深さを表現しました。
② スープの色をスポイトして具材に軽く乗せ色を馴染ませます。
③ ねぎの中央に白を乗せて白飛びさせ素材の明るさや軽さを表現しました。
11.油の描き方
浮いている油を描きます。
具の縁や器と接する部分に「丸」を描いて、油が集まっている様子を描きこみます。油の具合はスープの種類によって変わってくるので描きたいラーメンをよく観察して下さい。
12.器の描き方
周囲に集まった油が器についてしまい、それが照明を反射しているという設定で、器とスープの際の所にハイライトを入れました。ハイライトはスープをグルっと囲むイメージで描きます。
13.仕上げ
一番上に新規レイヤーを作成、乗算25%で全体に同じ色を乗せて色合いを整えます。
ここでは白熱灯の下のイメージで黄色を選びましたが、蛍光灯の下なのか日中なのかで、キャラクターの置かれている状況が変わる為、背景や状況と色味を合わせてください。
湯気を描き込んで完成です!
著・画 珠樹みつね
イラストレーター。ソーシャルゲームのカードイラストを中心に、3DS用ゲームの背景や食玩のオマケイラストなどジャンルを問わず活躍。Webのイラスト講座なども多数手掛ける。
ホビージャパンより著書「CLIP STUDIO PAINT キラキラの描き方 宝石・鉱物・金属などを輝かせる塗り絵テクニック」好評発売中。
Twitter:https://twitter.com/tamaki_mitune