透明水彩絵の具を使いこなす!目の塗り方講座
2017.03.06
いちあっぷ講座をご覧いただいている皆さんはデジタルイラスト制作に慣れ親しんでいる方々が多いと思いますが、アナログイラストもまだまだ人気があり、その中でも透明水彩を親しむ方は多く、ポピュラーな画材として扱われています。
ですが、定番ではあるものの色の使い方、ぼかし方、そして用意する画材との相性など、意外と覚えたいポイントは多く、慣れ親しむにはハードルが高いです。それらを踏まえて、透明水彩の使い方をメイキング形式でご紹介します。
この記事を通して、一度水彩から離れてしまった方にもう一度やってみようかな? と思っていただければ幸いです。既に水彩を使っている方も是非最後までお付き合いください。同じ画材でも塗り方に個性が出やすいので、きっと楽しんでいただけると思います。
▼目次
まずは使用する画材について紹介します。主な画材は3点。画材屋に行けば揃えられる道具です。
まずは絵の具。今回のメイキングでは透明水彩絵の具を使います。メーカーはW&N(ウィンザー&ニュートン)の48色セットに、ホルベインとクサカベのお気に入りの色を追加したパレットを使用しています。
各メーカーについては、以下の理由から使っています。ご参考までに。
ホルベインは比較的安価かつ初心者向きで、まずお試しということであればホルベインの24色セットがオススメです。W&Nに変えてからも、ジョーンブリヤンやラベンダー、ライラックあたりの色味が好きなので使っています。
発色はホルベインと比べてはっきりしています。特に黄色と青が強いかなと思います。ただ、そこそこに良いお値段なのと、思った以上に色味がパキパキなのでホルベインである程度水彩に慣れてから使うのがオススメです。
ミントグリーン、グラスグリーン、アクアブルーを使っています。「渋めの発色」と表現する方が多いようで、渋い緑系と不透明色ならクサカベをオススメします。
他にも、月光荘、マイメリ、シュミンケ、ダニエルスミスなど個性的な絵の具が多く、水彩を使っているうちにどんどん欲が出てくると思います。あれもこれも試したくなってくるのがアナログの魔力ですね。
筆は大きさに分けて、主に以下の3本を使用しています。
今回は「ファブリアーノエキストラホワイト 極細目」を使いました。
私みたいに描きこみが多く、色を何度も重ねる塗り方なら表面の強い
もオススメです。
水彩紙は値が張るものも多いですが、ポストカードサイズがお手頃な価格で出ているので、いろいろと試して好みの滲みや色(マットサンダースなどは温かみのあるピンク系の水彩紙なので着色の際の色みが変わったりします)を見つけましょう。
▲左からラフ1、ラフ2、線画
ラフには百均の画用紙を使います。ざっくりとラフを描いたら裏返してトレスしつつ、少しデザインを詰めたラフを描きます。この時点ではまだ細かい部分は決めません。
ざっくりラフの段階で画面下に花を描くつもりでしたが、巻き髪を描きたかったので人物のみの構図に変更しました。また、ボンネットが入りきらなかったので、トレスの際に少しずらしています。
目と手は0.2㎜のシャープペン、その他は鉛筆を使用します。柔らかく見せたい部分は細く、しっかりした素材と髪の影になる部分は太目に強弱をつけて描くためです。
トレスの方法はカーボン紙を使うものや、鉛筆で紙の裏を塗って疑似カーボン紙を作る方法などがありますが、すぐに紙を汚してしまうのでトレス台を使っています。
今回、使用する色を紹介します。中でもネイプルスイエローは割と万能なので一本あるととても便利です。
※パレット内で偶然できた色を使うことも多いので、メイキングでは色名のみで説明します。
肌のベースを作るために、
を混ぜた色を全体に塗り、乾く前に
をランダムに置きます。
色味は均等にせず、ムラが残るように濃度を変えて、ポンポンと色を叩くように乗せると良いでしょう。光の当たる部分にはネイプルスイエローを多めに置くと柔らかい印象に仕上がります。
頬は
の混色で赤みを描いていきます。
タミヤモデリングブラシで細く、漫画の表現のような斜線を入れるのですが、このときも均等に入れず、濃さのムラを出すようにしています。この段階で二重の影と上唇のアタリもついでに描きました。
同じ色を薄めに溶いたものを上から乗せてぼかします。エッジ(絵の具が乾いたときにできるフチ)が残らないように、周りを水でしっかりと伸ばすときれいです。
影になる部分をデイビスグレーとラベンダーの混色で塗ります。
上唇を
の混色で塗り、一旦乾かしたら下唇の内側に薄く溶いたシェルピンクを乗せ、縦方向に伸ばします。このとき、はしごのように塗り残しを作っておくと唇のツヤ感が出せます。
シェルピンクが乾かないうちに、上唇と同じ色を真ん中にポンポンと乗せると、色が広がって自然なグラデーションが生まれます。最後に、唇にネイプルスイエローを塗って色味を調整します。
陰影として、ライラックをアゴに、ネイプルスイエローを目の下あたりに薄く乗せます。
鏡で自分の顔を見ると、目の下には赤みがあまり出ていないのが分かると思います。顔は上から黄色、赤、青のグラデーションを加えると自然な仕上がりになるので、ぜひ試してみてください。
仕上げとして、輪郭の頬の部分にシェルピンクをなぞるように置いて内側に伸ばします。
涙袋はジョーンブリヤンNo.1、カドミウムレッドディープの混色を下瞼の目尻に乗せたら内側に向かって伸ばし、ライラックを少しだけ乗せます。
手は、ローズマーダーを薄く溶き、指先から伸ばします。このとき、両手同時に塗らずに片手を塗った後一度乾かすと描きやすいです。
影になる部分にはラベンダーとデイビスグレーを塗るのですが、奥(この場合は指)はラベンダーを多めに乗せるときれいです。
トーンを整えるには、手と顔全体にジョーンブリヤンNo.1をなでるように塗ります。余分なエッジとムラを強く出しすぎた部分を周りになじませることを意識しました。
顔の周りの髪にも広げると、髪を塗ったときに馴染みが良くなるので広めに伸ばしておきましょう。
これで肌の塗りは以上です。
仕上げに再度トーンの調整をすることもありますが、それはまた今度に。
今回は肌の塗り方を説明しましたが、ポイントとしては
の3点です。
とにかく好みの肌、表情を突き詰めると肌の塗りが楽しくなって来ると思います。フェチにはゴールがないのです。
次回の記事では透明水彩を扱った目の塗り方をお届けします。
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作家。透明水彩を使った少女画を得意とする。2014年より大阪・東京での展示を中心に活動。現在、絵に関するお仕事を募集しております。