イラストでの金属の表現って、難しいですよね。「金属はハイライトと強いカゲをつければそれらしくなる」と理解していても、実践してみると、いまいち金属らしくみえない……という経験はありませんか?
その方法で間違いはないのですが、さらに要素を追加して金属をよりカッコよく見せるテクニックがあります。
今回の講座は、金属の塗り方が分からない方、金属の質感表現がイマイチ掴めていない方に是非読んでもらいたい講座です。
金属塗りの失敗例
まずは失敗例から見てみましょう。下図は過去に筆者が制作した金属のイラストです。
金属=「カゲ」+「ハイライト」の意識で塗っていたため、金属のテカリ感が欠けて光が濁った印象です。金属特有の「硬さ」があまり表現できていないようにみえます。このように金属の塗り方は一筋縄ではいきません。
物体の立体感を表す鍵 「陰」と「影」
物体に落ちるカゲには主に「陰」と「影」の2種類が存在します。
- 陰:環境光によって光源とは反対側にできるカゲ(グラデーションのカゲ)
- 影:物体が光をさえぎってできるカゲ(はっきりとしたカゲ、落ち影)
のことです。
慣れていないと、この2種類のカゲを同じものだと思ってしまうことが多いです。
そのため、カゲになっている部分の色の強さが同一になってしまい、極端に濃いカゲや面積の広いカゲを描いてしまいます。
じっくり観察してみるとそれぞれの特徴が見えてきます。
陰は色が明るく、面積が広いです。
一方で、影は色が暗く、面積が狭いことがわかります。
質感によって変化する「ハイライト」と「反射光」
カゲだけではなく、光も2種類あります。
- ハイライト:もっとも光っている部分(はっきりした光)
- 反射光:地面から跳ね返った光で明るくなる部分(グラデーションの光)
初心者はハイライトと反射光を同一の光と捉えがちです。
ですがよく見てみると、ハイライトは光の色が強く、面積が狭いのに対し、反射光は光の色が弱く、面積が広いです。
大まかですが、このように分けて考えると要領をつかみやすいですよ。
以上のことを踏まえて、「カゲ」と「ハイライト」だけの金属と「陰」+「影」+「ハイライト」+「反射光」の金属を比較してみました。少しの知識を追加するだけで随分印象が違ってみえます。
金属の塗り方を実践してみよう
ここからは、金属表現を意識してどのように制作をしているのかをご紹介します。
今回は『CLIP STUDIO PAINT』を使用します。
1.光源を決める
始める前に光源の位置を決めます。これは金属だけではなく、物体を描くために必ず決めなければならないことです。
2.陰をつける
最初にベース色を置いて、次に陰(グラデーションのカゲ)を置いていきます。
エアブラシでささっと色を軽く乗せるのがコツです。
3.影をつける
次に影をつけます。影ははっきりと落ちるので固めのブラシで塗ります。影のキワはぼやけるので柔らかいブラシ又は消しゴムでサッと削って馴染ませます。
4.ハイライトを付ける
ハイライトは加工(発光)モードを使います。影と同様にハイライトもはっきりとしているので固めのブラシで塗ります。光のキワの部分も柔らかいブラシ又は消しゴムでサッと削って馴染ませます。
金の場合ですが、あまり白とびしすぎると質感がでないので、明るくて彩度の高い黄色になるように色選びをします。
5.反射光をつける
最後に反射光をつけて完成です。レイヤーモードはオーバーレイやスクリーンを使います。
色が強くなりすぎないように不透明度を下げると、程よく馴染みます。
金属の塗り方まとめ
以下の3点を押さえると金属を表現しやすくなります。
1.金属を観察し、光とカゲの1番はっきりしている部分を見つける
2.ハイライトと、影の面積は小さくする
3.明るさと面積は比例させない
明るさ:ハイライト>反射光(グラデーション)>ベース部分>陰(グラデーション)>影
面積比:陰(グラデーション)>ベース部分>反射光(グラデーション)>ハイライト・影
ちょっとしたことが質感表現では重要です。光と影の関係が理解できると、より金属表現に説得力が増すので、是非試してみてくださいね!
[著・画:柳葉キリコ(やなばきりこ)]
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2015年12月からフリーランスのCGイラストレーターとして活動。
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