イラスト講師・お絵描きYouTuberをしている浅利治武です。です。今回は絵が上手に描けなくて悩んでいる方に向けて、上達するための考え方のひとつを紹介していきます。
今回のテーマは「造形描画」です。
さて、私は「絵を描くことをキャンバスの中で行う粘土細工である」と考えています。イメージの力でキャンバスの中へと手を差し入れ、キャンバスの中に置いた塊を造形するかのように絵を描く。
私は、この絵の描き方を造形描画と呼んでいます。
この造形描画のコツは、最初に描くアタリの丸を立体だと思い込むところにあります。立体の塊をイメージの力で段階的に造形し、意味を持った立体へと昇華させるのです。
▼目次
フィギュアの造形師は絵が描ける
こういう話を聞いたことはありませんか? フィギュアを造る人は絵が描けると。
実際、造形師に絵を描いてもらうと、さらりと立体的に素晴らしい絵を描いてくれました。
なぜこのように簡単に描けるのかというと、絵を描くときにとても大切な2つの要素、シルエットと構造の両方について理解が深いためです。このシルエットと構造の両方を足したものが今回お話する造形描画の造形となります。
塊とは何か?
造形描画の考え方はキャンバスの中に置く塊に集約されます。
リアルな造形において塊とは、体積と重みを持った物体です。造形描画においての塊とは、キャンバスの中に描くアタリのこととなります。
しかし、普通に描くアタリとは違い、以下の2つのルールがあります。
- アタリの丸は必ず閉じる。
- アタリの丸には必ず影をつける。
アタリは立体の塊
アタリの丸を必ず閉じる理由は、丸を閉じていないと、ただの曲がった線にしか見えないためです。
そして影をつける理由は、立体を塊として感じやすくするためです。影をつけることで「アタリは立体の塊である」ことが分かってきます。
つまり、造形描画はこの立体のアタリから描き始めることを主体としています。
造形描画のやり方
実際に造形描画を行っていく手順は以下の通りです。
- 閉じたアタリを描く
- アタリに影つける
- キャンバスの中で造形を行う
1と2を行うことで、キャンバスの中に塊を置くことができます。次に3ですがこれは少し準備が必要です。これを行うにあたっては、次のようなイメージを持って下さい。
- キャンバスは白い壁ではない
- キャンバスには無限の奥行きがある
- イメージの力でキャンバスの中へと手を差し入れることができる
「二次元へと入り込むのだ!」と言ったら分かりやすいでしょうか? そういうイメージを強く持って頂きたいのです。私はこの二次元へと入り込むイメージを「空間触覚能力」と呼んでいて、このイメージする力が造形描画を行うかなめとなります。
造形描画:その1「立方体」を描いてみよう!
さて、イメージの力でキャンバスの中へと手を差し入れる準備が整ったら、いよいよキャンバスの中で造形を行ってみます。なにも難しいことはありません。次のようにイメージを一気にキャンバスへと投写するのです。
- キャンバスの中へと手を差し入れるイメージを行う。
- キャンバスに差し入れた手でキャンバスの中に置いた塊に触れる。
- イメージの力をフル回転させ、イメージの手を操って形状を変化させてあげる。
キャンバスの中で塊が意味のある形へと変化し、目的の造形が出来上がっていく。これが、造形描画です。
Tips:イメージの力で造形する
造形描画で理解して頂きたいところは、立体としてキャンバスに誕生した塊が、立体のまま、意味を持つ立体へトランスフォームしていく点です。
まるい塊がトランスフォームしていく様子を頭の中でイメージできれば、塊から意味を持つ立体を生み出せます。
つまり、キャンバスの中で造形するには、イメージする力がとても大切だということです。塊に塊をくっつけたり、塊に穴を開けてみたり、イメージする力を高めるトレーニングをしてみて下さい。
造形描画:その2「自動車」を描いてみよう!
次に、造形描画で自動車を描いてみます。この、造形描画の素晴らしいところは、描き始めの塊は適当でよいという点です。
本当に適当でよいので、絵を躊躇なく描き始められます。最初から難しいものを描こうと思う必要は全くありません!
まずは幾つかの塊をキャンバスの中へ置きます。その後、イメージの力を使い、段階的にキャンバスの中に差し入れた手によって造形を行い、目指すかたちへと近づけて行きます。
コラム1:絵が下手って何でしょう? その理由と改善の仕方
絵が下手と言われるその理由と改善法を知れば絵が上手に描けるようになります。
- 絵が下手に見える理由のひとつは「造形が不格好」であるということです。
- 改善法は「造形を修正」することです。
線を何度も描き直しているのに、なぜか絵が良くならないことってありますよね? こうなるのは、修正しようとする絵の立体構造=造形が見えていないからです。
絵を良くするには線を修正すると考えますが、造形描画においては線を修正するのではなく、造形の歪みを見て造形を修正することを心がけます。
以下の手順は下手と言われる立方体を上手いと言われる状態へと修正する手順についてまとめてみました。
コラム2:絵を塊として見ることの利点
塊の立体的形状は記憶に残りやすいという利点があります。
この塊というイメージは、記憶するときにとても役立つ考え方です。例えば下図のように石ころを線で覚えようとすると9本の線の長さと角度を覚えなければなりませんが、塊として記憶するには立体の塊の形状をたった1つ覚えればいいだけです。
造形描画とシルエット
造形描画によって造形の不格好をカッコよくすれば上手な絵が描けるという道筋がみえてくると、シルエットにもこだわりが湧いてきます。
シルエットはいくつかの塊をキャンバスの中の空間に並べたり重ねたりすることによって造られます。
シルエットをカッコよくすることが絵をより良いものへと繋がるため、塊と塊の関係が創り出すシルエットがカッコよくなる空間的配置を考えていきましょう。
まとめ
塊や造形描画というものを難しく考える必要はありません。
造形描画とは、
- 影がついたアタリを描くこと
- キャンバスの中にイメージの力で手を差し入れること
- キャンバスの中で塊を段階的に造形していくこと
です。
これらを知って、自分の感覚とすること。キャンバスの中で塊を造形するという感覚を持てれば、何でも簡単に描けるんだ!という自信に繋がります。そして絵は難しい物ではない!という確信が自分の中に芽生えることでしょう。
著・画 浅利治武
お絵描き私塾のイラスト講師・お絵描きYouTuberです。
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