「マネタイズ」につながる、フォロワーの「質」とは? ― 元ノイタミナプロデューサー高瀬敦也氏×Web漫画家やしろあずき氏 対談企画 ―

「マネタイズ」につながる、フォロワーの「質」とは? ― 元ノイタミナプロデューサー高瀬敦也氏×Web漫画家やしろあずき氏 対談企画 ―

やしろあずき

どうもこんにちは。Web漫画家のやしろあずきです。

高級料亭

そしてここは見るからに高級料亭です。

さて、今回なぜこのような場所でかしこまった感じで始まったかというと、そのようなかしこまった場所でお話しすべき人物とお会いするからです。

高瀬敦也

その人物とはこちら!!

コンテンツプロデューサーで、株式会社ジェネレートワン代表取締役CEOの高瀬敦也さん!!

そう、なんと今回は高瀬さんの著書『人がうごくコンテンツのつくり方』の出版記念として二人での対談をさせて頂くことになったのです。なんで僕が相手なのかは未だに不明です。なんで?

登場人物紹介

高瀬敦也 氏

高瀬敦也

コンテンツプロデューサー。

株式会社ジェネレートワン代表取締役CEO.

 

フジテレビ入社後、営業局にてスポットセールスプランニングに従事。その後、編成制作局にてバラエティやアニメの企画・プロデュースを行う。

 

バラエティでは『逃走中』や『戦闘中』、『Numer0n』など企画性の高い番組を多数企画。
さらに『逃走中』『戦闘中』ではニンテンドー3DSのゲームをプロデュースし、シリーズ累計100万本を超えるセールスを達成。また、『Numer0n』ではスマートフォンの普及を見越し、アプリ化を前提とした企画としてゲーム内容からデザインし、スマートフォンアプリは350万ダウンロードを記録。

 

アニメでは、深夜アニメブランド『ノイタミナ』の立ち上げに関わり、「ノイタミナ」を命名。『のだめカンタービレ』(第一期)や『ハチミツとクローバー』、『モノノ怪』、『図書館戦争』など多数のアニメ番組をプロデュースする。

 

フジテレビを退社後「ジェネレートワン」を創業。 マンガの原作脚本制作を開始。『二択歩行』は各漫画アプリで一位に。他『OPI』『独立国家埼玉』『ネコレンニャー』などオリジナル性の高いファンタジー作品が順次公開予定。 

 

また、Tシャツに特化したアパレルブランドgeneraを立ち上げる。 自社での事業の他、音声と写真のコンテンツプラットフォームアプリ『hearr』を立案、ローンチ。

 

スマホ向け動画事業の立ち上げに多数参画、ライブコマース事業にも関わるなど、IT分野にも精力的に注力。ブライダル、製菓、製塩、ほか多業種で、新事業企画、新商品企画、広告プロモーション戦略など幅広くコンサルティングを行っている。

やしろあずき 氏

やしろあずき

ニート。

 

 

 

それでは、本日はよろしくお願いいたします!
高瀬さん
ニートなんですか?
ニートです。

今回は高瀬さんの本『人がうごくコンテンツのつくり方』という本の出版記念での対談なのですが、 お互い違うフィールドでコンテンツを作り出している人間として本の内容に多少触れつつも自由に話してほしい、とのことだったので、自由に話させていただきたいと思います。
高瀬さん
コンテンツを作り出しているニートなんですか??
ニートです。それでは対談のほう初めていきましょう!

「ノイタミナ」立ち上げの秘話

まず高瀬さんの話なんですが、ノイタミナのプロデューサーだったのですよね。

《ノイタミナとは?》

2005年4月に設立した深夜アニメ枠「ノイタミナ」

「ノイタミナ」とは「Animation」を逆読みしたもので、 「アニメの常識を覆したい」「すべての人にアニメを見てもらいたい」 という想いから名付けられています。

 

現実と非現実がどちらも「リアル」な今、 テレビとインターネットとリアルをつなぎ、 日常に少しだけ変化を与える存在でありたい。

引用元:「ノイタミナとは」http://noitamina.tv/about/

ノイタミナの放送枠では『あの花の名前を僕たちはまだ知らない』や『のだめカンタービレ』、『PSYCHO-PASSサイコパス』など各年を代表するアニメ放映されている。

高瀬さん
そうですね、まあ僕が立ち上げの一人と言われてますけど、実際は立ち上げ時とその後の何作かのプロデューサーらしきことをやったってだけで、現場で一生懸命やってくれていた同僚のおかげですね。
なるほど。

僕も高校生あたりまで部屋の壁をアニメポスターで埋め尽くしていた結果、付き合った彼女を部屋に入れた瞬間ふられた経験があるぐらいのアニメオタクなので、ノイタミナのアニメはよく見ていたんですが、今考えると当時「ノイタミナ」みたく深夜アニメの枠自体に名前がついている枠組みって他にはなかったですよね?
高瀬さん
地獄みたいな振られ方ですね。同情する。
思い出しただけで涙出てきた。
高瀬さん
枠の名前はそうですね! 立ち上げる時に枠タイトルをつけたいと言ったら、いいよって言われて僕が考えることになるのですが、アニメーション(Animation)のスペルを逆文字にしてアニメの常識を覆すという意味でつけた……的なこと、ノイタミナサイトとかに書いてますよね。
ありますね!あれ見たときは結構感動しました。
高瀬さん
あれは完全に後付けです。
後付け。
高瀬さん
これ、ほとんど喋ってないんですが、小室哲哉さんが1995年に立ち上げていたレーベルがあって、その名前が「オルモック(ORUMOK RECORDS)」っていうんですね。

なんでオルモックなのかっていうと、小室さんのアルファベットを逆さまに読んで命名してて、「これ超かっこいいな」と思ってそれをパクっただけです。そしたらうまくハマったという。
まさかこの対談でそんな衝撃の事実が白昼の明るみにでるとは……じゃあ常識を覆す的なのはマジで後付けだったんですね。
高瀬さん
後付けです。感動させちゃってすみません。フフッ
何で今笑ったんですか

ノイタミナ枠のアニメの「ノイタミナ感」

ノイタミナ枠アニメはちょうど「のだめ」とかやってたあたり集中して見てたんですが、なんかノイタミナのアニメってノイタミナ色というか……他の深夜アニメと比べてそこまで濃い色ではないイメージがあったんですよね。

その辺って何か意図されてたりするんですか?
高瀬さん
ああ、最近はちょっと変わってきたんですが確かにそうですね。

ノイタミナは元々、金田さんという先輩が動かれて立ち上がったんですが、目標としては「月9」をアニメでやりたいって想いがあったみたいで。

当時の深夜アニメって少しお色気だったりグロだったりそういうものが多かったんですが、そういうものよりはヒューマンドラマ的なアニメを多くやっていくんだというポリシーがありました。
なるほど、月9ってすごくわかりやすい例えですね……しかし最近は変わってきたんですか?
高瀬さん
そうです。

結局のところ、当時のアニメはDVD、ブルーレイなどのパッケージを売らなければいけないんです。

パッケージが売れないとアニメを流す枠自体を確保できないので。なので、パッケージが売れやすいような作品にシフトしていきました。
つまり「月9路線」から戦略を変えたってことですか?
高瀬さん
はい。

実はパッケージが売れやすいのと視聴率が取りやすいって、結構逆になることが多いんですよ。

なので、万人ウケってよりは、やはりすこしはニッチに寄って狭いところを攻めた方がお金って動きやすいんですよね。
なるほど。
高瀬さん
僕の著書「人がうごくコンテンツのつくり方」にも書いたんですが、ニッチな市場に寄っていくほど余計な情報や要素がなくなり、その結果欲しいものが明確になってお金が動きやすくなるので。

今は、大半の人がブルーレイやDVDは売れないのでマネタイズは別の方法に変わってますが。
自分の本の宣伝を挟むのが上手い。

▲引用:『人がうごくコンテンツのつくり方』より

SNS時代のクリエイター活動

高瀬さん
次にやしろさんの話をしたくて、僕が出した『人がうごくコンテンツのつくり方』の一つのテーマでもある「コンテンツを作る」っていう行為なんですが、これって普通のクリエイターさんにとっては当たり前のことというか、毎回やってることじゃないですか。
そうですね。特に流れが早いSNSとかだと息を吐くように何かしらのコンテンツを生み出している気がします。
高瀬さん
ええ、気になるのがそのコンテンツのつくり方で、最近だと企業さんとかを通さずにTwitterなどで自己プロデュースだけで生計を立てられるようにもなってきているのかなと。 結構徐々にそういうタイプの人がでてきて、やしろさんもその1人なんじゃないかと。
確かに。 僕も企業さんとお仕事をさせて頂くことも勿論多いんですが、そうやって仕事がくるのも自己プロデュースあってこそだし、勿論企業なしで収入を得ている側面もありますね。 確実にそういう流れはきていると思います。
高瀬さん
最近の、そういう個人的な活動でいうとどんなものがありますか?
そうですね……これまで僕がコミケなどイベントで出している同人誌をKindleで販売したり、livedoorブログで4コマを毎日更新したり……一応、多少は企業も絡んじゃいるんですが個人の裁量が多い活動はこのあたりでしょうか。
高瀬さん
それはどんな結果が?
Amazonでは売れ筋ランキング1位を獲得し、livedoorブログではありがたいことに500万ブログ中トップの2018年最優秀グランプリを取らせて頂きました!
高瀬さん
すごっ!1位ばかりじゃないですか!
ありがたいですね……でもamazonの売れ筋ランキング1位にのったのは、実はKindle Unlimitedに僕の本が適応されてからなんです。あれの利用者ってすごい多い。

今、全体的にああいうサービス自体に課金してそこにある多数のコンテンツはタダで読める、とか、タダで公開して気に入ったら買ってもらう、みたいなやり方が増えてきている気がします。
高瀬さん
それを言うと自分も自分で書いた書籍は別にタダで全文公開してもいいと思っています。

最初から自分の作り出したコンテンツをばら撒いて、その後実演とかライブとかそういったもので稼ぐようになってきた、まさに今の時代っぽいやり方ですよね。
はい。ただそれで食っていけるようになるためにはやはり多少の知名度というか、そういったものも必要かなとは思っていて、やはり自分のことを知ってもらうというのは大事だと思いますね。
高瀬さん
それはやはりTwitterなどでの自己プロデュースですよね。
そうですね、自分をどういった位置にキャラづけするのかとか、フォロワーの質をどうコントロールしていくのかなど、結構考えるべき部分はあります。

重要なのはフォロワーの質、そして作品自体の質

高瀬さん
フォロワーの質?
はい、例えば最近はSNSで作品を公開してファンをつけ、そこに目をつけた出版社が寄ってきて商業での連載を獲得――という流れが多いですよね。
高瀬さん
ですね。何十、何百万PVとかある人は書籍化する時の数字が目に見えるから声をかけやすいんですかね?
それは勿論指標としてはそうなんですが、実際いくらフォロワーがいても全く本は売れなかったって人もいるわけなんですよね。なのでフォロワーの数というよりは、自分が何か商品を出した時にお金を出してくれるほどの熱量があるフォロワー、つまり熱いファンがどれだけいるかが重要になってくると思います。
高瀬さん
なるほど、それがフォロワーの質。
勿論、フォロワーだけに質を求めるのではなく、お金を出してまで手元に置いておきたいと思わせられる「作品自体の質」も重要だと思います。あと、お金を出すフォロワー=質がいいフォロワーと言っている訳じゃないですよ!(笑)

クリエイターによって求めるものは違いますし、僕の場合だと僕の普段からのおふざけにノッて一緒にコンテンツを盛り上げてくれるフォロワーさんたちも「質がいい」と言えます。
高瀬さん
クリエイターによって見てくれる人に求めるタイプは違うし、クリエイターと一致しているタイプのフォロワーをいかに集めるかが重要になる訳ですね。それは結果としてマネタイズにも繋がると。
だと思っています。
高瀬さん
もし商業から声がかからなくても個人の力で作品を販売できる場所だって無数にあるわけだし、そこから芽が出たクリエイターさんもいるわけですよね。 やっぱり作り手として一番辛いのって「世に出ない」ことだと思うので、今は良い時代になったなとは思います。
そうですね、売り方を選べる時代になったんだなと思います。
高瀬さん
出版社には出版社の良さがあるし、個人には個人の良さがあると。
はい、お金の面でいうと全部自分でやったほうが手元に入ってくる分は確実に多いんですよね。

でもやはり企業の力やサポートがないと超えるのが難しい、というか面倒な壁というのも存在はするわけで……そこを全部1人でも突破できるならば個人で、難しいならば企業と――、向き不向きで動き方を変えられる時代にはなったと思います。
高瀬さん
なるほど。そういう人たちのためにもエージェントというものも存在するんですね

クリエイターとエージェントの関係性

高瀬さん
やしろさんは「株式会社wwwaap執行役員」という肩書きもお持ちですが、これはどういう関わり方をしているんですか?この会社は漫画家さんのエージェント会社ですよね。
役員って大層な肩書きがついていますが、ただ籍を置いているだけです(笑)

会社の役割としては、SNSでの拡散力、影響力に特化した作家さんにお仕事を斡旋してあげる会社ですね。
高瀬さん
なるほど、SNS特化なんですね。
はい。SNSのみでずっと漫画を上げ続けていた人って、企業相手の値段交渉や上手なやりとりが苦手な人が多いんです。

勿論一人で完璧にできれば言うことはないんですが、そういったやり取りが苦手だからこそ損をしてしまう人もいます。

なので、作品の担当編集的な役割もしますし、そういった企業との交渉なども担当できるのがエージェントとしての役割だと思っています。
高瀬さん
やしろさん自身もそういうエージェント的な仕事をするんですか?
僕は本当にwwwaapという会社の窓口という意味で執行役員をやっているようなものです。

例えばwebで描いている作家さんがwwwaapのことを知ったけどちょっと怖いし大丈夫なのかなぁ……ってなってる時に、クリエイター側にも立っている僕が社内にいるだけで多少は安心して貰えるのかな、と
高瀬さん
なるほど、確かに知っているクリエイターがいれば一気に安心できますね。

でも、そうやって他のSNSで活躍しているクリエイターに仕事を与えていて不安にはならないですか?いってもライバルでしょ?
それはそうなんですけどね(笑)

ただ僕は自分が漫画家として食べていけなくなった時のために保険もかけておきたくて、そういった意味で今いくつもの企業と漫画とは関係ないお仕事をさせて頂いていたりもします。

あと、やはり稼げる人がいなくなったらこのSNS漫画家という業界自体が衰退してしまうと思うので、新しい人にはどんどん有名になって稼いでいってほしいし、そういった意味で他の作家さんの手伝いをするのに危惧感とかは感じていませんね。

『人がうごくコンテンツのつくり方』を読んで

そういえば高瀬さんの本、読ませて頂きました。
高瀬さん
おお、ありがとうございます。
僕個人として一番刺さったのはインフルエンサービジネスについて、どんなにインフルエンサーに力があっても紹介している商品や紹介の仕方が悪いと伸びない……つまり「元がよくなければ伸びない」と言っているところです。

これは本当、実際にインフルエンサービジネスをやっていて一番感じることなので。
高瀬さん
そうですよね。数字だけ見て頼んでくる企業とかも実際多いとは思いますが。
多いですね。それで期待はずれの結果が出て一方的にこちらが怒られるみたいな。前に話したフォロワー数が多いから単行本がその数出る訳じゃないって話と同じで、例えば5万人フォロワーがいるからって5万リツイートが確約されている訳ないんですよね。
高瀬さん
SNSをまったく分かってない人だと、そのあたりの区別ができなそうだよね。
インフルエンサーが強くたって、リツイートするのはそのファンだけなので……ファンの壁を突き抜けて拡散させていくには、商品自体や紹介の仕方に魅力がないと絶対に届かないと強く感じていますね。僕ら漫画家の場合では漫画に魅力があるかどうかになります。
高瀬さん
インフルエンサーの力だけで人は動かず、コンテンツそのものの力とインフルエンサーの力が合わさってより膨大な数の人を動かすことができるってことですね。
まさにその通りだと思います!あとは、紹介しているものが「本当にその人が好きなものか」ですね。やはり自分が大好きなものだと紹介していて熱量も上がりますし、結局そういったものがバズるんですよね(笑)
高瀬さん
まさに。このあたりの話が気になる人は「インフルエンサーに頼りきらない」という項を読んでください。
綺麗な宣伝だ。読み終わったら世の中の全てのものを「コンテンツ」として見られる、世界の見方が変わる『人がうごくコンテンツのつくり方』是非とも皆さま読んでみてください。

 

『人がうごくコンテンツのつくり方』

「コンテンツ」や「企画」に悩む全ての人へ

「逃走中」「ヌメロン」「ノイタミナ」「世界行ってみたらホントはこんなとこだった!?」等、 数々のヒットコンテンツを生み出したプロデューサーの世界一簡単なコンテンツのつくり方!

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