「詳細ラフ」でイラストの良し悪しが決まる! 美麗イラストメイキング 詳細ラフ編

「詳細ラフ」でイラストの良し悪しが決まる!  美麗イラストメイキング 詳細ラフ編

今回は「クオリティを決める構図の作り方」に引き続き、イラストレーターのHAK.さんが、イラストを1ランク良くするラフの描き方をメイキング形式で伝授します。

 

第一回の記事ではイラストのイメージ(シチュエーション)や構図を固める部分までを解説しました。大まかなラフを作ったあとは詳細イメージを詰めていきましょう。

 

前回の記事を読んでいない方は記事をおさらい。

 

 

「詳細ラフ」という工程について

詳細ラフとは「ざっくりとした画面全体のイメージ(大ラフ)」を更に細かく描き込んだ、線画手前の段階のことを指します。この工程を入れることで、より自分の中でイメージが明確になり、キャラクターや設定にブレが起きづらくなるだけではなく、物体や空間をより正確に描けます。

 

絵仕事の場合も、大ラフを提出したあとに詳細ラフを提出することが多いです。ここでクライアントが求めるイメージを確実にすりあわせることが、その後の作業でリテイクを減らすことにつながります。

構図(ポーズ)決め

前回にお伝えした絵の設定を簡単にまとめると、

舞台:砂埃が舞う荒野

場面:魔法使いの少年が魔物(敵)を倒している

プラス要素:少年には小さなドラゴンの相棒がいる

としています。これらをメインとして大まかな構図のもとにラフの完成度を上げていきます。


この段階ではエフェクトなどの要素は考えず、キャラクターに集中します。

ラフ

舞台が荒野の設定なので、砂漠のような場所をイメージしています。

 

この時点で演出要素を増やすことが構図作りのコツのひとつです。そうすると、イラストの密度が上がり見応えを増すことができるからです。今回は周囲にミイラや砂、包帯が渦巻いているようなものを追加して、演出要素を増やしました。

 

演出を加えた結果、このままの構図だと少年のシルエットの流れや動きが単調で、ポーズも中途半端に見えます。

ラフ2

そこでメインのみポーズを変えてみました。

人物のポーズにひねりを加えることによって、キャラクターのシルエットに動きを出します。これでシルエットに合わせた、画面空間の調整ができました。

捻りを加えることで動的な印象を与えることができる

少し捻りの効果について考えてみましょう。

イラスト 捻り

上の図は胴体のポーズが違う一例です。頭の位置や角度は変わっていません。

 

場合にもよりますが、左のポーズより右のポーズの方が、動作が多いため人物に動きが加わり、見応えのあるイラストに繋がることがあります。また、動きのあるポーズの方が着ている衣服に出来るシワなど、描き込み量が増えるため、密度を出せます。こういった微調整も詳細ラフの時点で整えておきましょう。

光源決め

次に光の当たる部分、陰影の大まかな位置を決めます。

 

まずは一度確認の為に、エフェクトを基準に光源を決めていきます。光源を先に決めるとイラストを仕上げる際、あまり迷わずに制作できるからです。また、暗い空間にいるイラストは暗闇を活かしてエフェクトを綺麗に魅せることが可能です。

 

今回はそういった暗闇の中の光源を強調したイラストに仕上げていきます。

ただし、メインはキャラクターなのでキャラクターにもしっかり視線が行くように光源を当てます。

光源決め

左は調整前、右が調整後のものです。あくまでキャラメインであることを意識しながら顔にもライトを当てて背景に埋もれないようにしましょう。

キャラのポーズ確認

素体を確認しながら、キャラクターの服装などがわかるように細かく描いていきます。

手足の出方

ある程度まで詳細に描いてみました。しかし、中々ポーズが決まって見えません。というのも、同じ側の手足が前に出てきているため、キャラクターの重心に偏りが出来てしまい、不自然な印象を受けてしまうからです。

イラスト ポージング

そこで、手はそのままに、脚部分を直してみました。

歩いているときに同じ側の手と脚が出ると不自然に見えてしまうのと同じように、駆け出しているようなポーズや跳んでいるようなポーズを描く場合は、歩く・走る動作の応用のようなものだと考えて貰えれば簡単かと思います。

 

普段、私達が何気なくしている動きや仕草にポーズを良く魅せるヒントが隠れていたりしますね。

配色

配色

キャラに背景とエフェクトの位置を合わせながらキャラの配色を考えていきます。

 

配色バランスはメインカラー:サブカラー:アクセントカラー=7:2:1以下を基準にして配色をすると自然に見えてきます。

配色による印象の違い

そのままだと空間がかなり空いているので、トリミングを想定しながら配色をしてみました。

左が青系で右が赤系の服を着ています。着ている服によってキャラの印象や背景との関連性が変わってくるのがわかりますね。

 

例えば、赤と青と以下の様なイメージや効果があります。

 

青系の服:クールなキャラで、背景色と色相が隣接しているので視覚的に馴染みやすい
赤系の服:活発なキャラで、背景色とのコントラストによりキャラが目立ちやすい

 

背景とキャラクターの色相や明度が同じで背景にキャラクターが同化してしまうことがあるため、カードゲームなどのイラストは背景によってキャラの配色を考える場合が多いですが、個人制作の場合は特にこだわらず、好みの配色で制作した方がモチベーション的に楽しいと思います。

詳細ラフ

最後に、手前に攻撃しているように見えたほうが、迫力があるので手前に出ている腕と手の角度を見直しました。他にも周りのエフェクトや敵のサイズ感、背景の少しずつ調整して詳細ラフが完成です。

 

次回は「仕上げ」テーマに予定しています。お楽しみに!

著・画: HAK.(はく) 

WEBサイト|https://www.artstation.com/artist/yamato3298

絵描いてます。