説得力のあるキッチンの描き方 - 前編 -
2020.03.13
今回は説得力のあるキッチンの描き方(後編)です。前編に引き続き、キッチンの描き方に役立つ知識や考え方をご紹介します。
後編ではキッチンをより説得力をもたせる為、小物のデザインに注目して紹介していきます。
▼目次
まずキッチンは物が多いのが前提ですが、これらを見せるか隠すかを舞台イメージと照らし合わせ決めます。
調味料や調理器具、壁に掛ける収納や皿やキッチンハーブ、油はね防止ガードなどを表に出していると生活感が出ます。日常的に料理をする人のキッチンです。
これらをきれいに整理整頓させれば几帳面な人が使うキッチンだとイメージされますし、乱雑に置かれていたりシンクに洗い物が溜まっていれば、忙しい人や面倒くさがりな人物像になります。
作業台の上が見えないほどに、さらにキッチン小物以外の物(新聞やリモコンのリビング物、ペットボトルなど買ってきた飲食物)が溢れていれば、いっそ料理を全くしない人のキッチンを演出することもできます。
また、こざっぱりと何も物がないのも、キッチンを使っていないように見えます。
使う人の人物像に合わせて小物を配置しましょう。
全て収納してしまう場合はスッキリと美しくなる反面、使いたい物がすぐに使えません。
綺麗好きで几帳面な人が使うのか、たまにしか料理をしないか、別に調理をしてくれる人を雇っているような人のキッチンと印象つけられます。
後者の場合は吊戸棚が必要無かったり、アイランド型であったりと経済面とバランスを揃えます。
キッチンを構成するパーツの素材感も重要です。質感を踏まえることで雰囲気作りや生活水準の表現にもつなげることができます。
ステンレスは汚れや熱に強く厨房など本格的なキッチンに多用されます。磨かれていれば映り込みがありますので、垂直方向に反射を描き込みます。
また天然石などの場合、天板とシンクは別素材にすることが多く、シンクとの境にエッジを描きます。人造大理石は一体で作ることもあり、複雑な凹凸やフチをつけるとらしくなります。
使うタイルにもよりますがカントリー調や昭和風などレトロな雰囲気にしたいときに採用されます。角に丸みをつけて描くと素朴な雰囲気が出ます。
IHなどは五徳(ごとく)がなくフラットですが、コンロと作業台の境は少し段差をつけます。多くが強化ガラスを使っているので、映り込みを考慮します。
ガスの場合は五徳があり、これは作業台とフラットになりません。立ち上がりの立体を考慮し、ぺたっとくっついた絵にならないよう注意します。
フードも四角いシンプルなものから曲線を用いたデザイン性のあるものまで様々です。
木製の扉は、フラットですっきりしたデザインの物から凹凸や彫刻を施した繊細な物までデザイン性に富んでいます。シンプルさや簡易さを出すなら飾りのない扉、カントリーや高級感を出すなら凝ったデザインにするなどします。
また、朽ちた雰囲気にする場合は扉の建て付けを悪くし閉まりきらないようにしたり、化粧板が剥がれているようにします。
また業務用厨房はほぼオールステンレスです。これは耐久性と害虫除けと清掃のしやすさの観点から選ばれています。
日本のシステムキッチンの多くは引き出しで、扉の素材はつるっとしたパネルです。
取手はバーのようになっていたり、扉縁に手をかけるようにし目立たなくしているデザインが多くなっています。少し押す開くプッシュ式も取っ手レスにできるので見た目がすっきりします。
キッチンの足元は立ったとき、爪先で蹴とばさないように引っ込ませています。
キャビネットを床から浮かせたフロートタイプになっているものや、キッチン下に収納箱を設けず棚板のみなどにすることもあります。
以上を踏まえて作画していきます。
今回は
という人物が使うキッチンを描きます。
1.平面レイアウト
作業動線が短くなるようⅡ型の配置
2.キッチンの各ボリュームを配置する
基本的に長方形の組み合わせなので、縦横比を意識する程度で大丈夫
3.コンロやシンク、各パーツを描く
先に述べた細かなポイントを押さえながら描く。
4.演出小物やディテールを描く
キッチンの小物を配置し、木目や柄などを描く。
素材のツヤや模様を意識しながら着彩して完成です。
キッチンは身近であるがゆえに、自分の経験の範囲内でしか描けないのはもったいないことです。生活に即し様々なキッチンの使い方があることを知り、キッチンメーカーのカタログを見たり実際にショールームを訪ね、見て触って覚えるのも上達の一歩になります。作画手順だけでなく様々な角度からキッチンを知ると、描くのも楽しくなりますよ。
Twitter:@to_to_i