アクション系の作品を作るときに、描かせない表現の一つが「爆発エフェクト」です。
今回は爆発エフェクトを基本パターンから応用まで、さらに実際の作品作りの中でどう活かす、効果的な例題イラストを挙げながら解説していきます。
イラスト、漫画、アニメなど表現手段問わず応用に繋がります。
▼目次
爆発の基本形:4サイクルで捉えるエフェクト
まずはエフェクトの流れを追っていきましょう。爆発という現象は基本、「4つの段階で一つのサイクル」になります。
1.「起こり」
爆発した「瞬間」の状態です。
膨張エネルギーの塊みたいなものなので、フォルムは非常にトゲトゲとしています。
2.「拡大期」
大きく広がって急成長していきます。トゲトゲしいエネルギーが残っている高熱の部分と、失速して丸くなった部分の二つが組合わさっているのが最大の特徴です。爆発作画のハイライトともいえます。
爆発の成長を三次元的に表現するイメージで、いくつかの風船が同時に膨らむという感じです。
3.「クライマックス」
成長しきって、最も大きくなった状態です。しかし、膨張エネルギーを完全に使い果たしたので、少しだらけた丸のようなフォルムとなっています。わたあめのようなイメージが近いです。
4.「消滅」
ピークを迎えた後、空気中にバラけて消えていきます。
描き方は、穴を空きつつ、バラけていく感じです。すぐに消えさせずに、余韻を残した方がかっこいい仕上がりに近づきます。爆発エフェクトはタイミングコントロールが肝です。
以上のサイクルを頭に入れてしまえば、画を作成するとき「爆発がどの段階の状態か」を使い分けられます。
つまり、使える手数が増え、演出に幅が大いに広がるのです。
※アニメーションのときは、これに中を割って枚数を追加すれば完成です。
爆発のフォルムについて
爆発には色々なフォルムパターンがあります。
例えば、リアルな青年漫画ではフォトリアルな爆発、ギャグものやスタイリッシュ系ではデフォルメさせたタイプなど、これらを作品のジャンルや嗜好によって使い分けていきましょう。
周りの物体への影響を描き込み、リアリティアップ
爆発というのは恐ろしいほど急激なエネルギーの放出です。なので、爆発の威力を魅せたいときは「周りへの影響」を描き込む必要があります。
例えば、地面、建物、ガラス、トタンや車など、周りにある物を根こそぎ破壊していく感じをプラスαで出せれば、リアリティと迫力がさらに上がります。
また、細かい破片や粒子のようなものは「タタキ」とも呼ばれ、CGではパーティクルとして爆発本体とは別で処理されているらしいのです。それだけ爆発作画で描かせない名傍役でもあります。
コツとしては大きな破片はあまり遠くに飛ばさず、小さいものは逆に遠くまで飛ばすように描きこんでいきます。破片用に「別レイヤー」を新しく作ってもいいかもしれません。
実際の作品作りへの応用例
では最後に、今までやってきたエフェクトを、ストーリーの中で応用しながら簡単な短編作品を作ってみます。
今回は五コマの漫画を描きながらアクション系作品を演出する方法、パターンも同時に解説していきます。
1コマ目
インパクトを狙ったロングショットです。スペクタクルを感じさせるような狙いがあります。
爆発は起きた瞬間なので「起こり」の状態です。
2コマ目
今度は場面を変え、爆破後のビル内の様子を捉えます。ここで部屋全体を煙で埋め尽くすことでいかに先ほどの爆発規模が大きかったかが分かるという演出です。
3コマ目
ここは何かに気づく人物の絵です。こうすることで、次のコマは「この人物の見た光景」という意味合いになります。小さいので目立ちませんが、「タメを作る」「主役を引き立てる」など、重要な役割を担っているコマです。
4コマ目
一番大きなコマです。ここでは画面を覆い尽くすほどの煙と割れて落ちるガラスで1コマ目の爆発の凄さを伝えます。さらにここで遠くに煙の中に人物を置いて最後の「決めコマ」に繋げていきます。
5コマ目
ここで爆発は「消滅」の4段階目で消えつつあり、さらに「煙が晴れて主役が登場」というスタンダード演出で引きを作ります。煙だけでなく、焦げた破片も描き込んで風も表現します。
今回の講座は以上となります。このように、爆発の「4つのサイクル」と、「古典的演出」を組み合わせだけでサスペンス短編が一本作れてしまいます。
ハリウッド映画などでも爆発エフェクトは作品によっては主役ともいえる重要な存在です。ぜひこれらを使ってスペクタクルでリッチな作品作りに活かしてみてください。
著・画 セーガン
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メーカー勤務。アニメーション、漫画、講座等の自主制作活動に日々励む。ライフワークは映像学。現在絵コンテの描き方を勉強中。