室内イラストに挑戦しても、どこか物足りないと感じたことはありませんか?パースを理解して背景の骨格が描けるようになったら、より立体感を感じられるように肉付けの表現ができることが大切です。
私達が見ている数々のモチーフには厚みがあり、そのディテールを理解することで、絵に立体感を与えることができます。今回は一般的な室内背景を例に、立体的な背景を描くコツをご紹介します。
▼目次
モノの「厚み」について
床と壁の線だけあれば空間が描けます。しかし、より立体感を出したい場合、そのフレームのままではやや平面的で寂しく、サッパリとした印象です。意図的でない場合はチープに見えることも。
こちらはさらに描き込んだものですが、立体感を出すために加筆しています。このふたつの絵の何が違うかというと、「モノの厚みを意識しているかどうか」です。
細かな部分ですが、細部を知ってこそリアルさに繋がります。パースはあっているのにいまひとつ……という場合は「厚みを足すこと」が重要です。
立体感(厚み)ある室内背景の描き方
具体的に、各パーツがどのようになっているのか、どのように描くのかを見ていきましょう。
A)ドアの描き方
ドアは壁にペタっと、くっついた平面的な絵を描きがちですが、ドアと壁が真っ平らになることはありません。
壁とドアは全く同じ厚みではないからです。ドア枠は壁より厚く、ドア本体は壁より薄いです。この厚みの違いを表現することで立体的になります。
ドアと床の境目は真っすぐな線にはならず、凹凸があります。絵は木造の壁ですが、コンクリートや石積の壁ではもっと壁が厚くなります。壁からどれだけドアを控えるかによって、壁の重厚感も表せます。
そしてドアノブは、握り込む隙間ができるように描きます。
ドアノブもその扉の情報の一部です。平べったいままだと引き戸のようにも見えてしまうので注意しましょう。ノブを描くことで開き戸ということが伝わり、平面的になりがちなドアが生きています。
B) 窓の描き方
窓もドアと同じく窓枠と壁の厚みを考えることが大事ですが、どのように開く窓なのかによって描き方が変わってきます。
この簡略的な窓の線から、二通りの厚みの与え方があります。開き窓はガラスが重なりませんが、引違(ひきちがい)窓は一部ガラスが重なり合います。開き窓は小さな窓によく使われます。大きな窓になると引違窓が主流です。一般的な引違窓の構造を見てみましょう。
ドアと違うところは、壁がより分厚いということ。基本的に室内ドアがつく室内壁は薄く、窓がつく外壁は厚めです。
窓枠と窓ガラスの描き方ポイントを押さえておきましょう。
C) 床の描き方
床は平らなものなので、厚みとは無縁に思えるかもしれませんが実はちゃんと凹凸があります。
フローリングやタイルの目地を描いたり、目地の溝に沿ってハイライトを入れるだけでも立体的になります。
キレイさや高級感を出したいときはフラットに。目地の線を途切れさせずに引きます。ラフさや古さを出したいときはフローリングやタイルもガタガタになるよう描きます。凹凸のある床はタイル一枚ずつ描く気持ちで、やや線に強弱をつけたり重ねたりすると雰囲気が出ます。
さらに、どの素材も同じ調子で線を引くと画一的な印象になります。カーペットなどやわらかい素材は線のタッチを点描や途切れたラフな線に変え、素材感を表現しましょう。
また、床と壁の間には巾木(はばき)という部材があります。小さく地味ながら実は内装の雰囲気を大きく左右します。
住宅では主に木製で少し厚みがあるものが主流です。店舗などでは、薄いステンレス製やビニール製のものなどが使用されており多様です。巾木がない仕様もありますが、その場合床と壁が交わる角は僅かな隙間(あそび)ができます。
巾木を描くと床面にリアルさが出てきます。この線を一本引くだけで寂しかった床面を華やかにできます。
そして床に段差ができる部分には框(かまち)という見切(みきり)材が入ります。
厚みのあるフローリングをバスっと切ったときの断面を隠すためのものです。玄関には必ずあるので見てみましょう。細かいですがこのような部材を描くことで「構造を理解している絵」になります。
以上が前編です。後編は近日公開予定。
著・画 mig
Twitter:@to_to_i