背景資料をアレンジしよう!背景ラフの描き方講座 これで「学校の校門前」の背景イラストが描ける!~レイアウト編3~
2018.05.29
「学校の校門前」のような、屋外から見た施設を例に背景画の制作手順をご紹介するシリーズ。前回は、写真からラフを起こす方法をご紹介しました。
第四回となる今回は「線画」です。前回、描いたラフをもとにクリンナップしていきます。
クリンナップはラフの線をきれいに引き直す作業ですので、ラフで構造・デザインをまとめることができていれば、それほど難しいものではありません。
パース定規など、ツールの機能を有効に活用して効率的に制作を進めていきましょう。
▼目次
SAI2の「ペン入れレイヤー」を使ったクリンナップ方法
各モチーフの線画テクニック
路面の舗装や縁石
樹木
柵などの奥が重なっている部分
SAI2の「ペン入れレイヤー」というベクター線を描ける機能を使って、綺麗な線画(清書)に描き直していきます。
ペン入れレイヤーで線を描くときは、上のように線を少しはみ出すように描いてしまってもOKです。
通常のレイヤーであれば、後で消しゴムツールを使って、角を消して整える必要がありますが、ペン入れレイヤーでは、「修正液」ツールを使うことで、簡単に形を整えることができます。
修正液ツールを選択し、下部にある「消去の延長」を交点までに設定しておきます。
この設定で、線のはみ出ている部分をクリック(もしくはドラッグ)すると、自動的にほかの線と交わっているところまで消去されます。この機能を使うと、角をしっかりと描くことができるので便利です。
門壁や校舎など、垂直平行がはっきりしているものはパース定規を使用して描いたほうがよいのですが、路面の舗装や縁石部分など、劣化したりして形が崩れているものについては、線画不規則なのでフリーハンドをオススメします。
△門壁と手前の歩道部分を描いた状態
樹木の線画を描くときには、特に幹枝の描き方に気をつけましょう。
幹は先端に向かって徐々に細くなっていくので、途中で太くなるように描くと不自然に見えます。また、幹は曲線的に描くとフニャフニャしたものに見えてしまいます。直線的につなげて描いていったほうが力強い印象になります。
ラフでは、樹木の下側に斜線を引いて陰影を表現していましたが、陰影の線は色塗りのときに邪魔になってしまいます。クリンナップの際には線画のみで描くようにして、斜線は入れないようにしておきましょう。
線画だけでは立体感がつかみにくいようであれば、レイヤーを分けて薄く塗るなどして影面を作ってみてもよいでしょう。
△校門の奥側、植え込みなどを描いた状態
屋上などにある柵は、重なって見えている状態です。これを1枚のレイヤーですべて描き込んでしまうと、細かくなりすぎてしまうので、手前と奥の柵にレイヤーを分けて描くようにします。
レイヤーは柵を上に、奥のものを下に配置しましょう。奥の柵は手前と重なるように描いておき、手前の柵との重複部分は、レイヤーマスクで非表示にしておきます。
柵は太い線で塗りつぶしてしまっても構いません。ただし、この方法だと重なっている部分がすべてシルエットになってしまうので、手前と奥で色合いを少し変えて、色合いの差で面の向き・重なり方を表現したほうがよいでしょう。
△クリンナップ完成
クリンナップまで進めてしまってから構造やデザインの変更を行うと、二度手間になってしまいます。レイアウトを制作するときは、ラフの段階でディテールやデザインを決めてしまうことが重要です。
レイアウト編は今回で終了、次回からは彩色編がスタートします。まずは彩色の手順とポイントについて解説していきます。
これら背景イラストは自著である『背景CG上達講座』(翔泳社)に詳しい解説がありますので、よろしければそちらもご参考下さい。
▼『背景CG上達講座』
https://www.shoeisha.co.jp/book/detail/9784798137568
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フリーランスのイラストレーター。専門はゲーム・アニメの美術設定、背景イラスト制作を手掛けています。イラスト制作業務のかたわら、専門学校で背景イラスト・アートワークの講義を担当。
著書に「背景CG上達講座」(翔泳社)。講師としては、岩崎学園横浜デジタルアーツ専門学校非常勤講師、専門学校東京ネットウエイブ非常勤講師、バンタンゲームアカデミー講師を勤めています。