服のシワの描き方メイキング
2020.04.17
人物制作において、流れるような動き、自然で説得力のある動きを表現する必須ポイントが「服のシワ」です。素体の状態でどんなに良い形がとれたとしても、まとっている衣装がパッとしない仕上がりになってしまったら残念です。服のシワと言っても、材質、サイズ感によって様々な違いがあるので、一つひとつ見ていきましょう。
▼目次
まずは分かりやすいところで、腕周りのシワから見てみましょう。
ポイントとなるのは関節部分です。関節の動きにより布地が引っ張られたり、たわむことでシワができます。例えばワイシャツのような布地はシワができやすく、腕に注目すると肩や肘を支点にシワができます。特に肘はキャラクターを動かす上で、良く動く関節なので、シワを上手く描けると説得力のある表現ができます。
次に、色を塗る際の影の落とし方を見ていきましょう。右上に光源があると仮定して塗ります。
シワに影を落とすときの考え方として、「シワは凹凸である」ことを意識しましょう。影は凹部分にできる為、そこに影を落としていきます。
慣れない頃に、いきなり細かく凹凸を追っていくと光源を見失うケースがあるので、全体的にざっくり影を落としてから布の凹凸を追っていくと表現しやすいと思います。
次に女性の胴体を作例に、シワの表現を見ていきます。特に胸回りの表現は大変繊細なので、シワの描き方には気をつけてください。
ピッタリとした薄手のチューブトップです。
ピッタリとしているので、布地のたわみができません。シワは胸下、ウエストのくびれ部分に多少入る程度です。
ドレープ生地です。全体的にゆるゆるとしておりたるみによるシワができやすいです。
胸の形状がわかる程度にシワを入れるとイラストとしての見栄えがいいでしょう。実写ではほぼ胸の線はドレープに消されてしまいますが、あえて胸のシワを入れることでスタイルが良く見えます。
艶のある硬めの生地です。硬さを表現する際は、シワはあまり入れない方が質感が出ます。
ぴったりしたニット生地です。ニット感を出すため、影になる部分に線を多めに描き込んでいます。シルエットは柔らかく丸くなるように素体に沿わせました。
これらの作例を元に影の落とし方を見ていきます。今度は光源を左上に設定して塗りました。こちらも凹凸を意識して影を落としましょう。
注目するのは胸の部分の影の落とし方です。胸は球体であることを意識して影となる部分を塗ります。慣れていないと、影を落とす部分を悩んだ末、コントラストの弱いぼんやりした影を描きがちなので、まずは思い切ってガッツリと影を落とすのがコツです。
ぴったりした布の場合は、ほどほどに筋肉を拾うとぴったり感が出ます。
次はスカートやパンツです。スカートの場合は服の中に「腰と足があること」をしっかりイメージして描かないと、スカートから出た足が胴体とチグハグになり不自然に見えます。ですので、描く前に布の中の素体を必ず描きましょう。
よくある女子高生の制服のスカートです。
独特の厚みと硬さ、折り方があるので実写の制服(できれば実物)をよく見て確認できると良いです。折り目一つひとつのディテールを丁寧に描きましょう。
ぴったりしたタイトスカートです。足の前後感を出すために、付け根周辺のシワの描き込みを意識しましょう。
ドレープのロングスカートです。こういった形状の場合、足の動きが見にくいのですが、キャラクターの動きをみせる為に、なるべく足に沿ったドレープを作るとイラスト映えしてきます。
タイトめなパンツです。パンツの場合は引っ張られる場所、溜まる場所がはっきり見えてくるのでシワのごまかしが効かないです。シワができる支点を決め、くどくなりすぎない程度にしっかりシワを描きましょう。
これらの作例を元に影の落とし方を見ていきます。光源を左上に設定して塗りました。
考え方は先程と同じで、光が当たる部分(凸)、落ちる部分(凹)の境目にはっきりと影を落とすことが立体的で自然に見せるコツです。全体的にぼかさないようしましょう。
以上がシワを描くときに意識するポイントです。
服のシワと一言にいっても様々な材質、形状、パターンがあるので事前に決めてから描くのがおすすめです。そして、シワの奥には必ず人体があることを忘れずに、適宜デフォルメしながらカッコいい人物を目指しましょう。
フリーのイラストレーター。主に広告系イラストとソーシャルゲームイラストを制作させていただいております。
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