1UPクリエイターセレクション vol.3 - 山代 政一
2016.07.26
イラストレーター、デザイナーで活躍している山代政一さんの描き下ろし記事第3弾です。
今回も影の落ち方がよく分からずお悩みの方に打って付け記事なので、引き続きご覧下さい!
コレまでに2回、書き散らかしてきた「透視図法で描く影のかたち」ですが本エントリーをもって締めとなります、山代です。
今までのエントリーを消化していることが前提の内容となっておりますので、未読の方は以下のリンクから前2回を溶かしてきて頂けますと幸いです。
前回まではスポットライトのような、「はっきりしている光源」による影の落ち方でしたが、今回は応用編として太陽光による影の落ち方を説明します。
ちょいとややこしかった前回よりは幾らかまろやかなハズの第3回、要刮目。
今回は太陽光。考え方はほぼ点光源と同じですが、影の取る考え方が少し異なります。
右上の○が太陽です、コレを点光源(A)とした影を描きます。
影の伸びる方向を決めるために必要な「光源の直下点」(A‘)についてですが、太陽は地球から1億5000万キロ程度離れたほとんど無限遠点にありますので、直下点(A’)もまた無限に遠い距離であるアイレベル上に設定しています。
これで本シリーズでは見飽きた2点が設定できたので、以下のように影の形を計測していきます。
画像左側のブロックにはポールに向かって伸びる横木がくっついています。このように壁から突き出た構造物が壁面に落とす影についても触れておきます。以下の図をご覧ください。
理屈は地面に落ちる影と同じで、壁を90度回転した地面として「影の伸びる方向」を決めます。壁ラインの消失点から3次元的に上方向に線を引き、光源から水平方向に引いた線と交わった箇所を直下点とします。
あとはコレまでと同様の手法で影を作っていきます。以下が清書したモノになります。
続いてはコチラ、俯瞰図です。
これまでは2点の透視による図柄でしたが、せっかくの俯瞰事例ですので3点にしてみました。
左右の消失点をXとZ、縦ラインをYとして作図しています。
3点透視図法の描き方は、先人の知恵に頼って下さい。
本講座1回目同様、アカシックレコードから発掘してきたリンクを貼っておきます。
で、本サンプル画に影をつけていく大まかな進行は以下になります。
◇1:影の伸びる方向を決めてやる(カン)
↓
◇2:影の伸びる方向から光源直下点を割り出す(リクツ)
↓
◇3:影がどこまで伸びるかを決める線を引く(カン)
↓
◇4:光源位置を割り出す。(リクツ)
↓
◇5:カンとリクツを駆使して絵を仕上げる(ハイブリッド)
それでは解説に入ります。
これまでの影制作と、もっとも異なる点は光源が見えていないことでしょう。
そこでまずは「こっちらへんに向かって影が伸びたらいい感じじゃねーの?」という任意のベクトルを決めてやります。もちろん感覚です。
ココで気をつけたいこととしては、影方向を決める対象となるブツはサンプル画の柱のように地面に対して垂直に立ったモノにして下さい。
描こうとしてる絵の中に垂直に立ったブツ無い場合は、お手数ですがわざわざ描いて◇4の手順まで完了した後で消して下さい。
前項で触れた通り、太陽光の場合の光源直下の点は左右の消失点を結んだライン上にあります。
ということは、さっき決めた影ベクトル線とXZを結んだ線とが交わる箇所が直下点(A’)となります。直下点が逆算できたので他のオブジェクトについても影の伸びる方向を描くことができました。
影の伸びる方向を決めるときと同様に、感覚を駆使して影の長さを決める線を柱の突端から引いて下さい。日の高さと影の長さは反比例することを念頭において、描こうとしてる時間帯っぽい長さを決めてやって下さい。
このサンプル画では、消失点Xに向かって一直線に同じ長さの柱が並んでいます。
このことが、この後光源位置を割り出すにあたって大変役立ちます。描こうとしてる絵の中に一直線に並んだ同じ長さの柱が無い場合は、お手数ですがわざわざ描いて◇4の手順が完了した後で消して下さい。できるだけ距離を取って最低3つは描いて下さい。
一直線に並んだ同じ長さの柱とそこから伸びる影に注目して下さい。
同じ長さの柱が一直線ということは影の終わりも柱と平行に一直線に並ぶハズです。
ということはひとつの柱の影の長さを決めてやれば、一直線に並んだ他の柱の影の長さも割り出せます。
そして思い出して下さい。
いつだって光源から物体の突端にかけて引いた線が影の長さを決めていたことを…
つまり、各柱の突端からそれぞれ影の終端部に向かって引いた線が交わるところが光源の位置なのです。
それぞれの線は見事に一点で交わるかと思います、ここが光源位置です。後はこれまでと同じです。
描きたい絵の中に同じ長さで一直線に並んだ柱が無くて、わざわざ描いた方は、もう消しても大丈夫です。
なるほどー、と納得して終わりです。
以上、3回に渡って理屈と感覚で影の作り方をつづってきた本シリーズいかがでしたでしょうか?自分が納得いく理論でもっていくらか背伸びして書いてますが、それなりの説得力があったんじゃないかと思っております。
辛抱強く付き合ってくださった皆様、ありがとうございます。まるっと脳ミソにねじ込んだり、すっかり忘れたりして己の美術を高めて頂けますと幸いです。
次回、新章「今更聞けない○○○の○○○○○○○○○」でお会いしましょう。
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京都生まれ東京都在住のイラストレーター及びデザイナー。
引きこもりの幼少時代に養った卑屈な精神を、どうにか生産的なものに転化するため美術に目をつける。学生時代Photoshopでデザインを始めたと思ったら いつのまにかMAYAで画を描いていた。3Dソフトで静止画を描くという歪んだ制作スタイルは、見る者に一定の混乱を与えることに成功している。行列が苦手。