ドラゴンのイメージは爬虫類?鳥類?
ドラゴンはSF作品や異世界やファンタジーな世界観に欠かせない存在です。
空想上の生物は現実にいる動物をもとに描かれていることが多く、例えばペガサスとキマイラは以下の動物が参考になっています。
- ペガサス→「馬+鳥類」
- キマイラ→「ライオン+ヤギ+蛇」
では、ドラゴンは何の動物を参考にすれば良いのか?
大きな爬虫類(トカゲ)に翼を生やせばドラゴンになるのか?
彼らの元となった生物とは?
そんな疑問を抱く方は必見!イラストレーター硝子屋裕さんによるドラゴンの描き方講座です。
今回は、イラストレーター本人の描き下ろし記事!
前編では解剖学や生態の観点から考察。ドラゴンらしい特徴を押さえながら徹底解説します。
- 1.ドラゴンのイメージは爬虫類?鳥類?
- 2.動物の骨格からドラゴンの骨格を考える
という内容をお届けします。それでは前編、スタートです。
ドラゴンのイメージをラフに起こす
簡単なイメージを描き起こします。
最近流行りのシュっとしたスタイリッシュなドラゴンをイメージしています。COOL。
しかし力強さは忘れない、そんなダンディズム溢れるドラゴンを目指して。
ドラゴンは鱗などの外見的特徴から爬虫類のような印象を持つかもしれませんが、本当の所どうなのでしょうか。このラフをもとにドラゴンの元になる動物を考えていきます。
動物の骨格からドラゴンの骨格を考える
ドラゴンに相応しい骨格を考えるために、哺乳類と爬虫類の骨格の違いを見てみましょう。
哺乳類と爬虫類の骨格の大きな違いは、後ろ脚の付き方にあります。
哺乳類は体から地面に向かって真っすぐに脚が生えています。
それに比べ、爬虫類は体の横に向かって脚が生えているのがわかります。
爬虫類は移動する際には脚の筋力でお腹を浮かせて移動しますが、気を抜くとすぐにお腹が地面についてしまいます。
お腹を浮かせているだけで疲れるため、持久力は無さそうな骨格です。
これに対し、哺乳類は爬虫類ほど頑張らずとも真っすぐと立っていられ、長距離の移動にも適しています。
ちなみに恐竜の骨格は哺乳類同様に脚が下向きに生えています。
これは恐竜が「脚が下に向かって生えた爬虫類」という事では無く生物学上ではむしろ鳥類に近い生き物だということらしいです。
そのため、最近の学説ではティラノサウルスにどんどん毛が生えてきています。モフモフです。
ドラゴンのモチーフになり得る動物を比較する
今回は爬虫類(トカゲ)恐竜(アロサウルス)哺乳類(ネコ)の3種類の骨格を見てみましょう。
左から爬虫類、恐竜、哺乳類となっています。
■爬虫類の骨格
爬虫類の骨格は地面に這うような形になっています。
洞窟の奥で長い間寝そべっているようなドラゴンならありかもしれませんが、あまり素早く移動して獲物を襲うようなハンターっぽくはないですね。
■恐竜の骨格
次に恐竜の骨格はどうでしょう。
爬虫類と違いしっかりと二本の脚で立てており、かなりドラゴンのイメージに近いかもしれません。
ただ、見て分かる通りバランスを取るために重心が前方に来ています。
このバランスだと、重たい翼が生えた時にさらに前のめりになってしまいます。
すると、体の前面は隠れ、頭を下げたようなポーズになってしまうため、威圧感はあまりないですね。
■哺乳類の骨格
最後に哺乳類の骨格です。
こちらは翼が生えても重心が変わらず後方にあるため、見栄えも損なわなそうです。
これなら全ての問題をクリア出来ます。
どうやら3つの中で一番理想的な骨格は哺乳類のようです。
今回はこの、哺乳類で進めています。
また、今回はネコの骨格で説明しましたが
哺乳類の骨格であれば犬や馬でも大丈夫なため、色々な骨格を試してみましょう。
前編は以上です。
ドラゴンを爬虫類・恐竜・哺乳類を元にモチーフを考察しました。ドラゴンを描くときは世界観などの設定に合わせてデザインすると説得力のあるキャラクターが描けますね。
いよいよ後編では、前編の内容を踏まえた実践編をお届けします。お楽しみに!
参考書籍
◆HOW TO draw the DRAGON
著者:G.River/出版:ガウルの翼/2010年発行
1体のドラゴンをメイキング形式で完成まで解説した1冊。
同人誌のため、ページ数は少ないがそれを感じさせない程の情報量がある。
今回の講座の考え方において、ベースともなった非常に素敵な本のため
クリーチャーを描くにあたり、是非読んで欲しい1冊。
◆幻獣デザインのための動物解剖学
著者:テリル・ウィットラッチ/出版:マール社/2013年発行
「スター・ウォーズ」「メン・イン・ブラック」「ジュマンジ」などのクリーチャーを
生み出した著者による、哺乳類をメインとした動物学に基づく精密なスケッチ集。
通常の動物解剖学の指南書と違い、クリーチャーに転用するのを前提とした本のため
骨格からクリーチャーを考えたい人にオススメ。
◆骨格・生態・バランスがわかる‐HORSE‐やさしい馬の描き方
著者:ジェニファー・ベル/出版:マール社/2013年発行
全ての動物の基本とも言われる馬を、丁寧に解説した入門書。
英国でベストセラーとなった本書だが、待望の日本語翻訳版が登場。
◆スカル アラン・ダドリーの驚くべき頭骨コレクション
著者:サイモン・ウィンチェスター/出版:グラフィック社/2014年発行
世界の高名な博物館でさえも所有していない、珍しい頭骨を含む
膨大な数の頭骨を収めた写真集。
様々な形の頭骨は、眺めているとインスピレーションを与えてくれる。
[著・画:硝子屋裕]
pixiv http://www.pixiv.net/member.php?id=239674
幼少期に美術と出会えず、その類い稀なる才能は発揮されなかった。
国内外で精力的な活動を行っていない為、本場NYで硝子屋の名を知る者はいない。
元アートディレクター。