人気職業ランキング19位(『13歳のハローワーク』より)と、上位の人気を誇る職業「イラストレーター」。好きで描いた絵を仕事にできるのは、多くの子供達の憧れなのかもしれません。
イラストレーターは弁護士や医者と違って、資格が必要ないお仕事。ただ、プロになるには「魅力的な絵が描けること」が必須になります。独学でも絵を上達させる手段ありますが、世の中には美術系の学校に通って、技術向上に励む選択もあります。
これらの選択肢の中で、本気でイラストレーターになるためにどのような進路を考えるべきでしょうか。また、その進む先にあるお仕事はどのようなものなのでしょうか。フリーランスと会社勤めの違いはあるのでしょうか。
今回は専門学校を卒業後、フリーイラストレーターとして漫画やゲーム、ライトノベルなど様々なジャンルで活躍しているアルデヒドさんにイラストレーターになるための進路やお仕事についてインタビューしました。
イラストレーターのなり方の一つとして参考になれば幸いです。
学校の種類は関係ない。どこに行こうとも、「やるのは自分」
「うーちゃんの小箱」(角川スニーカー文庫)
――アルデヒドさんは専門学校在学中にプロデビューしていますよね。イラストレーター志望者の進路案として大学と専門学校がよく上がりますが、どちらがいいと感じますか?
その前に、私がなぜ専門学校を選んだかというと専門学校で学べる学科が自分の学びたい絵とマッチしていたからですね。ですが、美大に進学した知り合いに聞いてみると、大学と専門、どちらでも良かったのかなと思っています。
――と、いいますと?
どこに行こうとも、「やるのは自分」ですので。
私の場合、学校の課題以外に同人活動などの趣味絵をひたすら描いてきた結果が仕事に繋がってきました。その経験から絵をどれだけ描いてきたかがプロへの道だと思っています。
学校の授業は基礎が中心なので、各々が目指す道へのスキルを磨く時間が足りない状況でした。そこで学校の課題以外にも絵をガシガシと描いていかないと、目指す道まで到達するのは難しいと感じています。
そのような中、同期の人達は40人ぐらいいて2、3割がクリエイティブ系のお仕事に就いたと思います。その内、私と同じ「漫画・ゲーム・ラノベ系のイラスト」を描いているのは2、3人ですね。だから、どんな学校へ行っても、自身が「どれだけやるか」だと。
フリーイラストレーターへ導いた最初のモチベーションは「人気になりたい」
――その後、卒業してそのままフリーイラストレーターになったとのことですが、会社員になろうと思わなかったのですか?
私は当時、ゲーム会社を中心に志望していましたが、フリーイラストレーターの道も並行して考えていました。そのような中で、在学中から仕事が来るようになったのでフリーの道を選びました。
あと当時の私は「人気になりたい!」が大きなモチベーションになっていて、フリーの方が注目を浴びることが多い印象でしたので自分の絵を見てもらうには最適な進路だと思っていました。
フリーイラストレーターになって気づいた「趣味絵」と「仕事絵」の大きな違い
――実際に憧れのイラストレーターになって、イメージしてたこととギャップはありましたか?
自分の好きなものを描く「趣味絵」とオファーがあって描く「仕事絵」があることを知りました。このふたつは同じ絵ではありますが、重視すべきものが全く異なります。
仕事絵はクライアントから依頼されて描いているので、出来る限りクライアントが求める100点に近づけるため、様々な仕様に対して高いクオリティを出すことが重視されます。
対して、趣味絵の場合は「自分の満足感」を満たすことが大切だと思います。
趣味絵を描く理由って
1 ただ描きたいものがある
2 魅力的な絵を描いて人に褒められたい
3 イラストの仕事に繋げたい
の3つかと思いますが、特に1と2は「自分の満足感」を満たしてくれます。仕事絵だと満足感のある絵を描く機会が中々ないので、趣味絵を描くことによって絵を描くのを嫌いにならないようにしています。
――それでは、フリーランスになって必要だと感じたことはなんですか?
フリーランスにとって必要なことは商業的に成功したい意識が大切かなと。絵でお金を稼ぐという意識が自然に根強いていると、絵描きのプライドが邪魔しないので成功への近道になると思います。
――フリーランスに向いていない人もいるのでしょうか?
フリーランスに向いてない人は絵でお金を稼ぐことに無関心な人かなと思います。やはり、フリーって働いた分だけ収入になるので、売上を上げることに無関心だと長期に活躍するのは厳しく感じますね。
つまり、自分のこだわりを突き詰めるか、多くの人に好かれる絵を意図して描くか、自分の理想と現実の暮らしを照らし合わせて進むべき道を決めたほうがいいかと思います。
楽しいのはラノベ、生活の軸はゲーム、ロマンがあるのは漫画
――デビューして5年。仕事は漫画、ゲーム、ライトノベルと幅広く制作されていますよね。中でも特に好きな仕事はなんですか?
一番楽しいのはラノベですね。
キャラに演技させるのが好きで、挿絵の絵を描くのが大好きなんですよ。あと、原作の設定に合わせて読者が想像するようなキャラに仕上げるのも好きなんですよね。オタクになったきっかけがラノベにハマったことなので憧れがあったのも強いです。
収入も表紙や口絵、モノクロ挿絵複数点で二桁万円入るので、まとまった額になるのもいいですね。また、巻数が続くと継続発注されるので、その分、収入にも繋がります。ただ、多くの会社ではイラストを買い切るので印税はないです。
ラノベと同じぐらいに漫画制作も楽しいですね。イラストと違った楽しさがあります。
私の場合実績もないので1ページ辺り、1万円いかない程度ですが、イラストの仕事と違って細かな指示書もないので、編集者の方と相談しつつ自由に作ることが出来るのが楽しくて仕事が来ると受けたくなりますね。
ただ、漫画やラノベの仕事は頻繁に来るものではないので別の仕事で生計を立てる必要があります。それが「ゲームイラスト」です。
一枚絵で一桁万円ですが発注数が多く、複数枚をスケジュール調整しながら描くと良い感じに稼げます。
フリーイラストレーターの年収は○○○万円
――生活の軸となるゲームイラストは一枚あたりどのくらいの時間を掛けて描いているのでしょうか。
デザイン含めてラフが7、8時間、線画2、3時間、塗り6時間ぐらいで、1.5日で一枚ぐらいですね。ラフが遅いという自覚しているので短くするのが今後の課題です。やはり、フリーランスなので早く描いて、量をこなしていくのが重要ですね。
――では専門学校卒業して5年たった今、気になるフリーイラストレーターの年収ってどのくらいなのでしょうか? 転職サイトでは、25歳の平均年収が329万円とありますが。
収入は同じぐらいですね。税金を引くと平均年収より低くなりますが。ただ、自分の頑張り次第で変化しやすく、生活も自由なので、フリーイラストレーターという仕事は自分次第で良いワークライフバランスにしやすいところが魅力のひとつです。
イラストレーターになりたい方へメッセージ
生活面や稼ぎなど現実的な考えを持ったうえでなお、イラストレーターという職業で生活をしたい!という方には是非オススメです。
アルデヒド プロフィール
イラストレーター。『うーちゃんの小箱』(角川スニーカー文庫)、『異世界料理バトル』(Mノベルス)の表紙及び挿絵担当。ゲームでは『政剣マニフェスティア』(テクノード)「ユーリア・アベ」のキャラクターデザイン、『戦国武将姫-MURAMASA-』(Silicon Studio Games)「西笑承兌」のキャラクターデザイン、『なまラブ』(oct works)の原画担当。漫画では『いろはステーション』(まんがタイムきららキャラット8月号、9月号/芳文社)、『STEINS;GATE 0 電撃コミックアンソロジー』(電撃コミックスEX)など幅広いジャンルで活躍している。
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