読者を飽きさせない演出テクニック カメラワーク入門①「カメラサイズ」 ~コマとカメラサイズを考えよう!~
2019.06.25
今回は“カメラワーク”の最終回となります。
“カメラワーク”には3要素と言われる
がありますが、今回は「カメラアングル(カメラの角度)」をわかりやすく紹介しますので、人物に対するカメラの角度を意識してゆきましょう。
前回、前々回の「カメラサイズ(被写体の大きさ)」「カメラポジション(カメラの高さ)」も合わせてご覧下さい。
▼目次
カメラアングルとは被写体に対するカメラの角度のことを指します。
「カメラサイズ」が人物の感情を追い、「カメラポジション」が人物がその場にいる状況下を説明するのに対し、「カメラアングル」はそのふたつを増幅する効果があると考えていいでしょう。
『人物の感情と状況下をより増幅する角度』を考えて最適なアングルを選択したいものです。
被写体を見下ろす角度からカメラを構えるカメラアングルです。
人物の卑小感があり、哀れで弱いという雰囲気を増幅させます。バストサイズより大きめに撮る場合は見下ろしたような効果があります。
カメラを水平にしてカメラを構えるカメラアングルです。
基本であり安易で深い意味を持ちません。標準的で安定感はありますが、多用すると平凡な構図ばかりになるので注意が必用です。
被写体を見上げる角度からカメラを構えるアングルです。
大きさを強調し尊大感や恐怖感をあおります。建物や怪獣など大きく見せたいとき、人物に威圧感を増幅させたいときに使います。
<a図><b図><c図><d図>はキャラクターのバックに、同じ背景の略図をアングルを変えて描いています。
通常は<a図>のように水平アングルで描くことが多いですが、<b図>のようにあおりで描くと背景に迫力が出て、キャラクターには尊大な効果が現れます。
また<c図>の様に魚眼レンズの効果を加えると奇怪な感じが出せ、<d図>のようにE.L(アイレベル:カメラの高さ)を斜めで取ると非日常的な演出がプラスされます。
場面の状況に合わせて効果的に使ってみましょう!
下の左右の図案はキャラクターのバックに同じ3つの建物の略図を配置を変えて描いています。
どちらがよりカッコよく見えるでしょうか?
右の方がカッコいいという思う人が多いと思います。
必ずしも左の図案が間違っている、という訳ではありませんが、右の図案はキャラクターと背景の描線の位置に細心の注意を払って配置した図になります。
ポイントは二人の目線にかぶっている建物をズラして、見やすい空間を作りたかった、ということに尽きます。
また左のキャラクターの頭の真ん中に建物の主線がかかっているのも気になるので、左右の建物もズラしてバランスを取っています。
実際に映像を撮影する際には、このように背景の位置関係や大きさを変えることは不可能ですが、一枚絵やコマの中の作画を考えたときにはいかにキャラクターをカッコよく見せるかがとても大切です!
キャラクターとその他の造形物との位置関係を調整して、ベストな構図を考えましょう!
全3回に渡って解説してきました“カメラワーク”講座はいかがだったでしょうか?
「マンガを描いてみたけど、どのコマも顔のアップや腰から上の絵ばかりになってしまう……」なんて方。「どのページも似たような構図ばかりで、単調で面白みがないんじゃないかな……」と悩んでいる方。
を常に頭に置き、ネームの段階から常に読者を飽きさせない演出を意識して、面白みのある画面作りを心がけてゆきましょう!
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複数の専門学校にてマンガ・イラスト学科をプロデュース。多くのマンガ家・イラストレーターを業界に輩出している。BS11で放映された『ゼロから始めるマンガ上達塾』ではKAN塾長として出演。 著書に「マンガベーシックテクニック」「なぞって上達 マンガ 手と足の描き方」がある。